子会社株式の一部売却(支配の継続)と連結仕訳を解説
記事最終更新日:2022年10月5日
記事公開日:2022年6月9日
子会社株式の一部売却は、資本連結のスタンダードな論点であり、段階取得や追加取得とセットで覚えたい論点です。
ここでは、子会社の一部売却のうち、親会社と子会社の支配関係が継続している場合について、概要と連結会計上の仕訳処理を解説します。
子会社株式の一部売却(支配関係の継続)|概要と連結仕訳について解説
目次
子会社株式の一部売却(支配関係の継続)とは
一部売却(支配関係の継続)とは、子会社株式の一部を売却した後も、親会社の子会社に対する支配が継続している場合をいいます。
取引内容
例えば、80%を保有する子会社の株式のうち、20%を売却した場合が該当します。
売却持分
子会社株式の売却による親会社持分の減少額を「売却持分」といいます。
会計基準では、「売却持分」と「売却した株式に対応する持分」という言葉を区別して用いています。これは、「売却持分」には「その他の包括利益累計額(その他有価証券評価差額金など)」を含めないとしているからです。
これに対して、「売却した株式に対応する持分」には「その他の包括利益累計額」を含めて計算します(非支配株主持分の増額の計算に利用)。
未償却のれんの取り扱い
現行の会計基準では、支配が継続している限りにおいて、子会社株式を売却した結果、持分の変動があったとしても、未償却のれんは減額せず、売却前と同様、のれん償却額は親会社に全額を負担させます。
会計処理
「売却した株式に対応する持分」を親会社の持分から減額し、非支配株主持分を増額するとともに、売却による親会社の持分の減少額(売却持分)と売却価額との間に生じた差額を、資本剰余金として処理します(個別財務諸表上の売却損益の金額の修正)。
売却持分には「その他の包括利益累計額」は含まれません。
その他有価証券評価差額金など、「その他の包括利益累計額」の計上がある場合、「売却した株式に対応する持分」の一部として、親会社持分から減額するとともに、非支配株主持分を増額します。
なお、取得関連費用の会計処理については、下記の記事を参照。
会計基準
※2022年10月5日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針(日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第7号)
・連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)
連結仕訳
一例を示します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
一部売却 | S社株式 | ××× | 非支配株主持分 | ××× |
子会社株式売却益 | ××× | 資本剰余金 | ××× | |
その他有価証券評価差額金 | ××× | 非支配株主持分 | ××× |
※親会社の個別P/L上、子会社株式売却益が発生し、子会社の個別B/S上、「その他の包括利益累計額」として、「その他有価証券評価差額金」が計上されている場合。
表示
子会社株式の一部売却によって減少した「その他の包括利益累計額」は、当期純利益を構成しません。従って、連結包括利益計算書の「組替調整額」にはならず、連結株主資本等変動計算書の「当期変動額」として表示します。
仕訳例
- 子会社であるS社の株式の一部(帳簿価額100)を120で売却した。連結財務諸表上の売却持分は115と計算された。親会社から減額するその他有価証券評価差額金は3である。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
S社株式 | 100 | 非支配株主持分 | 115 |
子会社株式売却益 | 20 | 資本剰余金 | 5 |
その他有価証券評価差額金 | 3 | 非支配株主持分 | 3 |