関連会社株式とは|基本仕訳と表示科目を解説(簿記2級)

ビジネスマンと紙幣

記事最終更新日:2023年11月26日
記事公開日:2021年8月2日

有価証券の保有目的の1つである「関連会社株式」は、連結会計で学習する「子会社株式」と比較すると重要度が低く感じますが、簿記1級以上の資格試験や経理実務で連結会計担当者が習得すべき「持分法」と関係する重要な科目です。

本記事では、簿記2級で出題される「関連会社株式」の基本仕訳や表示科目について解説します。

※「持分法」に関する解説記事は下記のリンクから参照できます(上級者・実務家対象)。

※本記事の一部では、「補足」として、理解に役立つ簿記2級の出題範囲外の会計知識(会計学の考え方)を記載しています(上級者・実務家レベル)。

※有価証券全般に共通する基本的な仕訳(取得・端数利息・売却・配当金・利息)や保有目的による有価証券の種類(満期保有目的債券、その他有価証券など)、各有価証券の「表示科目」については、下記の記事で解説しています。

関連会社株式とは

関連会社株式」とは、発行済株式数の20%以上50%以下を保有した会社の株式をいいます。

※厳密な定義ではなく簿記2級の出題範囲に基づいた説明

※会計基準に基づいた関連会社の厳密な範囲は下記の記事を参照(上級者・実務家向け)

関連会社株式を取得するメリット

子会社ほどではありませんが、出資・人事・資金・技術・取引等の関係を通じて、関連会社の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができます。

会計処理の特徴

関連会社株式は「関連会社株式(資産に属する勘定科目)」で仕訳します。

また、「関連会社株式」は、期末日に時価ではなく取得原価で評価(期末日に取得原価で貸借対照表に掲載するということ)します。

従って、売買目的有価証券と異なり、原則として、期末日に有価証券評価損益を計上するような決算整理仕訳は行いません。

貸借対照表の表示科目については、勘定科目の「関連会社株式」ではなく、子会社株式と同じ「関係会社株式」で掲載します。

(補足)時価・実質価額の著しい下落

※簿記2級の範囲外

ただし、時価(実質価額)が著しく低下した場合には、関連会社株式について評価損を計上します。売買目的有価証券と異なり、時価や実質価額が下落した場合のみ会計処理を適用し、時価の上昇による評価益を計上することはありません。

(補足)連結財務諸表上の取り扱い(評価損益の計上)

※簿記2級の範囲外

以上の個別財務諸表上の会計処理と異なり、連結財務諸表上においては、後述の「持分法」を適用し、連結貸借対照表上には実質価額を反映させた関連会社株式(連結財務諸表上では「投資有価証券」)を表示します。

例えば、関連会社の業績が好調で当期純利益が100発生した場合には、「投資有価証券100/持分法による投資損益100」を仕訳します。これは、関連会社株式の実質価額の増加を投資有価証券に反映させたことに他なりません。

つまり、連結会計上においては、売買目的有価証券と同じく、関連会社株式であっても評価損益を計上します。

(補足)持分法について

関連会社については、「持分法」という子会社とは異なる会計処理によって、連結財務諸表に関連会社の期末時点の財務情報を反映させます。

具体的には、関連会社の経営成績(損益)や投資会社(関連会社を取得した会社)との内部取引(資本取引含む)について、全て「投資有価証券」と「持分法による投資損益」の勘定科目にのみ反映させます(「一行連結」とも言われます)。

当該処理は、投資会社が関連会社株式を取得した結果、「関連会社の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる」という投資成果を連結財務諸表に反映させるために行います。

その一方で、子会社のように「会社の支配」という状態よりは、投資会社が関連会社に与える影響力は強くないことから、関連会社のB/S・P/Lを投資会社のB/S・P/Lと合算させて連結財務諸表に反映するといった会計処理までは行いません。

※持分法は簿記1級で学習します。

関連会社株式の仕訳

次の通り。

※仕訳の内容は、冒頭で紹介した関連記事で解説しています。

取引ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得関連会社株式×××現金預金など×××
配当金の受け取り現金×××受取配当金×××
決算評価仕訳なし

<仕訳例>
1.A社株式を支払手数料と合わせて110で取得した結果、A社は当社の関連会社となった。代金については直ちに普通預金から全額振り込んだ。
2.A社の株主総会において配当が決定した結果、本日、保有株式に対応する配当金領収証3が郵送で届いた。
3.決算日。S社株式の時価は100である(※著しい時価の下落には該当しないとする)。

問題借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1関連会社株式110普通預金110
2現金3受取配当金3
3仕訳なし

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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