商業簿記入門その112~税効果会計の仕訳処理(2級)

更新日:2018年8月11日 公開日:2018年5月3日

税効果会計の仕訳処理(2級)

前回、「商業簿記入門その111~税効果会計とは(仕組みと手続きの解説)(2級)」では、税効果会計の仕組みと手続きについて解説しました。

今回は税効果会計の仕訳処理について解説します。

※税効果会計の仕組みや手続きを詳しく知りたい方は「商業簿記入門その111~税効果会計とは(仕組みと手続きの解説)(2級)」にて解説していますのでご参照ください。

※簿記2級の論点になります(連結ではなく、個別の財務諸表に関する出題を想定して解説しています)。


税効果会計とは

税効果会計(ぜいこうかかいけい)とは、税務上の所得計算によって計上された税金について、会計上の利益と対応するように、会計上の資産・負債と税務上の資産・負債の一時差異を調整するための手続きをいいます。

具体的には、税務上の損益計算書である課税所得の計算に関する書類や、税務上の資産・負債といわれる「利益積立金額」に記載されている項目から、一時差異に関する情報を読み取って必要な情報を抜き出し、税効果会計の手続きを行います。

一時差異とは

一時差異(いちじさい)とは、将来的に解消される会計上と税務上の税金に関する差異原因をいいます。

税効果会計の一時差異の認識方法としては、「会計上と税務上のP/Lの差異を認識する方法」と「会計上と税務上のB/Sの差異を認識する方法」があります。日本の税効果会計では後者のB/S上で差異を認識する方法を採用しています。

そして、会計上と税務上のB/Sの差異をまとめたものが利益積立金額になります。

利益積立金額の見方については「商業簿記入門その111~税効果会計とは(仕組みと手続きの解説)(2級)」にて詳細を解説しています。よろしければご参照ください。


税効果会計の用語と手続き(まとめ)

前回解説した税効果会計について用語や手続きのまとめを再度、掲載します。ご参考ください。

用語の説明

項目内容
税効果会計税務上の所得計算によって計上された税金について、会計上の利益と対応するように、会計上の資産・負債と税務上の資産・負債の一時差異を調整するための手続き
課税所得税金を計算する基礎となる金額。税務上の利益。
法人税等調整額損益計算書の表示科目。税務上の税金(法人税、住民税及び事業税)を会計上の税金に調整するために使用される。
税務上の資産・負債利益積立金額のこと
利益積立金額会計上と税務上の純資産の差異原因をまとめたもの。「これまでの会計上と税務上の利益の差異が積み重なった、累積の残高を表したもの」とも
繰延税金資産貸借対照表の表示科目。会計上と税務上の税金に関する差異のうち、将来減算一時差異に税率を乗じた金額を表示する。
繰延税金負債貸借対照表の表示科目。会計上と税務上の税金に関する差異のうち、将来加算一時差異に税率を乗じた金額を表示する。
一時差異将来的に解消される会計上と税務上の税金に関する差異原因
将来減算一時差異差異原因が将来解消された時に課税所得の計算にて減算項目となるもの
将来加算一時差異差異原因が将来解消された時に課税所得の計算にて加算項目となるもの

会計上と税務上の用語の対応表

項目会計上税務上
B/S貸借対照表利益積立金額(純資産のうち、資本金と資本準備金を除いたものに相当)
P/L損益計算書課税所得の計算(別表4といい、確定申告書の1書類)
利益利益課税所得

税効果会計の手続き

項目表示科目内容
P/L法人税等調整額税金の計算過程のうち、課税所得計算に使用する加算項目と減算項目を把握する。これらに税率を乗じた金額を法人税等調整額として加減算して損益計算書に表示する。
B/S繰延税金資産利益積立金額の項目ごとに「期末残高×税率」を計算。項目ごとに繰延税金資産か繰延税金負債か、および区分(流動、固定)を検討し、同じ区分であれば相殺する。
繰延税金負債

税効果会計の仕訳処理

税効果会計の手続きについては、「法人税等調整額勘定(その他に属する勘定科目)」「繰延税金資産勘定(資産に属する勘定科目)」「繰延税金負債勘定(負債に属する勘定科目)」、その他有価証券勘定、その他有価証券評価差額金勘定を使用して仕訳処理します。

具体的に、税務上のP/Lである課税所得の計算に関する書類と税務上のB/Sである利益積立金額のそれぞれに分けて、読み取れることと仕訳処理を解説します。

課税所得の計算に関する書類から読み取れることと仕訳処理

まず課税所得の計算に関する書類に記載されている加算項目と減算項目を見ます。

前回に掲載した図を使用して解説します。

税効果会計の仕組み(課税所得の計算)

この図では、加算項目に「減価償却費限度超過額 150」と記載されています。この場合には、

「加算項目→会計上の利益に加算→税務上の利益が大きくなる→税金が大きくなる→会計上の利益に対応する税金に調整するには税金を減少させなければならない→税金は借方が増加、貸方は減少(費用と同様)→税金を減少させるには法人税等調整額を貸方に記入する。」

という考え方から、貸方に法人税等調整額を記入します。

それでは借方は何を記入するのかといえば、

「加算項目→会計上の利益に対応するよりも多くの税金を支払う→税金の前払いと考えることができる→前払費用と同様資産科目→繰延税金資産を借方に記入する」

と考えて、借方に繰延税金資産を記入します。

若しくは、「当期に加算項目→将来に一時差異が解消した場合には減算項目になる→つまりは将来減算一時差異→繰延税金資産を借方に記入する」といったように将来減産一時差異と繰延税金資産の対応関係を覚えていれば、こちらの考え方でも正しく仕訳できるでしょう。

次に金額ですが、加算項目の金額に税率を乗じて計算します。税率が40%であれば、「150 × 40%(0.4) = 60」を借方と貸方に記入します。

以上から、仕訳は「(借方)繰延税金資産 60(貸方)法人税等調整額 60」になります。

また、繰延税金資産は流動資産、固定資産どちらにも表示することができますが、今回の例では減価償却であり関係する科目は固定資産のため、固定資産に表示します。従って、問題を解く際には、仕訳処理と同時に「(借方)繰延税金資産(固定) 60(貸方)法人税等調整額 60」と区分が分かるようにメモしておきましょう。


利益積立金額から読み取れることと仕訳処理

まず利益積立金額に記載されている項目を見ます。こちらも前回使用した図を掲載します。

下の図から、「貸倒引当金損金算入限度超過額」を例に解説します。

税効果会計の仕組み(利益積立金額)

まず見るのが当期の増減額です。「期末残高 700 - 期首残高 500 = 200」と、200増加していることが分かります。

増加しているということは税務上のP/L(課税所得の計算に関する書類)にて、加算項目に「貸倒引当金損金算入限度超過額 200」と記入されているということです。

※この点、実務では加算項目に300、減産項目に「貸倒引当金引当金超過額認容」といった項目で100記入されており、300-100=200の増加という場合も考えられます。その場合には、利益積立金額の当期増加に300、当期減少に100と転記されます。

ここから上述の課税所得の計算に関する書類を見ずとも、利益積立金額の表をみるだけで、「(借方)繰延税金資産(流動) 80(貸方)法人税等調整額 80」と仕訳処理することができます。

※「80 = 200 × 40%」「売掛金などの営業債権に関する貸倒引当金と想定。従って、区分は流動です。」

次に、「貸倒引当金損金算入限度超過額」の貸借対照表上の繰延税金資産の残高を計算します。

これは「期末残高 700 × 税率40% = 280」が答えです。

なお、「貸倒引当金損金算入限度超過額」だけの繰延税金資産の総勘定元帳は次の通りになります。

繰延税金資産の総勘定元帳

その他有価証券の仕訳処理

次にその他有価証券を解説します。上の図から利益積立金額の部分だけを再度掲載します。

その他有価証券(利益積立金額)

まず金額がマイナスになっている点については前回解説しましたので省略します。

期首残高△200は、前期の決算時の評価によって200評価差額をプラスした(マイナスではありません)ことを意味します。

当期減少△200は、その他有価証券評価差額金の仕訳処理は洗替処理のため、期首の振替仕訳によって反対の仕訳をきったことを意味します。

ということは、当期増加と期末残高の△100は、当期の決算評価が100のプラスということを意味します。

その他有価証券評価差額金はP/Lを経由せず、直接B/Sの純資産に計上するため、「法人税等調整額勘定」は使用しません。次のように仕訳処理します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
その他有価証券100その他有価証券評価差額金60
繰延税金負債40

※上記は決算評価がプラスの場合の仕訳処理ですが、仮に決算評価がマイナスの場合には、次の通り、「繰延税金資産」勘定を使用します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
その他有価証券評価差額金×××その他有価証券×××
繰延税金資産×××

なお、その他有価証券は固定資産に区分されるため、繰延税金負債も固定資産に区分されます。

貸借対照表の表示(相殺処理)

上の図を見ていただくと、「貸倒引当金損金算入限度超過額」の繰延税金資産540と、「その他有価証券」の繰延税金負債40は、どちらも区分は固定です。

流動、固定の区分で同一区分に繰延税金資産と繰延税金負債の両方に残高がある場合には、相殺をします。

今回の例では、固定資産に繰延税金資産500を表示し、繰延税金負債は表示しません。

まとめ

今回は税効果会計の仕訳処理について解説しました。税金に関する用語が多く出てきます。難しいと感じた場合には、理解せずにまず仕訳パターンを覚えてしまうのも効率のよい学習方法だと思います。理解したい場合には、前回ページの解説もぜひご利用ください。

「商業簿記入門~2級、3級の資格学習を支援」について

今回の解説でこのサイトの解説は終了になりますが、更新や試験改定に伴う変更は今後も行っていく予定です。

当サイトが皆さんの簿記理解と資格合格の一助になれば幸いです。


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