日商簿記2級 合併と仕訳(パーチェス法、のれん)と評価・換算差額等
更新日:2021年1月16日
公開日:2018年4月28日
前回は、剰余金の配当、処分および株主資本の計数変動に関する取引の仕訳について解説しました。
今回は、株式会社の合併と仕訳(パーチェス法、のれん)、および評価・換算差額等について説明します。
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- 合併と仕訳(パーチェス法、のれん)と評価・換算差額等 ←今回の解説
合併とは
合併(がっぺい)とは、2つ以上の会社が特別な手続きにより1つの会社になることをいいます。
合併の種類
合併には、ある会社が他の会社を吸収する「吸収合併(きゅうしゅうがっぺい)」と合併する会社がすべて消滅して新しい会社を設立する「新設合併(しんせつがっぺい)」があります。
なお、合併の際に残る会社を「合併会社(がっぺいがいしゃ)」、消滅する会社を「被合併会社(ひがっぺいがいしゃ)」といいます。
合併の手続き
会社法上で求められるルールに基づき、各種の手続きを行います。
例えば、株式発行では、増加する資本(純資産)のうち資本金に組み入れなくてよい金額の上限が設定されていましたが、合併に関してはそのようなルールはなく、合併の契約に記載することを条件として、自由に資本金と資本準備金、その他資本剰余金の配分を設定できます。
増加する資本(純資産)のうち、資本金や資本準備金に配分しない金額は「合併差益(がっぺいさえき)」といいます。
合併差益は、貸借対照表や株主資本等変動計算書上では、その他資本剰余金に含めて表示します。日商簿記2級の仕訳でも合併差益ではなく、原則としては「その他資本剰余金勘定」を使用して仕訳します。
次に、会社が消滅してしまうので、これまでの被合併会社の株主に対してはお金や合併会社の株式を対価として与えます。
後者の場合には、資本(純資産)が増加することになりますので、上述の通り、資本金などの配分を契約上で決めておく必要があります。
パーチェス法による仕訳とのれん
合併にを仕訳処理する場合には、被合併会社から引き継ぐ資産や負債を時価評価する「パーチェス法」と呼ばれる手法を使用して仕訳します。
合併の仕訳処理では「のれん勘定(資産に属する勘定科目)」「負ののれん発生益勘定(収益に属する勘定科目)」、資本金勘定、資本準備金勘定、その他資本剰余金勘定を使用して仕訳処理します。
※その他、問題の設定によって、様々な資産の勘定科目をまとめて「諸資産(しょしさん)」、様々な負債の勘定科目をまとめて「諸負債(しょふさい)」といった名称で表すことがあります。
具体的には、被合併会社の資産と負債をそれぞれ、借方と貸方に記入します。これは、被合併会社の資産と負債を引き継いだことを表します。
次に、被合併会社の株主に支払う対価がお金であれば、現金預金などの勘定科目を借方に記入します。
これに対して合併会社の株式を割り与える場合には、純資産が増加します。資本金等の配分については問題上に設定があるはずですので、その設定上の金額で、それぞれ資本金勘定、資本準備金勘定、その他資本剰余金勘定を貸方に記入します。
最後に貸借差額を計算し、借方が少ない場合には、のれん(正ののれん)が発生していることから、のれん勘定を借方に記入し、貸方が少ない場合には「負ののれん」が発生しているため、負ののれん発生益勘定を貸方に記入します。
※のれん勘定は資産ですが、負ののれん発生益は収益の勘定科目です。
合併の仕訳(まとめ)
以上をまとめると次の通り。
出来事 | 被合併会社の 株主への対価 | 発生する のれん | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|---|---|
合併 | お金 | 正 | 諸資産 | ××× | 諸負債 | ××× |
のれん | ××× | 現金預金など | ××× | |||
負 | 諸資産 | ××× | 諸負債 | ××× | ||
現金預金など | ××× | |||||
負ののれん発生益 | ××× | |||||
合併会社 の株式 | 正 | 諸資産 | ××× | 諸負債 | ××× | |
のれん | ××× | 資本金 | ××× | |||
資本準備金 | ××× | |||||
その他資本剰余金 | ××× | |||||
負 | 諸資産 | ××× | 諸負債 | ××× | ||
資本金 | ××× | |||||
資本準備金 | ××× | |||||
その他資本剰余金 | ××× | |||||
負ののれん発生益 | ××× |
評価・換算差額等
評価・換算差額等(ひょうかかんざんさがくとう)とは、純資産のうち株主資本以外の各項目をいい、その他有価証券評価差額金などのことをいいます。
評価・換算差額等も純資産の科目であるため、株主資本等変動計算書の表示対象になります。
日商簿記2級では、その他有価証券評価差額金が出題されます。
仕訳例
- 1.A社はB社を吸収合併した。
- (1)B社の資産(時価)は総額2千万円、負債(時価)は1千8百万円である。
- (2)B社の株主に対しては現金を支払うこととして、普通預金より各株主の預金口座へ総額300万円を振り込んだ。
- 2.C社はD社を吸収合併した。
- (1)D社の資産(時価)は総額5千万円、負債(時価)は4千3百万円である。
- (2)D社の株主に対してC社の株式を100株(1株当たりの時価5万円)割り当てる。
- (3)増加する資本のうち、資本金に3百万円、資本準備金に150万円を計上することとした。
1.A社はB社を吸収合併した。
(1)B社の資産(時価)は総額2千万円、負債(時価)は1千8百万円である。
(2)B社の株主に対しては現金を支払うこととして、普通預金より各株主の預金口座へ総額300万円を振り込んだ。
2.C社はD社を吸収合併した。
(1)D社の資産(時価)は総額5千万円、負債(時価)は4千3百万円である。
(2)D社の株主に対してC社の株式を100株(1株当たりの時価5万円)割り当てる。
(3)増加する資本のうち、資本金に3百万円、資本準備金に150万円を計上することとした。
【解答】
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
1 | 諸資産 | 20,000,000 | 諸負債 | 18,000,000 |
のれん | 1,000,000 | 普通預金 | 3,000,000 | |
2 | 諸資産 | 50,000,000 | 諸負債 | 43,000,000 |
資本金 | 3,000,000 | |||
資本準備金 | 1,500,000 | |||
その他資本剰余金 | 500,000 | |||
負ののれん発生益 | 2,000,000 |
【解説】
2.増加する純資産の金額は、100株 × 5万円 = 5,000,000円
資本金と資本準備金に計上する金額は問題文に記載してあるので、残りの金額である500,000円(5,000,000円 - 資本金300万円 - 資本準備金150万円)を、その他資本剰余金勘定(合併差益)で処理します。
まとめ
今回は合併の仕訳と評価・換算差額等について解説しました。問題をこなして仕訳を覚えましょう。
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