14-1 合併
合併とは
合併とは、2つ以上の会社が特別な手続きにより、1つの会社になることをいいます。
合併の種類
合併には、ある会社が他の会社を吸収する「吸収合併」と、合併する会社がすべて消滅して新しい会社を設立する「新設合併」があります。
なお、合併の際に残る会社を「合併会社」、消滅する会社を「被合併会社」といいます。
合併の手続き
会社法上で求められるルールに基づき、各種の手続きを行います。
例えば、株式発行では増加する資本(純資産)のうち、資本金に組み入れなくてよい金額の上限が設定されていましたが、合併に関してはそのようなルールはなく、合併の契約に記載することを条件として、自由に資本金と資本準備金、その他資本剰余金の割合を設定できます。
合併差益
増加する資本(純資産)のうち、資本金や資本準備金に配分しない金額は、「合併差益」といいます。
合併差益は、貸借対照表や株主資本等変動計算書上では、その他資本剰余金に含めて表示します。簿記2級の仕訳でも合併差益ではなく、「その他資本剰余金」で仕訳します。
合併の対価
被合併会社は消滅してしまうので、これまでの被合併会社の株主に対しては、現金や合併会社の株式を対価として与えます。
株式を対価として与えた場合には、資本(純資産)が増加することになるので、上述の通り、資本金、資本準備金などの割合を契約上で決めておく必要があります。
パーチェス法
合併を仕訳する場合、被合併会社から引き継ぐ資産や負債を時価評価する「パーチェス法」と呼ばれる手法を、使用します。
仕訳
合併の仕訳では、「のれん(資産に属する勘定科目)」「負ののれん発生益(収益に属する勘定科目)」「資本金」「資本準備金」「その他資本剰余金」で仕訳します。
※問題の設定によって、様々な資産の勘定科目をまとめて「諸資産」、様々な負債の勘定科目をまとめて「諸負債」といった名称で表すことがあります。
(1)資産と負債の引き継ぎと仕訳
被合併会社の資産と負債をそれぞれ、借方と貸方に記入します。これは、被合併会社の資産と負債を引き継いだことを表します。
(2)対価と仕訳
被合併会社の株主に支払う対価がお金であれば、現金預金などの勘定科目を貸方に記入します。
被合併会社の株主に合併会社の株式を割り与える場合には、純資産が増加します。資本金や資本準備金などの割合については問題で設定されます。その設定上の金額で、「資本金」「資本準備金」「その他資本剰余金」を貸方に記入します。
(3)のれんと仕訳
最後に貸借差額を計算し、借方が少ない場合には、のれん(正ののれん)が発生していることから、「のれん」を借方に記入し、貸方が少ない場合には「負ののれん」が発生しているため、「負ののれん発生益」を貸方に記入します。
※「のれん」は資産ですが、「負ののれん発生益」は収益の勘定科目です。
合併の仕訳(まとめ)
以上をまとめると、次の通り。
取引 | 被合併会社の 株主への対価 | 発生する のれん | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|---|---|
合併 | 現金 | 正 | 諸資産 | ××× | 諸負債 | ××× |
のれん | ××× | 現金預金など | ××× | |||
負 | 諸資産 | ××× | 諸負債 | ××× | ||
現金預金など | ××× | |||||
負ののれん発生益 | ××× | |||||
合併会社 の株式 | 正 | 諸資産 | ××× | 諸負債 | ××× | |
のれん | ××× | 資本金 | ××× | |||
資本準備金 | ××× | |||||
その他資本剰余金 | ××× | |||||
負 | 諸資産 | ××× | 諸負債 | ××× | ||
資本金 | ××× | |||||
資本準備金 | ××× | |||||
その他資本剰余金 | ××× | |||||
負ののれん発生益 | ××× |
仕訳問題
- 1.A社はB社を吸収合併した。
- (1)B社の資産(時価)は総額2千万円、負債(時価)は1千8百万円である。
- (2)B社の株主に対しては現金を支払うこととして、普通預金より各株主の預金口座へ総額300万円を振り込んだ。
- 2.C社はD社を吸収合併した。
- (1)D社の資産(時価)は総額5千万円、負債(時価)は4千3百万円である。
- (2)D社の株主に対してC社の株式を100株(1株当たりの時価5万円)割り当てる。
- (3)増加する資本のうち、資本金に3百万円、資本準備金に150万円を計上することとした。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
1 | 諸資産 | 20,000,000 | 諸負債 | 18,000,000 |
のれん | 1,000,000 | 普通預金 | 3,000,000 | |
2 | 諸資産 | 50,000,000 | 諸負債 | 43,000,000 |
資本金 | 3,000,000 | |||
資本準備金 | 1,500,000 | |||
その他資本剰余金 | 500,000 | |||
負ののれん発生益 | 2,000,000 |
解説
問題2.
増加する純資産の金額は、100株 × 5万円 = 5,000,000円
資本金と資本準備金に計上する金額は、問題文に記載してあるので、残りの金額である500,000円(5,000,000円 - 資本金300万円 - 資本準備金150万円)を、「その他資本剰余金」で仕訳します。