15-5 のれんの償却
今回は、支配を獲得した後に毎年行う、代表的な資本連結の仕訳2つのうち、もう1つの仕訳である、のれんの償却について解説します。
のれんとは
のれんとは、合併や買収といったM&Aの際に、使用される会計用語であり、合併や買収される企業のその時点での純資産額と、その支払対価との差額をいいます。
「超過収益力」ともいいます。
資本連結とのれん
これまでの解説の通り、連結会計ののれんは資本連結の仕訳で計上されます。
支配獲得時の「子会社の純資産(株主資本)の額 × 子会社の持株比率」と子会社株式の取得額との差額が、のれんです。
のれんの償却
のれんを計上した後、のれんは一定の期間(問題に指示あり)に渡って、毎年の連結決算で償却します。
連結修正仕訳-のれんの償却
例えば、×1年3月31日に子会社化による資本連結にて、のれん100万円を計上し、翌年度以降5年で償却する場合、×2年3月31日には、100万円 ÷ 5 = 20万円 を償却します。
借方に「のれん償却(費用に属する勘定科目)」を記入し、貸方に「のれん(資産に属する勘定科目)」を記入して仕訳します。
支配獲得時に負ののれんが発生した場合には、「負ののれん発生益」にて全額収益として計上します。従って、のれんの償却に関する連結修正仕訳は行いません。
| 取引 | のれん | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| のれんの償却 | 正 | のれん償却 | ××× | のれん | ××× |
翌年の仕訳-のれんの償却
さらに、1年後の×3年3月31日の決算では
(1)×2年3月31日決算の開始仕訳
(2)×3年3月31日決算の連結修正仕訳
を仕訳します。
(1)×2年3月31日決算の開始仕訳
次の通り。開始仕訳のため、のれん償却を利益剰余金に修正します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 利益剰余金 | ××× | のれん | ××× |
(2)×3年3月31日決算の連結修正仕訳
次の通り。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| のれん償却 | ××× | のれん | ××× |
翌年の仕訳(まとめ)
以上から、×3年3月31日決算(のれんの償却)の仕訳は次の通り。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 利益剰余金 | ××× | のれん | ××× |
| のれん償却 | ××× | のれん | ××× |
仕訳問題
- P社は×0年度にS社の発行済み株式数の80%を保有しており子会社としている。
- 子会社化の際にのれんとして20を計上しており、翌年度から10年で償却する。
- (問題)のれん償却について×2年度の連結修正仕訳を示しなさい。
<開始仕訳(×1年度)>
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 利益剰余金 | 2 | のれん | 2 |
<連結修正仕訳(×2年度)>
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| のれん償却 | 2 | のれん | 2 |
