日商簿記2級 連結仕訳|土地の取得と売却、配当金
更新日:2020年12月24日
公開日:2018年4月30日
前回は、連結修正仕訳の作り方について、商品販売と仕入取引を例にして解説しました。
今回は、連結仕訳のうち土地の取得・売却と配当金について説明します。
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連結会社間取引-土地の売却と取得に関する取引
前回の商品販売と仕入取引の連結修正仕訳と同じ手順で解説します。
今回の取引例は次の通り。
<連結修正仕訳-土地の取得と売却取引例>
- ・当期に親会社が外部の取引先より土地を1,000円で取得(代金は次期に支払い)
- ・当期に親会社はこの土地を子会社に1,000円で売却(代金は次期に支払い)
- ・当期に子会社はこの土地を保有したまま外部に販売しない
1,000円で買って1,000円で売っているため、親会社では売却益は発生しません。
利益は発生していませんが、親会社と子会社とで土地の売買取引を行い、この土地は子会社が保有したままです。
従って、この取引は内部取引に該当するため、連結会計上は連結修正仕訳を記帳して、親会社と子会社で記帳した仕訳の影響を相殺消去します。
(1)親会社と子会社の仕訳と財務諸表を書き、合算して修正前の連結財務諸表を書く
まずは親会社と子会社に分けて、今回の例について個別の仕訳と個別のB/S、P/Lを検討します。結果は次の通り。
(2)あるべき連結財務諸表を書く
次に、あるべき連結財務諸表を考えてみます。
あるべきは、最初の親会社が外部の取引先より土地を購入した取引のみが反映されている連結財務諸表です。親会社と子会社の土地の売買取引は内部取引に該当するため反映しません。
従って、次の通り。
(3)連結修正仕訳を検討して書く
最後に連結修正仕訳を考えてみます。結果は下の図の通り。
連結会社間取引-配当金の取引
今回の取引例は次の通り。
<連結修正仕訳-土地の取得と売却取引例>
- ・子会社が、繰越利益剰余金から50を株主に配当
- ・親会社は子会社株式80%を取得
- ・配当時は未払。その後、当期中に普通預金から配当金の全額を支払い
この場合、内部取引に該当するのは親会社が子会社から受け取った配当だけです。20%の非支配株主は親会社ではないので企業グループには属しておらず、非支配株主への配当は内部取引には該当しません。
(1)修正前の連結財務諸表
親会社と子会社に分けて、今回の例について個別の仕訳と個別のB/S、P/Lを検討します。
結果は次の通り。
親会社は子会社の株式の80%を保有する株主であるため、「配当金50 × 80% = 40」を親会社に配当します。
留意点は、個別の仕訳では「繰越利益剰余金」と記入しています。しかし、連結B/S上の株主資本は、資本金、資本剰余金、利益剰余金で表示します。
繰越利益剰余金は利益剰余金に含まれます。従って、子会社のB/Sは利益剰余金で表示しています。
同様に、仕訳上では現金や普通預金としていますが、貸借対照表では現金及び預金として表示します(勘定科目から表示科目への組み換え)。
(2)あるべき連結財務諸表
結果は次の通り。
現金及び預金は親会社と子会社の取引は内部取引ですので連結財務諸表には反映しません。
これに対して非支配株主に支払う配当は反映させます。すなわち、配当の支払い50のうち非支配株主への支払い10( = 配当金50 × 非支配株主持分20% )は反映させる必要があるため、「現金及び預金 △10」を反映します。
次に、連結B/Sの貸方「非支配株主持分 △10」を考えてみましょう。
子会社が配当すれば、子会社の利益剰余金が減少します。
「非支配株主持分」という科目は子会社の純資産のうち、非支配株主が所有する部分を表します。
子会社が親会社に行った配当は連結B/S、連結P/Lに反映しません。しかし、非支配株主への配当は内部取引ではないため反映させる必要があります。
そして、配当は純資産である利益剰余金を減少させます。従って、配当によって非支配株主持分は減少するため、連結B/Sにて「非支配株主持分 △10」を表示します。
以上から、上の図の通りになります。
(3)連結修正仕訳
最後に連結修正仕訳を考えてみます。結果は下の図の通り。
配当の仕訳や非支配株主持分を理解していないと難しく感じるかもしれません。
まとめ
今回は連結会社間取引のうち、土地の売却と取得、および配当金の配当と受け取りに関する連結修正仕訳について解説しました。連結会計は覚えることが多く、積み上げて理解する部分が他の論点に比べて多いです。難しいと感じた場合には、その都度、個別の論点(今回の例では配当の仕訳や非支配株主持分など)に戻って知識を定着させましょう。
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