商業簿記入門その108~未実現利益(ダウンストリームとアップストリーム)の仕訳処理(2級)

更新日:2018年5月1日 公開日:2018年4月30日

未実現利益(ダウンストリームとアップストリーム)の仕訳処理(2級)

前回、「商業簿記入門その107~連結会社間取引の仕訳処理(土地の売却と取得、配当金の配当と受け取り)(2級)」では、連結会社間取引の考え方と、連結会社間取引のうち、商品販売と仕入れについて解説しました。

今回は未実現利益のの連結修正仕訳について、ダウンストリームとアップストリームに分けて解説します。

※簿記2級の論点になります。

※連結会社間取引についての考え方や、連結会社間取引に関する連結修正仕訳の解き方については、「商業簿記入門その106~連結会社間取引の考え方との仕訳処理(商品の販売と仕入れ)(2級)」にて解説していますのでご参照ください。


未実現利益とは

未実現利益(みじつげんりえき)とは、親会社と子会社など企業グループ内の内部取引(連結会社間取引)について、内部取引で発生した利益が、企業グループ外部との取引により実現していない状態の利益をいいます。

例えば、親会社が100円で外部から購入した商品を子会社に120円で販売した場合には、親会社で20円の利益が発生します。しかし、この20円の利益は連結会社間取引で発生したものであり、子会社が外部の取引先にこの商品を販売しない状態の場合には、この20円の利益は未実現利益として取り扱う、ということです。

連結会計上での未実現利益の取り扱い

未実現利益は連結会社間取引で発生した利益です。企業グループを一つの会社とみなす連結会計では、企業グループ外部の取引先に販売しない限りは実現した利益とは考えません。

従って、未実現利益は連結修正仕訳にて消去しなければなりません。

未実現利益の種類

未実現利益が発生する取引の種類には、販売したのが親会社なのか子会社なのかによって、ダウンストリームとアップストリームという2種類の取引があります。

まず、親会社が上、子会社が下に位置する図を考えます。

ダウンストリームとは、親会社が子会社に販売する取引の流れをいいます。

アップストリームとは、子会社が親会社に販売する取引の流れをいいます。

ダウンストリームとアップストリーム

未実現利益の連結修正仕訳を考える場合には、ダウンストリームとアップストリームに分けて考えます。

未実現利益をダウンストリームとアップストリームに分けて考える理由

ダウンストリームとアップストリームとで、連結修正仕訳の特徴が変わります。従って、連結会社間取引で未実現利益の連結修正仕訳を検討する場合には、ダウンストリームなのかアップストリームなのかを問題文から読み取る必要があります。

以下、ダウンストリームとアップストリームに分けて、商品販売の連結会社間取引を例として解説します。


ダウンストリームの未実現利益の連結修正仕訳

例えば、親会社が100円で企業グループ外部より仕入れた商品を子会社に120円で掛け販売した場合を考えます。なお、親会社が保有する子会社の株式は80%であり、非支配株主が20%を保有しているとします。

ここでは、取引全体ではなく、利益部分だけに焦点を当てて検討します(全体の取引については後ほどまとめを掲載します)。

以下、財務諸表(決算書)上の表示科目で考えます。

まず個別の仕訳では、親会社には「(借方)売掛金 20 (貸方)売上高 20」が仕訳されており、子会社では、「(借方)商品 20 (貸方)買掛金 20」が仕訳されています。

連結決算書上では、未実現利益は消去するため、これらの仕訳は反映させない、ということになります。

また、ダウンストリームでは、利益が生じるのは親会社だけです。子会社に利益が生じないため、非支配株主持分については考慮する必要がありません。

従って、連結修正仕訳では、「(借方)売上高 20 (貸方)商品 20」(借方)買掛金 20 (貸方)売掛金 20」という仕訳をきります。

アップストリームの未実現利益の連結修正仕訳

例えば、子会社が100円で企業グループ外部より仕入れた商品を親会社に120円で掛け販売した場合を考えます。なお、親会社が保有する子会社の株式は80%であり、非支配株主が20%を保有しているとします。

上述ダウンストリームの例とは、商品の販売と仕入れについて親会社と子会社を入れ替えただけの例です。

以下、同様に財務諸表(決算書)上の表示科目で考えます。

まず個別の仕訳では、子会社には「(借方)売掛金 20 (貸方)売上高 20」が仕訳されており、親会社では、「(借方)商品 20 (貸方)買掛金 20」が仕訳されています。

連結決算書上では、未実現利益は消去するため、これらの仕訳は反映させない、ということになります。

一方で、アップストリームでは、子会社に利益が生じます。すなわち

「子会社に利益が生じる→子会社の純資産が増加する→非支配株主持分が増加する」

となり、非支配株主持分が増加します。

この点については「商業簿記入門その105~開始仕訳と資本連結(支配獲得後)の仕訳処理(2級)」にて解説しています。具体的には、支配獲得後に子会社が利益(今回の例では未実現利益20)を計上した場合には、非支配株主持分に帰属する利益部分と持分増加について、

「(借方)非支配株主に帰属する当期純利益 4 (貸方)非支配株主持分 4」

と連結修正仕訳がきられています。この数字は「子会社に生じた未実現利益 20 × 非支配株主持分 20%」で計算した数字です。

以上から、この連結修正仕訳についても消去する必要があることから、アップストリームの連結修正仕訳は、「(借方)売上高 20 (貸方)商品 20」(借方)買掛金 20 (貸方)売掛金 20」に加えて、

(借方)非支配株主持分 4 (貸方)非支配株主に帰属する当期純利益 4

になります。


ダウンストリームとアップストリームのまとめ

未実現利益の部分だけでなく、商品の販売と仕入れの取引全体について、ダウンストリームとアップストリームをまとめると次の通りです。

※未実現以外の仕訳については、「商業簿記入門その106~連結会社間取引の考え方との仕訳処理(商品の販売と仕入れ)(2級)」にて解説しています。

ダウンストリームの連結修正仕訳(まとめ)

ダウンストリームの連結修正仕訳

アップストリームの連結修正仕訳(まとめ)

アップストリームの連結修正仕訳

まとめ

今回は未実現利益の連結修正仕訳について、ダウンストリームとアップストリームに分けて解説しました。今回は商品販売と仕入れを例にして解説しましたが、土地の売却と取得でも同様に考えて連結修正仕訳をきれば問題ありません。


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