2-3 仕訳の基本と取引の8要素
簿記3級の最も重要な学習事項である「仕訳」の基本事項と「取引の8要素」を解説します。
仕訳の基本事項
最初に「2-1 簿記の流れ」の「(2)仕訳の記入」で解説した事項の確認です。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 10,000 | 現金 | 10,000 |
仕訳の左側が「借方」、右側が「貸方」です。それぞれ勘定科目と金額を記入します。
借方の金額と貸方の金額は必ず一致させます。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 10,000 | 現金 | 50,000 | |
定期預金 | 40,000 |
仕訳の行数は何行あっても構いません。また、借方と貸方の行数は異なっていても構いません。
ただし、借方の合計金額と貸方の合計金額は必ず一致させます。
取引の8要素
仕訳を記入する場合、(借方)に使用する勘定科目と(貸方)に使用する勘定科目を決めるための判断材料の1つとして、「取引の8要素」があります。
取引の8要素とは、資産、負債、純資産(資本)の増加・減少や収益・費用の発生を借方・貸方のどちらに記入するのかをまとめたものです。
具体的には下の表の通り。
「備品を現金50,000円で購入した」という取引を例にして説明します。
備品も現金も資産に属する勘定科目です。
仕訳は次の通り。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
備品 | 50,000 | 現金 | 50,000 |
「備品を購入した=備品の増加」を意味します。取引の8要素を見ると、資産の増加は借方に記入するので、備品は借方に記入します。
「現金50,000円で購入=現金の減少」です。取引の8要素を見ると、資産の減少は貸方に記入することから、現金は貸方に記入しています。
仕訳を覚えるポイント
「取引の8要素を見ながら、仕訳の問題を解くこと」です。
※今後の仕訳解説において、各仕訳と一緒に毎回、取引の8要素を掲載します。
そのうち取引の8要素を自然と覚えます。そしてたくさんの仕訳も単なる文字の暗記ではなく、資産・負債・純資産・収益・費用の5分類と関連させて理解しながら覚えるようになります。
その他の基本事項
その他、簿記3級で押さえなければならない基本事項を解説します。
(1)1取引1仕訳
基本的に1つの取引につき、1つの(1セットの)仕訳を記帳します。
同じ日付であっても取引が複数存在すれば、取引の数だけ仕訳を記帳します。
(2)1つの仕訳に同一勘定科目は1つのみ
例外は存在しますが、1つの仕訳に同一の勘定科目を複数記入することは基本しません。
例えば、
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 30,000 | 現金 | 100,000 | |
普通預金 | 70,000 |
や、
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 120,000 | 現金 | 100,000 | |
普通預金 | 20,000 |
のような書き方はせずに、
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
と記入します。
経理実務では1仕訳に複数の同一の勘定科目を記入することはありますが、
「簿記3級の本試験では1仕訳に同一勘定科目は1つのみ使用する」
と心掛けてください。
(3)仕訳金額と残高
簿記の5要素(資産・負債・純資産・費用・収益)や上述の「取引の8要素」と関係します。
仕訳を記帳した場合、
「仕訳に記入した勘定科目の残高(金額のこと)が増減」
します。
例えば、
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 10,000 | 現金 | 10,000 |
の場合、普通預金も現金も「資産」の勘定科目です。
従って、取引の8分類から、
借方記入の場合は残高が増加し、貸方記入の場合は残高が減少
します。
つまり、この仕訳の場合には、
「普通預金の残高が10,000円増加し、現金の残高が10,000減少した」
になります。
資産以外の簿記の5要素も同じです。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
仕入 | 30,000 | 買掛金 | 30,000 |
この仕訳は「商品3万円を仕入れ、代金は掛けとした」という取引の仕訳です。
「仕入」は費用、「買掛金」は負債に属する勘定科目です(どちらも後の章で詳細に解説します)。
この仕訳と取引の8要素から
「仕入の残高が30,000円発生(増加)し、買掛金の残高も30,000増加した」
ということが読み取れます。
(4)残高の相殺
例えば、
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 10,000 | 現金 | 10,000 |
この仕訳を記帳した後に、実際は普通預金ではなく当座預金への入金だったとします。
すると、この仕訳は間違いであるため、正しく訂正しなければいけません。
このときに使う仕訳の考え方として「仕訳の相殺」があります。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 10,000 | 現金 | 10,000 |
この仕訳では普通預金の残高を10,000円増加させてしまいましたが、実際には当座預金のため、普通預金の残高を10,000円減少させます。
残高を減少させるには、
「貸借反対の位置に勘定科目と金額を記入して仕訳」
します。
従って、この例では新たに仕訳を記帳して
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 10,000 |
とします。
そして借方には正しい勘定科目である「当座預金」と10,000を記入すれば仕訳訂正の完成です。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
当座預金 | 10,000 | 普通預金 | 10,000 |
このテクニックは、後の章で登場する「訂正仕訳」「振替仕訳」「再振替仕訳」など、様々な仕訳方法で用いられます。
まとめ
仕訳の基本事項は以上です。今後の仕訳問題を解く際の基本となりますが、暗記する必要はありません。
後の仕訳問題を解く際に覚えていなければ、この項に戻って知識を再確認しましょう。最初は仕訳問題を学習するのに時間がかかりますが、 そのうちに自然と知識が定着して覚えていきます。
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