2-1 簿記の流れ

ここでは簿記の仕組みを理解するために、簿記手続きの流れを解説します。

簿記手続き

簿記手続きは次の順番で行います。

(1)取引の把握

会社の取引例をいくつか挙げると次の通り。

「掛け」という言葉は会社の取引でよく使う支払い方法の1つです。簡単に言えば「ツケ」です。1ヶ月後や2ヶ月後といった期限を定めて代金を支払い、または受け取ります。

(2)仕訳の記入

上記取引のうち、「現金10,000円を普通預金に預けた。」を仕訳にすると次の通り。

(借方)普通預金 10,000 (貸方)現金 10,000

※仕訳の仕組みは「2-3 仕訳と取引の8要素」で解説します。

実際に仕訳を記入する際にはこれだけでなく、日付や取引先や銀行口座名、摘要(てきよう。商品名や購入数、何月分の家賃か、など取引が分かるようにまとめた情報)なども記入しますが、本試験での基本的な仕訳は上記の通りです。

仕訳の左側を「借方(かりかた)」、右側を「貸方(かしかた)」といいます。

「普通預金」「現金」を「勘定科目(かんじょうかもく)」といいます。

※勘定科目は後の章で1つずつ解説します。

借方と貸方に勘定科目と金額をそれぞれ記入します。借方と貸方の金額は必ず一致させます。

仕訳の省略形は次の通り書きます。

普通預金 10,000 / 現金 10,000

1件1件の取引ごとに(借方)(貸方)を書くのは時間がかかるので、計算用紙(メモ書き)に仕訳を書くときは、この通り省略形で書きます。

本書では次の通り、表形式にして仕訳を掲載します。

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金10,000現金10,000

仕訳例をもう1つ説明します。例えば「現金50,000円のうち10,000円を普通預金、40,000円を定期預金に預けた」という取引の場合、仕訳は次の通り。

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金10,000現金50,000
定期預金40,000

借方の合計金額と貸方の合計金額が同じであれば、借方と貸方の行数は同じである必要はありません。この例のように借方が2行、貸方が1行であっても、どちらも合計額が50,000円のため問題ありません。

(3)勘定元帳の記入

仕訳の情報を勘定元帳というフォームに記入します。現金の勘定元帳は次の通り(現金勘定といいます)。

現金勘定の例

左側と右側とがあり、左側は現金の借方、右側は現金の貸方を表し、それぞれ取引の日付、相手勘定科目、金額を記入します。

例えば、左側の「7/20 普通預金 100,000」は「7月20日に普通預金から100,000円を引き出した」という取引を意味します。

この取引の仕訳は次の通り。

日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
7/20現金100,000普通預金100,000

現金勘定の左側(借方)に記入があるので、仕訳でも「現金」を借方に記入します。

相手勘定科目である「普通預金」は現金とは反対側の貸方に記入します。

詳細は「2-4 勘定元帳と転記」で解説します。

(4)補助元帳の記入

仕訳と勘定元帳だけでなく、「補助元帳(ほじょもとちょう)」という特別なフォームに記入する場合もあります。

たくさんの種類が存在します。ここでは補助元帳のうち、現金出納帳を例として掲載します。

現金出納帳の例

詳細は各章で1つずつ解説します。

(5) (1)から(4)を1年間繰り返す

以上の手続きを取引の数だけ毎日毎日繰り返します。

会社は決算期間を定めています。1年が原則であり、会社によって開始日は異なります。代表的な決算期間は4月1日から翌年3月31日の1年間。

決算期間の最終日(例では3月31日)を「決算日(けっさんび)」といいます。

従って、会社は決算開始日から決算日まで、繰り返し上記の手続きを取引の数だけ行います。

(6)決算手続き

決算日以降に、決算手続きを行っていきます。

決算手続きの目的は、これまでの簿記手続きで記入した仕訳や勘定元帳といった情報を集計して、財務諸表(ざいむしょひょう)」と呼ばれる決算書を作成することです。

様々な手続きがあります。詳細は「13-1 決算手続きの流れ」以降で解説します。

(7)財務諸表の作成

財務諸表にはいくつかの種類があります。日商簿記3級では貸借対照表と損益計算書が出題されます。

それぞれの例は次の通り。

貸借対照表と損益計算書のひな型

貸借対照表と損益計算書は「13-7 貸借対照表と損益計算書」で解説します。

1年間の簿記手続きは以上です。翌年、翌々年、と同じ簿記手続きを行うことで、それぞれの決算期の財務諸表を作成します。

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