時間基準とは|収益認識会計基準上の取り扱いを解説

時計と硬貨

執筆日:2024年2月25日

※本記事は、2024年2月25日現在に公表・適用されている会計基準等を参考にしています。

※対象者:上級者・実務家

※本記事は、最下部に記載の書籍を参考としながら、著者(須藤恵亮)の見解・表現をもって解説しています。

「時間基準」は従来から存在する収益認識方法の1つです。利息に代表される取引のように期間按分で収益計上しますが、「収益認識会計基準」の適用に伴い、現在では必ずしも「時間基準」の考え方通りに収益計上できるわけではありません。

本記事では「時間基準」について、特徴や会計処理を説明した後に「収益認識会計基準」上の取り扱いについて具体的に解説します。

「時間基準」とは

時間基準」とは、従来から存在する収益認識基準(考え方)の1つであり、時間の経過に応じて収益を認識する方法をいいます。

「時間基準」は従来から会計学の専門書で解説されてきた会計用語の1つですが、「収益認識会計基準」では登場しません。

代表的な取引として、「貸付金の利息」や「建物の家賃収入」のように、一定の契約に基づき、継続的に「役務」を提供する取引が挙げられます。

特徴

「時間基準」は、「発生主義に基づく収益認識基準」であるという点が特徴です。

「役務」提供に応じた収益認識

従って、「役務(サービス)」の提供に応じて収益が発生します。すなわち、「商品」は販売までは収益とはならずに資産計上しますが、これに対して、「時間基準」の対象となる「役務」は資産計上されることなく「役務(経済的価値)」が借主に提供されると同時に収益認識します。

客観的な貨幣額による測定

次に、「発生主義」に基づき収益認識するためには、収益認識の時点で「客観的な貨幣額」による測定が必要になります。収益認識は原則的に「実現主義」に基づかなければならない、と「企業会計原則」が定めているのは、一般的な販売取引の場合、「発生主義」だと収益の測定が「主観的な見積り」に依らざるを得ないからです。

従って、「時間基準」に基づいて収益認識する場合には、役務提供前に契約で対価が確定しているか、もしくは合理的な方法で客観的な収益額が見積もれる必要があります。

同質・同量の役務提供

時間の経過に応じて収益認識する、ということは、時間に比例して収益を計上する、ということです。これは、どの時点においても提供する「役務」の内容は同じである、ということを意味します。

もしも、その時々で「役務」の内容が異なるのであれば、収益を期間で按分することはできず、例えば、全期間の「役務」のうち、当月に提供した部分に対応する収益を見積って計上することになりますが、これでは時の経過に応じていないため、「時間基準」とはいえません。

会計処理

発生した収益を時間の経過に応じて月割りや日割りで計算して計上します。

対価の未収や前受けがある場合には、「経過勘定項目」として「未収収益」や「前受収益」で仕訳します。

「収益認識会計基準」上の取り扱い

大きく2つに分類して解説します。

「収益認識会計基準」の適用範囲外となる取引

例えば、「金融商品会計基準」が適用される貸付金利息や「リース会計基準」を適用する不動産賃貸収入、及び「保険法(平成20年法律第56号)」の定義を満たす保険契約に基づく保険料などは、「収益認識会計基準」の適用外となり(収益認識会計基準 第3項参照)、従来通り、「時間基準」の考え方で会計処理します。

「収益認識会計基準」が適用される取引

例えば、「定期的な清掃サービスの提供」「機械の保守サービス」「コンサルティングサービス」などは「収益認識会計基準」に従って会計処理します。

この場合、全ての場合において、「時間基準」と同じ会計処理が適用できるわけではありません。

具体的には、「一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)」に該当すると判断できる場合には、従来の「時間基準」と同じく、「月割り」「日割り」といった方法で会計処理する、と考えられます。

会計基準等・参考文献

※2024年2月25日現在。リンク先の会計基準等・参考文献は最新版でない場合があります。

会計基準等

・企業会計原則(昭和57年4月20日 大蔵省企業会計審議会)
収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)
収益認識に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第30号)

参考文献

・飯野利夫 財務会計論[3訂版] 同文館 1993年
・広瀬義州 財務会計(第10版) 中央経済社 2011年
・EY新日本監査法人 図解でスッキリ 収益認識の会計入門 中央経済社 2018年

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