商業簿記3級 現金の範囲、小切手の振出と管理、仕訳処理

更新日:2019年9月8日
公開日:2017年7月30日

前回、「商業簿記入門その7~帳簿(仕訳帳と総勘定元帳)と伝票(3級)」では、帳簿体系と伝票について解説しました。

前回までで、簿記全体の概要は解説することができました。

そこで今回から、具体的な勘定科目と取引について解説していきます。今回は現金について説明します。

現金

現金(げんきん)とは、普段皆さんが利用している、財布に入っている100円硬貨や10円硬貨といった硬貨(こうか)、千円札や1万円札といった紙幣(しへい)をいいます。

硬貨と紙幣を合わせて通貨(つうか)といいます。

しかし、簿記で取り扱う現金の範囲は、普段皆さんが利用している通貨以外にも、様々なものが存在します。

現金の範囲

簿記で取り扱う現金の範囲について、下にまとめました。

種類項目内容
通貨硬貨10円硬貨、100円硬貨など。外国の硬貨も含まれる。
紙幣千円札、1万円札など。外国の紙幣も含まれる。
通貨代用証券他人振出小切手他人(他の会社)が振り出した小切手
送金小切手銀行が振出人となっている小切手。送金する場合に利用される。
普通為替証書ゆうちょ銀行が発行する証書
定額小為替証書ゆうちょ銀行が発行する証書
配当金領収証配当金を受け取る権利を表す証書
期限到来公社債利札公社債に付された利札(クーポンとも)で期限が到来しているもの

このように簿記で現金といった場合には、通貨の他に通貨代用証券(つうかだいようしょうけん)も現金の範囲に含まれます。

通貨代用証券にはいくつか種類があります。馴染みのないものがほとんどだと思いますので、詳細に説明していきます。

小切手

小切手(こぎって)とは、小切手法に基づいて作成される有価証券をいいます。

まずは実際の小切手を見てみましょう。下にサンプルを用意しました。

このサンプルの小切手だと、『りす山太郎が「この小切手を所持している人に対して、250万円を全国ペンギン銀行動物の森支店から支払います」ということを約束する証書(小切手)を平成24年4月12日に振り出した(作成した)』ということです。

小切手を取り扱う場合には、いくつか知っておかないといけないことがあります。

1.記載事項
小切手は小切手法に基づいて作成されますが、上記サンプルのように必ず記載する事項があります。記載方法も定まっています。

2.当座預金の開設
小切手を振り出すには、必ず銀行と取引して、当座預金の口座を開設しなければいけません。

3.小切手帳
小切手を振り出す(作成する、発行する)には、小切手帳から作成します。

小切手帳は未記入の小切手が束になったものです。

サンプルには「A193377」という小切手番号が記載されていますが、全て連番で同様に番号が印字されています。

4.管理
小切手を振り出すには、必要事項を自署(または記名捺印)して、点線部分より切り離します。

左側の白地の部分は「ミミ」と呼ばれ、控えになります。

振り出した小切手情報を後に確認できるように、ミミには必要な情報を記入しておきます。

5.保管
小切手は勝手に使用されると、会社のお金の横領につながります。

従って、小切手帳や発行済みでまだ渡していない小切手は、金庫などで厳重に施錠管理します。

6.支払のための呈示
他の会社から小切手を受け取った場合ですが、自社が取引している銀行に持っていけば(支払のための呈示(ていじ)といいます)、取引銀行が取り立ててくれます。

【参考(外部リンク)】
お金に代わる働きをする手形・小切手 - 全国銀行協会 PDF文書
手形・小切手の振出 - 全国銀行協会 PDF文書

他人振出小切手と送金小切手

他人振出小切手(たにんふりだしこぎって)とは、他人(他の会社含む)が振出人となっている小切手をいいます。

送金小切手(そうきんこぎって)とは、遠隔地の他人に送金するために銀行に依頼して、銀行が振出人となって発行した小切手のことをいいます。

送金小切手は、当座預金口座を開設しなくても発行してもらえますが、銀行には送金額だけでなく、手数料も支払う必要があります。

他人振出小切手は、銀行に持っていき、支払のための呈示を行えば、銀行が取り立てを行った結果、自社の預金口座にお金が振り込まれます。

従って、他人振出小切手は現金として扱うことになります。他人振出小切手を受け取った時点で、簿記では現金の増加として仕訳します。

送金小切手も同様に現金として取り扱います。受け取った時点で現金の増加として仕訳します。

以上の通り、小切手は現金の範囲になりますが、現金ではなく別の科目で処理する場合もあります。

次に、現金として処理しない小切手について解説します。

自己振出小切手

自己振出小切手(じこふりだしこぎって)とは、自己(自社)が振出人となっている小切手をいいます。

自己振出小切手を受け取った場合には、現金の増加ではなく、当座預金の増加として仕訳します。

理由は、次の通りです。

簿記では、自社が小切手を振り出した時に当座預金を減少する仕訳をきります。

しかし、A社が振り出した小切手を、取引先B社が銀行に持って行かず、例えば、A社への買掛金の支払いのために、A社にその小切手を渡す、といった場合があります。

この場合、A社は小切手を振り出した時点で当座預金を減少させますが、実際は当座預金は減少していないことになります。従って、自己振出小切手を受け取った場合には、現金ではなく、当座預金を増加させる仕訳(当座預金を減少させた逆仕訳)をきります。

先日付小切手

先日付小切手(さきひづけこぎって)とは、小切手の振出日が将来の日付になっている小切手をいいます。

先日付小切手を受け取った場合には、現金ではなく、受取手形の増加として仕訳します。

振出日が将来の日付になっているため、振出日が到来するまでは、先日付小切手のお金は、預金口座に振り込まれません。

この性質は、現金というよりも受取手形に近いと考えられます。

従って、受取手形として処理します。

仕訳例

1.A社の従業員は交通費750円を現金で支払った。
2.A社は売掛金の回収として、B社より小切手10万円を受け取った。振出人はB社である。
3.A社は売上代金として、C社より小切手5万円が郵送されてきた。振出人は甲銀行である。
4.A社は売上代金として、D社より小切手7万円を受け取った。振出人はA社である。
5.A社は平成29年7月30日に売上代金として、E社より小切手15万円を受け取った。振出人はE社。振出日は平成29年10月31日となっている。

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1旅費交通費750現金750
2現金100,000売掛金100,000
3現金50,000売上50,000
4当座預金70,000売上70,000
5受取手形150,000売上150,000

まとめ

今回は現金の範囲と小切手について解説しました。

様々な用語が出てきて覚えるのが大変かもしれませんが、上述の解説を理解できれば、小切手の仕訳処理も覚えやすくなります。

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