原価計算とは|目的、定義、制度などについてポイントを解説
記事最終更新日:2021年12月20日
記事公開日:2016年11月4日
原価計算の目的・定義・制度の概要について解説します。
原価計算とは
原価計算とは、財務諸表など決算書作成のための会計制度の枠内、もしくは枠外において、製品やサービスを作るのに要した原価を計算すること、または計算の様々な方法の総称をいいます。
目的
原価計算基準に記載があります。まとめると次の通り。
<目的>
- 1.真実の原価を集計すること
- 2.価格計算
- 3.原価管理
- 4.予算編成・予算統制
- 5.経営の基本計画の設定
定義
原価計算基準に原価の本質として原価の内容が記載されています。
引用元:原価計算基準
1.原価とは価値の消費である。
財貨(=モノやサービス)を作り出すために財貨を消費することをいう。
2.原価とは財貨から転嫁された価値である。
経営で作り出された給付(=作られたモノやサービス)に転嫁された価値である。
3.原価とは、経営目的に関連したものである。
従って直接経営に関係のない財務活動は原価ではない。
4.原価とは、正常的なものである。
異常な状態から発生した価値の減少(=費用・損失)を含まない。
2.の「転嫁(てんか)」とは、作り出されたモノ・サービスは材料費・労務費・経費といった要素から構成されますが、それぞれの価値(=かかったコストの金額)を「そのまま次の計算に引き継ぐ」といったイメージです。
3.の財務活動ですが、「経営目的」とはモノ・サービスを作り、販売することをいいます。
4.の「異常な状態から発生した価値の減少」とは、具体的には異常な仕損,減損,たな卸減耗等、火災,震災,風水害,盗難,争議等の偶発的事故による損失、予期し得ない陳腐化等によって発生した臨時償却費などをいいます。
3.の財務費用とともに「非原価項目」の一要素でもあります。
原価計算と種類
原価計算は、大きく分けると「全部原価計算制度」と「直接原価計算制度」の2つに分類されます。
簿記2級の範囲では、全部原価計算は、「実際原価計算」と「標準原価計算」に分けて出題されます。
さらにこれらの原価計算制度は共通して「費目別計算」「部門別計算」「製品別計算」という手続きを経て原価を計算します。
<原価計算制度>
- ・実際原価計算
- ・標準原価計算
- ・直接原価計算
その他、原価計算基準の枠外で使用する原価計算としてCVP分析があります。簿記1級になると「差額原価収益分析」や「原価企画」、「活動基準原価計算」なども学習します。
制度別の勘定連絡図
一般的な場合の制度別の勘定科目間の関係を把握できます。
1.実際原価計算
実際原価に基づいて計算します。
必要な場合には、実際価格ではなく予定価格を用いて実際原価(予定原価)とすることもできます。この場合には、実際原価との差額を原価差異として計算して認識し、原価管理に役立てることができます。
実際原価 = 実際価格(又は予定価格) × 実際数量
2.標準原価計算
標準原価に基づいて計算します。
価格面だけでなく物量面についても原価の標準を設定する点が特徴です。実際原価との差額について、実際原価計算よりも様々な原価差異を認識できることから原価管理に最も有効な原価計算制度といえます。
標準原価 = 標準価格 × 標準数量
3.直接原価計算
主に利益計画を立てる目的で使用されます。原価を変動費と固定費に区分するのが特徴です。
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