工業簿記2級 費目別計算とは(原価計算入門)|分類、直接費と間接費
更新日:2020年8月12日
作成日:2020年5月19日
費目別計算の全体像をまとめました
原価計算の全体像を把握したい時や、各ページの解説で、この項目が原価計算全体の中でどの部分に該当するのか理解したい時にご利用下さい。
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※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。
種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)
クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。
費目別計算とは
費目別計算(ひもくべつけいさん)とは、原価計算(工業簿記)の第1段階の手続きであり、製品に要する原価要素を材料費、労務費、経費に分類し、さらに直接費と間接費に分類して集計する手続きをいいます。
引用元:原価計算基準
「原価の費目別計算とは、一定期間における原価要素を費目別に分類測定する手続をいい、財務会計における費用計算であると同時に、原価計算における第一次の計算段階である。」
<ポイント>費目別計算
原価要素を次の6種類に分類する原価計算(工業簿記)の第1段階の手続きのこと
- 直接材料費
- 間接材料費
- 直接労務費
- 間接労務費
- 直接経費
- 間接経費
上記の「種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)」を見ると、実際個別・実際総合・標準原価計算のどの勘定連絡図にも左側に材料費、労務費、経費のTフォームが配置されており、右側の仕掛品や製造間接費のTフォームに転記されることが分かります。
※直接原価計算では変動費と固定費への分類がポイントとなるため、費目別計算は論点になりにくい。
材料費とは
材料費(ざいりょうひ)とは、製品の元になる原材料や部品、消耗品などの材料に要した費用のことをいいます。
例えばズボンという製品の材料費は布、ボタン、ファスナー、糸などに要した費用をいいます。
引用元:原価計算基準
「材料費とは、物品の消費によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分する。(以下、省略)」
労務費とは
労務費(ろうむひ)とは、モノを作る際に直接または間接的に作業した人たちに関係した賃金・給料をいいます。
具体的には工場で働いている人たちの賃金・給料をいいます。
引用元:原価計算基準
「労務費とは、労務用役の消費によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分する(以下、省略)」
経費とは
経費(けいひ)とは、費目別計算の要素のうち、材料費と労務費以外の要素をいいます。
様々な項目が存在し、代表的な経費として減価償却費、外注加工賃、水道光熱費などがあります。
引用元:原価計算基準
「経費とは、材料費、労務費以外の原価要素をいい、減価償却費、たな卸減耗費および福利施設負担額、賃借料、修繕料、電力料、旅費交通費等の諸支払経費に細分する。」
直接費と間接費とは
直接費(ちょくせつひ)とは、原価要素がどの製品にどの位、消費したかが把握できるものをいいます。
間接費(かんせつひ)とは、原価要素がどの製品にどの位、消費したかが把握できないものをいいます。
引用元:原価計算基準
「製品との関連における分類とは、製品に対する原価発生の態様、すなわち原価の発生が一定単位の製品の生成に関して直接的に認識されるかどうかの性質上の区別による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを直接費と間接費とに分類する。」
各費目への分類方法
費目別計算では、原価要素を形態別分類を基礎とし、機能別分類を加味して材料費、労務費、経費に、さらにそれぞれを直接費と間接費に分類するとしています。
引用元:原価計算基準
「費目別計算においては,原価要素を,原則として,形態別分類を基礎とし,これを直接費と間接費とに大別し,さらに必要に応じ機能別分類を加味して,たとえば次のように分類する。(以下、省略)」
原価要素の分類を行うために、材料費、労務費、経費をさらに細かく分類します。この分類の方法として形態別分類と機能別分類があります。
材料費を例とすると、素材費(又は原料費)や買入部品費といった分類が形態別分類に該当し、主要材料費、補助材料費、工場消耗品費といった分類が機能別分類に該当します。
引用元:原価計算基準
「形態別分類とは、財務会計における費用の発生を基礎とする分類、すなわち原価発生の形態による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを材料費、労務費および経費に属する各費目に分類する。」
引用元:原価計算基準
「機能別分類とは、原価が経営上のいかなる機能のために発生したかによる分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを機能別に分類する。」
費目別計算の流れ
費目別計算の手続きの流れは次の通りです。
1.原価要素の識別
会社の活動のうち、製品を製造するために要した原価に関する活動を把握します。
例えば、ズボンを製造して販売する会社では布の購入は製品の製造に関する取引になります。
一方で、広告宣伝費を支払ったり、本社の経理や営業に属する社員への給料の支払いは製品の製造に関する活動ではありませんので原価要素ではありません。
2.費目の分類
1.で原価要素に該当する活動について、直接材料費、間接材料費、直接労務費、間接労務費、直接経費、間接経費のどれに該当するのか分類します。
分類にあたっては、より細かい項目のうち、どの項目に該当するのかを把握します。細目を把握することで、その費目として把握した根拠が明確になります。
例えば、布地を購入した場合、布地はズボンを製造する主な材料となることから、素材費(原料費)に該当し、直接材料費の活動として分類できます。
各費目の詳細は下記の記事を参照(分類の理解の仕方や覚え方のポイントをズボンメーカーを例に解説)
3.仕訳帳・伝票への記帳と総勘定元帳の転記
2.で分類した費目別に仕訳帳(または伝票)へ記帳し、総勘定元帳へ転記します。
※会社によって設定する勘定科目は異なります。日商簿記でも工業簿記は商業簿記と比較して、1つの活動について複数の勘定科目を使った方法が考えられます(大体の仕訳パターンは存在しますが、商業簿記と異なり出題される勘定科目は決まっていません)。
従って費目別計算の仕訳は、問題の設定をよく読んで使用する勘定科目や勘定連絡図を考慮する必要があります。
仕訳パターンの種類や具体的な覚え方のポイントなど詳細は下記の記事を参照(ズボンメーカーを例にして具体的に解説しています)。
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4.費目別の論点
以下、材料費、労務費、経費に分けて、費目別計算上の論点(ポイント)について解説します。
4-1.材料費のポイント
材料勘定であれば、購入した場合には借方、消費した場合には貸方に記入します。
購入の論点には、材料副費があります。具体的には材料費に含める範囲や材料副費の計算方法などを含みます。
また、消費の論点には、消費単価の計算(先入先出法、総平均法)や棚卸減耗費があります。
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4-2.労務費のポイント
代表的な勘定科目は賃金勘定です。
材料費と同様に購入(賃金の支払)が借方、消費(労働の発生)が貸方ですが、賃金には材料のように在庫がない、一方で賃金の締め日と支払日の論点が存在するため、勘定科目の要素が異なります(未払費用勘定が借方と貸方に転記される)。
労務費に属する項目は沢山存在するため、直接労務費なのか間接労務費なのか、覚えるのに一苦労します。
労働者が直接工なのか、間接工・パート・アルバイトなのかによって、労務費の計算方法が異なります。
また、消費の論点には、消費単価の計算(先入先出法、総平均法)や棚卸減耗費があります。
4-3.経費のポイント
経費とは材料費と労務費以外の原価要素であるため、沢山の項目が存在します。商業簿記で学習した勘定科目とリンクして考えると分かりやすくなります。
論点としては、直接経費は外注加工賃のみであり、それ以外は間接経費であること。そして、棚卸減耗費は材料費ではなく、間接経費であること。
この2点を抑えておきましょう。
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次の問題と解説
次は材料費の勘定科目や仕訳パターンについて解説します。材料費にはどのような原価活動があり、どのような仕訳パターンが存在するのかを具体例でイメージしながら覚えることがポイント
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