製造間接費の仕訳方法について勘定元帳を含めて詳細を解説

机上のPCとグラフなどの分析表

記事最終更新日:2023年7月18日
記事公開日:2021年10月26日

工業簿記において仕掛品と同じくらい重要な勘定科目が「製造間接費」です。

そして、製造間接費は仕訳方法・配賦計算・シュラッター図・原価差異分析など、仕掛品以上に難しい論点が多いのも特徴です。

本記事では、製造間接費の論点のうち、仕訳方法について概要を説明した後に、「勘定元帳」を含めて詳細を解説します。

各テーマの関連用語については、各テーマに掲載の「関連記事」で詳細を解説しています。

※製造間接費の概要は下記の関連記事で解説。

製造間接費とは

製造間接費」とは、製造投入した原価のうち、間接費をいいます。

間接費とは、「間接材料費」「間接労務費」「間接経費」であり、これらの総称が製造間接費です。

仕訳の特徴

直接費は「仕掛品」で仕訳するのに対して、間接費は「製造間接費」で仕訳します。

「製造間接費」には原価を集計します。従って、費用と同じく、「借方は増加(発生)」「貸方は減少」です。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
製造間接費の増加(発生)製造間接費×××相手勘定科目×××
製造間接費の減少相手勘定科目×××製造間接費×××

直接費は製品に直接関連付けられる原価要素であることから、複雑な計算がなく仕訳処理できます。

これに対して、間接費は、製品に直接関連付けられない性質を持つことから、間接費を直接的に各製品に配分できません。

そこで、「直接作業時間」など、間接費と製品との間に高い相関関係がある「配賦基準」を用いた「配賦計算」や、直接費では行わない「部門別計算」を行うことで、「正確な製品原価の計算」を実現します。

以上から、製造間接費の仕訳は、仕掛品と比較すると金額の計算や、仕訳処理が複雑になります。

勘定元帳の特徴

「実際原価計算」を適用した場合の基本的な製造間接費勘定を示します。

製造間接費勘定

左側(借方)には費目別計算によって分類した間接費(材料・賃金・経費)を転記します(「製造間接費」の増加)。この原価は「実際発生額」です。

右側(貸方)には、集計した間接費を仕掛品へ振り替えるため「仕掛品」を記入します(「製造間接費」の減少)。実際原価計算であれば基本的には「予定配賦額」で計上し、標準原価計算であれば「標準配賦額」で計上します。

この結果、貸借差額が生じます。 

この差額は「製造間接費配賦差異」であり、「原価差異」などの勘定科目へ振り替えます(上記の製造間接費勘定は「実際発生額 > 予定配賦額」のため、借方差異・不利差異)。

基本的な製造間接費勘定は以上の通りです。下記の解説のように、部門別計算や複数製品への配賦を行う場合には、別の勘定科目へ振り替えるなど、少し複雑になります。

製造間接費に関する代表的な勘定科目

製造間接費に関係する代表的な勘定科目を例示すると次の通り。

・製造間接費 ・原価差異 ・予算差異 ・操業度差異 ・能率差異

製造間接費の仕訳方法

原価計算手続き毎に製造間接費の仕訳方法を解説します。

1.費目別計算

費目別計算の手続きでは、「材料費」「労務費」「経費」をそれぞれ直接費と間接費に分類します。

費目別計算の結果、「間接材料費」「間接労務費」「間接経費」に分類された原価の消費については、「材料」「賃金・給料」「減価償却費」など、各費目の勘定科目から「製造間接費」へ振り替える仕訳を記帳します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
間接材料費の消費製造間接費×××材料×××
間接労務費の消費製造間接費×××賃金・給料×××
賞与引当金×××
退職給付引当金×××
間接経費の消費製造間接費×××減価償却費×××
水道光熱費×××
支払家賃×××
保管費×××
消耗品費×××

<補足>製造間接費として仕訳処理する間接経費の勘定科目について

「減価償却費」「水道光熱費」などの間接経費の勘定科目は、商業簿記では「販売費及び一般管理費」としてP/L計上します。

これに対して、「工場(建物)の減価償却費」「工場で発生した水道光熱費」など、製造に伴って発生した費用は、「販売費及び一般管理費」ではなく、「製造原価(間接費)」として、「製造間接費」に振り替えます。

2.部門別計算

製造間接費は、「部門別計算」によって製造部門に集計します。

具体的に説明すると、製造間接費は、一旦、製造に関係する各部門(「製造部門」と「補助部門」)に集計した後、「直接配賦法」「相互配賦法」といった計算方法によって、製造部門に集計します。

仕訳手続きとしては、「製造間接費」を各部門(最終的には「製造部門」)に振り替えます。

※次の通り、部門を表す様々な勘定科目を使用する場合があります。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
第1次集計製造間接費-補助部門×××製造間接費×××
製造間接費-製造部門×××
第2次集計製造間接費-製造部門×××製造間接費-補助部門×××

<補足>第1次集計と第2次集計

どちらも部門別計算上の用語です。

製造間接費を「部門個別費」と「部門共通費」に分類し、それぞれを「補助部門」と「製造部門」に賦課・配賦する手続きを「第1次集計」といいます。

第1次集計によって補助部門に集計した製造間接費を、製造部門に集計する手続きを「第2次集計」といいます。

※部門別計算の概要は下記の記事を参照。関連用語・手続きに関する関連記事も参照できます。

3.製品別計算

部門別計算によって製造部門に集計した製造間接費を、製品(総合原価計算の場合)や製造指図書(個別原価計算の場合)に配賦します。

仕訳手続きとしては、「製造間接費」を「仕掛品」に振り替えます。

※仕掛品の特徴を表す様々な勘定科目を使用する場合があります。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
部門別計算なし・単一製品の場合仕掛品×××製造間接費×××
取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
総合原価計算(ズボン製品)仕掛品-ジーンズ×××製造間接費-製造部門×××
仕掛品-チノパン×××
取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
個別原価計算(製造指図書)仕掛品-#101×××製造間接費-製造部門×××
仕掛品-#102×××

※製品別計算は下記の記事を参照。「個別原価計算」「総合原価計算」の手続きや「製造指図書」などの用語解説記事も参照できます。

4.原価差異分析

製造間接費を「予定配賦する場合(実際原価計算)」又は「標準配賦する場合(標準原価計算)」には、予定配賦額(又は標準配賦額)と実際発生額との原価差異を「シュラッター図」を用いて、「予算差異」「操業度差異」「能率差異」といった原因別の差異に分類し、原因を調査。今後の原価活動に役立てます。

仕訳手続きとしては、原価差異の金額について、「製造間接費」から「原価差異」などの勘定科目へ振り替えます。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
借方差異・不利差異の場合原価差異×××製造間接費×××
貸方差異・有利差異の場合製造間接費×××原価差異×××

仕訳例

  • 1.間接材料費10を消費した。
No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1製造間接費10材料10

仕訳問題(工業簿記2級)

PDCA会計の電子書籍に掲載の仕訳問題を全問お試しできます。

PDCA会計 電子書籍のご案内

日商簿記2級に準拠したスマホで読みやすい本格的な試験対策テキストと問題集。試験範囲の改定の都度、改訂版を発売しています。

工業簿記2級の記事

サイト内検索

著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

詳細はこちら↓
著者プロフィール

☆電子書籍の「0円キャンペーン」
日商簿記テキスト・問題集で実施中。X(旧twitter)で告知します。
「PDCA会計」をフォロー

簿記3級テキスト(PDCA会計の電子書籍)