商業簿記入門その42~商品保証引当金と売上割戻引当金の仕訳処理(2級)

公開日:2017年11月26日 更新日:2017年12月5日

商品保証引当金と売上割戻引当金の仕訳処理

前回、「商業簿記入門その41~貸倒引当金の個別評価と一括評価、B/S,P/L表示(2級)」では貸倒引当金の個別評価と一括評価の違い、及び貸借対照表や損益計算書上の表示方法について解説しました。

今回は商品保証引当金と売上割戻引当金の仕訳処理について説明します。

※簿記2級の論点になります。


商品保証引当金とは

商品保証引当金(製品保証引当金とも)とは、商品(製品)販売後の保証サービス発生に備えて、事前に費用(損失)を見積もった金額(引当金)をいいます。

例えば、家電商品には保証書が添付されており、保証書に記載された期間内であれば無償で修理や交換してもらえる場合があります。

このような保証サービスが発生した場合に要する費用(損失)を事前に見積もって実際の保証サービスが発生する前に引当金として計上する場合に商品保証引当金を使用します。

商品保証引当金の仕訳処理

商品保証引当金の増減に関する取引は、「商品保証引当金勘定(または製品保証引当金勘定)」「商品保証引当金繰入勘定(または製品保証引当金繰入勘定)(費用に属する勘定科目)」「商品保証引当金戻入勘定(または製品保証引当金戻入勘定)(収益に属する勘定科目)」を使用して仕訳処理します。

商品保証引当金の設定時には、売上高に対して過去の保証サービス発生実積率などを乗じて設定します。

商品保証サービスの発生時には、既に計上している商品保証引当金が存在すれば、商品保証引当金を減少させる仕訳処理をきります。具体的には借方に商品保証引当金勘定を記入し、貸方にはサービスの内容に応じた勘定科目を記入します(現金預金などの勘定科目や仕入、費用に関する勘定科目など)。

出来事借方科目借方金額貸方科目貸方金額
商品保証引当金の設定貸倒引当金残高 <
今回見積額の場合
商品保証引当金繰入×××商品保証引当金×××
貸倒引当金残高 >
今回見積額の場合
商品保証引当金×××商品保証引当金戻入×××
保証サービスの発生商品保証引当金×××現金預金、仕入、その他×××

売上割戻引当金とは

売上割戻引当金(うりあげわりもどしひきあてきん)とは、売上割戻の発生に備えて、事前に費用(損失)を見積もった金額(引当金)をいいます。

売上割戻(うりあげわりもどし)とは、取引先との契約などで予め決められた販売実績(金額や数量)を超えた場合に、予め契約などで決めておいた基準に基づいて返金や売掛金などの減額を行うことをいいます。

※売上割戻による返金や減額したお金のことを「割戻金(リベート)」といいます。

例えば、当期に売上に対して、翌期に売上割戻を計上する可能性が高く、割戻金を合理的に見積もることができる場合には、当期に売上割戻引当金を見積もって計上します。

売上割戻引当金の仕訳処理

売上割戻引当金の増減に関する取引は、「売上割戻引当金勘定」「売上割戻引当金繰入勘定(費用に属する勘定科目)」「売上割戻引当金戻入勘定(収益に属する勘定科目)」を使用して仕訳処理します。

詳細は後述の仕訳例を使って解説します。

※損益計算書上では、売上高から直接控除するか、又は売上高の控除科目として表示します。

出来事借方科目借方金額貸方科目貸方金額
売上割戻
引当金
の設定
売上割戻引当金の設定売上割戻引当金繰入×××売上割戻引当金×××
決算整理時に売上割戻
引当金の残高がある場合
売上割戻引当金×××売上割戻引当金戻入×××
売上割戻引当金繰入×××売上割戻引当金×××
割戻金
の支払い
お金を支払う
場合
前期に引当金計上
している場合
売上割戻引当金×××現金預金など×××
前期に引当金計上
していない場合
売上×××現金預金など×××
売掛金を減額
する場合
前期に引当金計上
している場合
売上割戻引当金×××売掛金×××
前期に引当金計上
していない場合
売上×××売掛金×××

仕訳例

No1.A社は第1期(×1年4月1日~×2年3月31日)の決算において、製品保証引当金と売上割戻引当金を見積もり計上する。
①商品保証引当金残高:200万円
②商品保証引当金は当期の売上高1億円に3%を乗じて見積もる。
③売上割戻引当金の設定に必要な情報は次の通り。
・B社に対する売上高に対して5%の割戻金を見積もる。
・B社に対する第1期の売上高は、2千万円である。
・このB社に対する割戻金は、×1年10月1日~×2年9月30日の間に発生した売上に対するものである。
・決算整理時の売上割戻引当金の残高は30万円である(この残高の対象となる割戻金は支払済である)。

第2期(×2年4月1日~×3年3月31日)の取引
No2.×2年6月15日にA社は第1期に販売した商品に係る無償修理を行い、修理費用10万円は普通預金から支払った。
No3.×2年10月10日、B社に対する割戻金180万円(うち、第1期の売上に係る割戻金は80万円)を当座預金から支払った。

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1商品保証引当金繰入1,000,000商品保証引当金1,000,000
売上割戻引当金300,000売上割戻引当金戻入300,000
売上割戻引当金繰入1,000,000売上割戻引当金1,000,000
2商品保証引当金100,000普通預金100,000
3売上割戻引当金800,000当座預金1,800,000
売上高1,000,000

【解説】
No1①②【商品保証引当金の設定】
第1期の商品保証引当金見積額:売上高1億円 × 3% = 3,000,000円
商品保証引当金繰入額:3,000,000円 - 商品保証引当金残高200万円 = 1,000,000円

No2.【商品保証引当金の取り崩し】
「第1期の売上」と記載してあります。従って、×1年4月1日~×2年3月31日に販売した商品ということになります。

ということは、この商品に係る無償修理については、No1①②にて、商品保証引当金を計上している、ということになります。

以上から、引当金を取り崩す仕訳をきるために借方には商品保証引当金を記入します。

No1③【売上割戻引当金の設定】
第1期(×1年4月1日~×2年3月31日)のB社に対する売上高2千万円 × 5% = 1,000,000円

なお、決算整理時の売上割戻引当金残高30万円は既に割戻金は支払済みであるため、全額戻入の処理を行い残高をゼロにします。具体的には売上割戻引当金を減少させるので、借方に売上割戻引当金を記入し、貸方には売上割戻引当金戻入勘定を使用します。

No3.【割戻金支払時の仕訳処理】
割戻金180万円のうち、第1期の売上に係る割戻金は80万円です。

第1期の決算にて、B社の売上に対する売上割戻引当金を100万円計上しています(上述No1③)。従って、この売上割戻引当金100万円から80万円を取り崩す仕訳処理として、借方に売上割戻引当金80万円を記入します。

割戻金180万円のうち、残りの100万円はいつの期の売上に対するものなのか、ですが、No1③の情報に「このB社に対する割戻金は、×1年10月1日~×2年9月30日の間に発生した売上に対するものである。」という記載があります。

「×1年10月1日~×2年9月30日」という期間のうち、前期(第1期)に該当する「×1年10月1日~×2年3月31日」はNo1③にて引当金100万円を計上しました(上述の通り80万円を取り崩し)。

従って、残りの割戻金100万円は、第2期のうち、「×2年4月1日~×2年9月30日」の期間に発生した売上に対する割戻金ということになります。しかし、第2期の売上に対しては売上割戻引当金は計上していませんので、借方には売上高を記入します。

【補足】引当金の対象となるのは?(引当金の要件を理解する)

※引当金について理解を深めたい方はお読みください。応用問題にも対応できる力がつきます。

今回解説した商品保証引当金と売上割戻引当金ですが、どちらも「売上に対して〇%」といったように、「引当金を計上するための対象(ここでは売上)となる金額を決めること」が問題を解くポイントになります。

「当期の売上〇〇円に対して商品保証引当金を計上する」であれば〇〇円をそのまま当てはめればいいので難しくありませんが、場合によっては問題から情報を読み取って正確に引当金計上の対象となる項目(ここでは売上高)を計算しないといけないような「応用力」を試される問題も出題されます。

【引当金を計上する要件】
引当金を計上する要件(ようけん。「条件」と読み替えて差し支えありません)の1つに「費用又は損失が当期以前の事象に起因して発生しているものであること」があります。

今回の問題に当てはめると、「費用又は損失」とは「無償保証」や「割戻金」のことです。

また、「当期以前の事象」の当期とは、決算期のこと、すなわち引当金を計上する期のことです。

従って、「当期以前の事象」とは「引当金を計上する期以前に計上した売上」ということです。今回の問題では第1期と第2期だけの設定であることや、引当金を計上するのは第1期という設定であることを、併せると「第1期の売上」ということになります。

以上から、「費用又は損失が当期以前の事象に起因して発生しているものであること」という要件を今回の問題に当てはめると、「第1期の売上に対する無償保証や割戻金に対してのみ、商品保証引当金や売上割戻引当金を計上する」ということになります。

【別の問題設定で売上割戻引当金を考えてみる】

上述の問題のNo1③について、「このB社に対する割戻金は、×1年10月1日~×2年9月30日の間に発生した売上に対するものである。」の情報を次のように変更します。

「このB社に対する割戻金は、×1年10月1日~×2年9月30日の間に発生した売上に対するものである。当期(第1期)の売上実績を含め総額売上高は5千万円を見込んでいる。」

このような問題設定になった場合であっても、上述で説明した引当金の要件を理解していればNo1の仕訳をきることができるでしょう。5千万円という文言につられることなく、「第1期の売上」である2千万円に対して5%を掛け算すればいい、ということになります。

まとめ

今回は商品保証引当金と売上割戻引当金の仕訳処理について解説しました。基本的な出題パターンを押さえて、余力があれば、応用問題にも対応できるようにしておきましょう。


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