商業簿記2級 賞与引当金と退職給付引当金の仕訳処理

更新日:2019年9月18日
公開日:2017年12月9日

前回、「商業簿記入門その42~商品保証引当金と売上割戻引当金の仕訳処理(2級)」では商品保証引当金と売上割戻引当金の仕訳処理について解説しました。

今回は賞与引当金と退職給付引当金の仕訳処理について説明します。

賞与引当金とは

賞与引当金とは、従業員(いわゆる会社員)に支払う賞与(いわゆるボーナス)の発生に備えて、事前に費用(損失)を見積もった金額(引当金)をいいます。

賞与とは、既に会社に提供された労働に対して支払う性質を持っています。

すなわち、「労働対価の後払い」ともいうことができます。

従って、賞与が実際に支払われていなくとも、将来の賞与支払いに備えて事前に費用(損失)として金額を見積もり引当金として計上します。

※実務で賞与引当金を見積もる場合には、賞与規程などに記載された賞与の基準に基づいて賞与引当金の見積額を算定します。

賞与引当金の仕訳処理

賞与引当金の増減に関する取引は、「賞与引当金勘定」「賞与引当金繰入勘定(費用に属する勘定科目)」を使用して仕訳処理します。

詳細は後述の仕訳例を使って解説します。

出来事借方科目借方金額貸方科目貸方金額
賞与引当金の設定賞与引当金繰入×××賞与引当金×××
賞与の支払い賞与引当金×××現金預金など×××
賞与×××

退職給付引当金とは

退職給付引当金(たいしょくきゅうふひきあてきん)とは、従業員の退職時に支払う退職一時金や退職後の退職年金支払い(以下、これらを「退職金」といいます)に備えて、事前に費用(損失)として見積計上した金額(引当金)をいいます。

退職金は、従業員が会社で働いてきた結果として与えられる労働対価であり、賞与引当金と同様に「労働対価の後払い」としての性質を持っています。

雇用契約や給与規程などでは、退職金は退職時または退職後に支払われると規定されることが通常であるため、毎月の給与支払いでは、退職金は債務(会社側から見て)としては発生しておりません。従って、未払金や未払費用として毎月の給与と同じように仕訳処理することはできません。

しかしながら、引当金としての計上要件(ようけん、条件と読み替えて差し支えありません)は満たしていることから、毎決算時に退職給付引当金を計上して費用計上します。

【補足】引当金の計上要件について
会計基準には、「引当金を計上するための要件」という4つの要件が存在します。これらの要件を全てを満たした場合には引当金を計上しないといけません。

引当金の計上要件は、簿記2級の範囲外であるため、詳細な解説は差し控えますが、応用問題を解く際に引当金のある要件を理解しておくとスムーズに理解することができるため、後述の仕訳例を解説する際に説明します。

年金基金とは

年金基金(ねんきんききん)とは、会社の退職年金を運用し管理する団体をいいます。

会社が年金基金に退職金を預ける(「掛け金(かけきん)を拠出(きょしゅつ)する」といいます)お金は、年金基金によって運用され、従業員が退職した後に退職年金として、年金基金から従業員に対して支払われます。

退職給付引当金の仕訳処理

退職給付引当金の増減に関する取引は、「退職給付引当金勘定」「退職給付費用(費用に属する勘定科目)」を使用して仕訳処理します。

毎決算時に将来発生する退職金の算定を行い、そのうち当期の労働対価に含まれる部分を当期の費用として見積り、退職給付引当金として計上します。

また、年金基金に掛け金を拠出した場合には、その分だけ会社が運用管理する退職金が年金基金に移動したことになります。

退職給付引当金とは会社が運用管理する退職金であるため、年金基金に掛け金を拠出した場合には退職給付引当金を減少させる仕訳をきります。

出来事借方科目借方金額貸方科目貸方金額
退職給付引当金の計上退職給付費用×××退職給付引当金×××
年金基金への掛け金拠出退職給付引当金×××現金預金など×××
退職一時金の支払い退職給付引当金×××現金預金など×××

仕訳例

  • 1.A社は第1期の決算(×1年4月1日~×2年3月31日)において、賞与引当金と退職給付引当金を見積もり計上する。
  • ①賞与引当金の設定に必要な情報は次の通り。
  • ・賞与支給は年2回(6月、12月)
  • ・次回6月支給見込総額は300万円である。
  • ・支給対象期間は6月支給が×1年11月1日~×2年4月30日、12月支給が×2年5月1日~10月31日である。
  • ②退職給付を見積もった結果、当期の従業員の労働に対する退職給付は500万円となった。
  • 以上の情報から、賞与引当金と退職給付引当金の計上に関する仕訳をきりなさい。
  • 第2期(×2年4月1日~×3年3月31日)になった。次の取引について仕訳処理しなさい。
  • 2.×2年6月になり、上記No1.①の設定の通り、賞与300万円を当座預金から支払った。
  • 3.×2年7月にA社は、年金基金へ掛け金200万円を当座預金から拠出した。
  • 4.×2年11月にA社は、従業員甲の退職に伴い、一時退職金100万円を普通預金から支払った。
No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1賞与引当金繰入2,500,000賞与引当金2,500,000
退職給付費用5,000,000退職給付引当金5,000,000
2賞与引当金2,500,000当座預金3,000,000
賞与500,000
3退職給付引当金2,000,000当座預金2,000,000
4退職給付引当金1,000,000普通預金1,000,000

【解説】賞与引当金の見積額の算定について

No1.①【賞与引当金の設定】
賞与引当金繰入額:6月支給見込総額300万円 × 5か月(×1年11月1日~×2年3月31日) ÷ 6か月(×1年11月1日~×2年4月31日) = 2,500,000円

まずは情報を読み取ります。「賞与とは何か?」ということと「引当金を費用計上する期間はいつからいつまでなのか?」ということを知っておく必要があります。

(1)「賞与とは何か?」
→最初の解説の通り、「労働対価の後払い」です。

すなわち、1か月間の労働には給料だけでなく、賞与で支払われる部分も含まれます。

ただし支払いは給料支払い時ではなく、数か月分の労働対価を一度に後払いで支払う、ということを意味します。

(2)「引当金を費用計上する期間はいつからいつまでなのか?」
→引当金を計上する条件の1つに、「(引当金の)発生が当期以前の事象に起因していること」があります。

今回の賞与の問題に当てはめて考えると、まず「事象」とは、賞与が発生するための条件である「労働」を指しています。

さらにこの問題では、第1期の決算に関する仕訳処理であることから、「第1期の労働であること」が賞与引当金の計上の条件になります。

(3)問題の賞与に関する情報より

「・賞与支給は年2回(6月、12月)」「・次回6月支給見込総額は300万円である。」「・支給対象期間は6月支給が×1年11月1日~×2年4月31日、12月支給が×2年5月1日~10月31日である。」

これらの情報から、「第1期の労働」に関する部分の情報だけを拾って加工すると次の通りです。

「6月賞与の支給見込総額は300万円。支給対象期間は×1年11月1日~×2年4月30日(6か月)。うち第1期(の労働)に帰属するのは×1年11月1日~×2年3月31日(5か月)」

引当金として計上できるのは「第1期の労働」に属する部分だけであるため、6か月分ではなく、5か月分だけを計上します。当期は×2年3月31日までであるので、×2年4月30日は当期には含まれません。

以上から、300万円の6分の5である250万円が答えになります。

No3.【賞与支給時の仕訳】
250万円は賞与引当金を計上していたため、借方に賞与引当金を記入します。

支給額300万円との差額50万円は賞与引当金を計上していない部分であるため、「賞与勘定(費用に属する勘定科目)」を借方に記入します。

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まとめ

今回は商品保証引当金と賞与引当金の仕訳処理について解説しました。賞与引当金は解説に書いてあることを理解できれば問題もすんなり解けるはずです。プラス反復演習で頭に定着させましょう。

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