商業簿記入門その44~修繕引当金と返品調整引当金の仕訳処理(2級)

更新日:2019年4月13日
公開日:2017年12月9日

修繕引当金と返品調整引当金の仕訳処理

前回、「商業簿記入門その43~賞与引当金と退職給付引当金の仕訳処理(2級)」では賞与引当金と退職給付引当金の仕訳処理について解説しました。

今回は修繕引当金と返品調整引当金の仕訳処理について説明します。

※簿記2級の論点になります。


修繕引当金とは

修繕引当金とは、建物や機械などの固定資産の修繕に備えて、事前に費用を見積もり計上する金額(引当金)をいいます。

「修繕」とは、ここでは修理と読み替えて差し支えありません。

例えば、将来に大規模な自社ビルの修繕を計画しており、修繕に必要な支出金額が見積ることができる場合には、修繕までの期間に渡って引当金を毎期計上します。

修繕引当金の仕訳処理

修繕引当金の増減に関する取引は、「修繕引当金勘定」「修繕引当金繰入勘定(費用に属する勘定科目)」「修繕引当金戻入勘定(収益に属する勘定科目)」を使用して仕訳処理します。

出来事借方科目借方金額貸方科目貸方金額
修繕引当金の計上通常の処理修繕引当金繰入×××修繕引当金×××
残高が存在する場合
(※)
修繕引当金×××修繕引当金戻入×××
修繕引当金繰入×××修繕引当金×××
修繕の実施修繕代金 <
修繕引当金の場合
修繕引当金×××現金預金など×××
修繕代金 >
修繕引当金の場合
修繕引当金×××現金預金など×××
修繕費など×××

(※)洗い替え法を想定した仕訳処理を掲載しています。実際に出題された場合には問題の指示に従ってください。


返品調整引当金とは

返品調整引当金とは、当期に販売した商品が翌期に返品されることが想定される場合に、予め事前に当期に費用として見積もって計上しておく金額(引当金)をいいます。

当期に販売している場合には、既にその商品は損益計算書上にて売上計上して利益計上されていることになります。

そのような商品が翌期になって返品された場合には、当期の利益を取り消すような仕訳処理を行うことになりますが、当期の段階で、翌期に返品される可能性が高いことが分かっているのであれば、返品される商品金額を当期の決算にて見積もって、利益相当額を引当金として計上しておきます。

※実務では、これまでの返品額などに基づいて「返品率」を設定します。

なぜ売上全額ではなく、利益相当額だけなのかといえば、商品自体は戻ってくるからです。従って、売上(=商品売価)から売上原価(=商品仕入れ値)を差し引いた利益分だけが返品によって純粋に損した部分であるため、利益相当額だけを返品調整引当金として計上します。

返品調整引当金の仕訳処理

返品調整引当金の増減に関する取引は、「返品調整引当金」「返品調整引当金繰入(費用に属する勘定科目)」「返品調整引当金戻入(収益に属する勘定科目)」を使用して仕訳処理します。

決算の際に、翌期に返品が行われる商品に対する利益額を見積もり、その見積返品額を返品調整引当金として計上します。

具体的には借方に返品調整引当金繰入勘定を記入し、貸方に返品調整引当金勘定を記入します。

返品調整引当金繰入は費用のため、損益計算書に表示されますが、損益計算書上では、売上総利益の控除科目として表示されることになります。

出来事借方科目借方金額貸方科目貸方金額
返品調整引当金の計上通常の処理返品調整引当金繰入×××返品調整引当金×××
残高が存在する場合
(※1)
返品調整引当金×××返品調整引当金戻入×××
返品調整引当金繰入×××返品調整引当金×××
翌期に返品の発生 (※2)仕入×××売掛金など×××
返品調整引当金×××

(※1)洗い替え法を想定した仕訳処理を掲載しています。実際に出題された場合には問題の指示に従ってください。

(※2)返品の発生時の仕訳について
返品の仕訳は「売上 ××× / 売掛金 ×××」と簿記3級では学習しますが、翌期に返品があった場合には、売上は当期の決算書で確定しており、繰越利益剰余金に含まれてしまっています。

従って、返品の対象となる商品の売上は既に存在しないため、売上金額のうち、商品原価(仕入れ値)の部分は、実際には返品ですが「新たに商品を仕入れた」と考えて仕訳処理します。

そして、売上金額のうち利益部分は、既に返品調整引当金を当期の決算時に貸方計上しているので、この返品調整引当金を借方に計上します。


仕訳例

  • 1.A社は第1期の決算(×1年4月1日~×2年3月31日)において、修繕引当金と返品調整引当金を見積もり計上する。
  • ①自社ビルの修繕を翌期に実施するため、これまで累計で800万円を修繕引当金として計上してきた。当期の負担額を見積もった結果、200万円となった。
  • ②販売している商品のうち、甲商品は返品可能性が高いため、毎期返品調整引当金を計上している。
  • ・甲商品は掛け販売しており、販売時には売掛金を計上している。
  • ・当期の甲商品の売上高は5千万円、売上利益率は20%だった。
  • ・甲商品の返品率は5%である。
  • ・決算時の返品調整引当金残高は10万円である。全て戻し入れの処理(洗替法)を行う。
  • 甲商品の返品調整引当金は当期の甲商品の利益相当額に対して返品率を乗じることによって計算する。
  • 以上の情報から、退職給付引当金と賞与引当金の計上に関する仕訳をきりなさい。
  • 第2期(×2年4月1日~×3年3月31日)になった。次の取引について仕訳をきりなさい。
  • 2.×2年5月になり、自社ビルの修繕を行った。修繕に要した支出額は900万円である。当座預金から支払った。
  • 3.×2年10月に甲商品が販売金額で150万円分、返品された。
No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1修繕引当金繰入2,000,000修繕引当金2,000,000
返品調整引当金100,000返品調整引当金戻入100,000
返品調整引当金繰入500,000返品調整引当金500,000
2修繕引当金9,000,000当座預金9,000,000
3仕入1,200,000売掛金1,500,000
返品調整引当金300,000

【解説】返品調整引当金について

No1.②【返品調整引当金の計上】
返品調整引当金繰入額:甲商品売上高5千万円 × 売上利益率20% × 返品率5% = 500,000円

「利益相当額に対して返品率を乗じて計算」と問題にあります。利益相当額は売上×利益率で求めることができます。

なお、決算時の残高10万円は返品調整引当金戻入勘定を使用して戻し入れの仕訳処理を行います。

No3.【返品時の仕訳処理】
返品額(商品仕入額):返品された甲商品販売額150万円 × ( 1-売上利益率20% ) = 1,200,000円
利益相当額(返品調整引当金の取り崩し額):返品された甲商品販売額150万円 × 売上総利益率20% = 300,000円

返品処理は借方に仕入、貸方に売掛金を記入します。そして、返品の利益相当額は前期に計上した返品調整引当金を取り崩すため借方に返品調整引当金勘定を記入します。

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まとめ

今回は修繕引当金と返品調整引当金の仕訳処理について解説しました。それぞれの引当金について計算方法のパターンを問題演習を通じて頭に入れていきましょう。


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