3-6 当座借越と当座預金出納帳
今回は、当座預金の特殊な取引である当座借越と、補助簿の1つである当座預金出納帳を解説します。
当座借越とは
当座借越(とうざかりこし)とは、当座借越契約を銀行と契約締結している場合に、銀行に立て替えてもらうことによって、預金残高を超えて小切手を発行することをいいます。
当座借越契約とは、銀行と締結する預金残高を超える一定限度額の支払を行うことができる契約をいいます。
簡単にいえば、当座預金口座の残高がゼロの状態から、小切手を振り出せます。
小切手の振り出しは当座預金が減少するため、残高がマイナスになりますが、銀行と当座借越契約を締結すれば、一定限度額までマイナス残高で支払いできます。
決算整理時の当座借越の仕訳
例えば、決算日時点で当座預金残高がマイナス100万円、すなわち、
当座預金勘定が1,000,000円の「貸方」残高
とします。当座預金は資産のため、通常は「借方」残高ですが、マイナス残高のため、貸方残高になります。
この場合には、決算時に決算整理仕訳として、「借方に当座預金100万円、貸方に当座借越100万円」を記入し、マイナス残高の当座預金を「当座借越(負債に属する勘定科目)」に振り替える仕訳を記帳します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 1,000,000 | 当座借越 | 1,000,000 |
すなわち、当座預金の残高をゼロにするということです。そして、代わりに貸方には「当座借越(負債)」を記入します。
<参考:決算時に当座借越を記入する理由>
- ・当座預金がマイナスの状態とは、「銀行から借り入れをしている状態と同じ」と考えます。
- そこで、決算時点で当座借越という借入が存在することを記録するために、上記の仕訳を記帳します。
翌期首には、再振替仕訳を記帳します。具体的には決算整理仕訳で「当座預金残高をゼロにした状態」から、もとの「当座預金残高がマイナス100万円の状態」に戻すため、「借方に当座借越100万円を記入し、貸方に当座預金100万円を記入」するように仕訳します。これで当座預金残高はマイナス100万円となり、決算前の状態に戻ります。
※再振替仕訳や決算整理仕訳は「13-3 決算整理事項等」で解説します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
決算整理 | 当座預金 | 1,000,000 | 当座借越 | 1,000,000 |
翌期首 | 当座借越 | 1,000,000 | 当座預金 | 1,000,000 |
当座借越を使用しない仕訳
当座借越勘定の代わりに「借入金(負債に属する勘定科目)」で仕訳します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
決算整理 | 当座預金 | 1,000,000 | 借入金 | 1,000,000 |
翌期首 | 借入金 | 1,000,000 | 当座預金 | 1,000,000 |
当座預金出納帳
「当座預金出納帳(とうざよきんすいとうちょう)」とは補助簿のうちの1つです。当座預金取引の詳細を1箇所に記録する場合に使用します。
<ポイント:簿記の手続き(当座預金出納帳)>
- 取引→仕訳帳(伝票)→総勘定元帳→当座預金出納帳
補助簿を利用する役割については現金出納帳と同様です。補助簿共通の役割と覚えておきましょう。
当座預金出納帳の記帳例
当座預金出納帳と記帳について掲載しましたので、ご覧ください。
当座預金出納帳には、当座預金の取引のみを記載します。つまり、
仕訳帳の借方と貸方を見て、当座預金勘定の記載がある取引だけを当座預金出納帳に記帳
します。
当座預金出納帳の「借貸」という項目ですが、残高がプラスであれば「借」、マイナスの場合(当座借越の場合)には「貸」を記載します。
仕訳問題
- 1.決算日の当座預金勘定残高は50万円(貸方残高)であった。
- 2.翌期首になった。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
1 | 当座預金 | 500,000 | 当座借越※ | 500,000 |
2 | 当座借越※ | 500,000 | 当座預金 | 500,000 |
※借入金でも可。