13-3 決算整理事項等
「13-1 決算手続きの流れ」で解説した通り、決算整理事項等は次の通り分類できます。
<ポイント:決算整理事項等>
- ・決算整理事項
- ・未処理事項
- ・その他(仕訳の訂正)
決算整理事項とは
決算整理事項(けっさんせいりじこう)とは、期中に記帳する日常の仕訳とは異なる「決算書を作成するための特別な仕訳」を行う事項をいいます。
決算整理仕訳
この決算書を作成するための特別な仕訳を「決算整理仕訳(けっさんせいりしわけ)」といいます。
期中の取引と同様に仕訳帳や伝票に仕訳を記帳しますが、その際の日付は全て決算日にします。
決算手続き上の位置づけ
決算整理前(合計残高)試算表の作成後に行います。
決算整理仕訳を記帳した後には、「決算整理後(合計残高)試算表の作成」「決算振替仕訳と帳簿の締め切り」「精算表の作成」といった作業を行い、決算書の作成へと続きます。
<ポイント:決算手続き>
- ①決算整理前試算表の作成
- ②決算整理事項等
- ③決算整理後試算表の作成
- ④決算振替と帳簿の締め切り
- ⑤精算表の作成
決算整理事項の一覧
次の通り。決算整理事項と決算整理仕訳は論点毎に各ページで解説しています。
内容 | ページ |
---|---|
現金過不足 | 3-4 現金過不足 |
当座借越 | 3-6 当座借越と当座預金出納帳 |
貸倒引当金の見積り | 7-1 貸倒引当金と仕訳 |
商品の棚卸しと売上原価の計算 | 8-1 3分法による商品売買取引の仕訳 |
減価償却費の計算と計上 | 9-2 減価償却費と固定資産台帳 |
貯蔵品の棚卸と計上 | 10-4 通信費・収入印紙・消耗品費 |
経過勘定の計上 | 10-7 経過勘定科目 |
未処理事項とは
「未処理事項(みしょりじこう)」とは、期中に処理していなかった事項をいいます。
未処理事項は、期中に仕訳帳や総勘定元帳を記帳していない「未記帳(みきちょう)の状態」であるため、決算手続きとして決算整理仕訳と同じく仕訳します。
<ポイント:未処理事項の例>
- ・金庫の中の小切手を現金として処理していなかった
- ・売掛金を回収したが仕訳をしていなかった
- ・支払い時に仮払金として処理した後に適切な勘定科目に振り替えていなかった
- ・原因が判明したにも関わらず仮受金をそのままにしていた
決算整理仕訳と同じく、仕訳帳や総勘定元帳の日付は全て決算日にします。
- (仕訳例)
- ・決算時(決算日は3/31)に金庫を実査した結果、売掛金の回収代金として受け取った小切手10万円が未記帳であることが判明したため、未処理事項として仕訳処理する。
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
3/31 | 現金 | 100,000 | 売掛金 | 100,000 |
(解説)
期中仕訳と同様に売掛金の回収として仕訳しますが、日付は決算日の3/31にします。
仕訳の訂正とは
「仕訳の訂正(ていせい)」とは、期中に間違えて処理していた仕訳を訂正することをいいます。
「仕訳の修正(しゅうせい)」ともいい、訂正(修正)のための仕訳を「訂正仕訳(ていせいしわけ)」または「修正仕訳(しゅうせいしわけ)」といいます。
<ポイント:仕訳の訂正(修正)の例>
- ・仕訳した金額の間違い
- ・勘定科目の間違い
決算整理仕訳や未処理事項の仕訳と同じく仕訳帳や総勘定元帳の日付は全て決算日にします。
訂正仕訳の書き方
間違えた部分は、貸借反対の仕訳を記入することで残高を相殺できます。
貸借反対の仕訳を「反対仕訳(はんたいしわけ)」または「逆仕訳(ぎゃくしわけ)」といいます。
訂正仕訳の書き方(反対仕訳の使い方)を2つの例で解説します。
<訂正仕訳1>
- (例)
- 8/31に売掛金3万円を回収して普通預金に振り込まれたが、間違えて30万円と記帳していたため決算手続き(決算日3/31)として訂正する。
(仕訳)
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
3/31 | 売掛金 | 270,000 | 普通預金 | 270,000 |
(解説)
8/31に売掛金を回収した時に次の通り仕訳しています。
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
8/31 | 普通預金 | 300,000 | 売掛金 | 300,000 |
しかし実際に回収したのは30万円ではなく3万円です。間違えて27万円だけ多く記入してしまいました。この部分は残高に反映させてはいけません。
そこで27万円の残高の影響を相殺するために、次の通り、決算時に訂正仕訳として反対仕訳を記帳します。
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
3/31 | 売掛金 | 270,000 | 普通預金 | 270,000 |
次に勘定科目の訂正仕訳の例を示します。
<訂正仕訳2>
- (例)
- 8/31に売掛金3万円を回収して普通預金に振り込まれたが、売掛金ではなく誤って受取手形の回収として記帳していたため決算手続き(決算日3/31)として訂正する。
(仕訳)
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
3/31 | 受取手形 | 30,000 | 売掛金 | 30,000 |
(解説)
勘定科目の訂正は金額の訂正よりも難しいので、はじめのうちは2つの仕訳を書いて理解します。
8/31に売掛金を回収した時に誤って受取手形の回収として次の通り仕訳しています。
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
8/31 | 普通預金 | 30,000 | 受取手形 | 30,000 |
そこで、売掛金の回収に訂正するため、決算時に、はじめに上の仕訳の反対仕訳を記帳して、8/31の仕訳の残高に対する影響を相殺します。
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
3/31 | 受取手形 | 30,000 | 普通預金 | 30,000 |
次に正しい仕訳として、売掛金の回収を記帳します。こちらも日付は決算日(3/31)です。
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
3/31 | 普通預金 | 30,000 | 売掛金 | 30,000 |
以上の2つの訂正仕訳のうち、普通預金部分は借方も貸方も3万円であるため、残高に影響がありません。
そこで2つの仕訳を合算して、借方と貸方の普通預金を相殺した仕訳が、解答の仕訳です。
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
3/31 | 受取手形 | 30,000 | 売掛金 | 30,000 |
本試験で出題された場合、2つの仕訳でなく、普通預金を相殺して1つの仕訳で回答します。
慣れないうちは2つの仕訳で考え、試験本番までには1つの仕訳で訂正仕訳を考えられるようにしましょう。
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