工業簿記2級 損益計算書と製造原価報告書の関係と表示(日商簿記2級)

デスク上のPCとグラフ

記事最終更新日:2020年9月2日
記事公開日:2017年5月21日

今回は損益計算書と製造原価報告書について解説します。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準、直接)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

今回の学習はココ

損益計算書と製造原価報告書について学習します。

損益計算書と製造原価報告書

損益計算書(そんえきけいさんしょ。略してP/L)とは、ある期間の会社の経営成績を表す表であり、売上高などの収益、売上原価や販売費及び一般管理費などの費用、収益と費用の差額である利益から成り立っています。

製造原価報告書(せいぞうげんかほうこくしょ。略してC/R)とは、ある期間の会社の製造活動を表す表であり、どれだけ製品を製造したかを表す製品製造原価の他、材料費、労務費、製造間接費や仕掛品といった内訳を表示します。

工業簿記で記帳するようなメーカーであれば、損益計算書だけでなく、製造原価報告書も作成します。

損益計算書の比較(全部原価計算と直接原価計算)

全部原価計算(ぜんぶげんかけいさん)とは、原価を変動費だけでなく固定費も含めて計算する原価計算をいいます。日商簿記2級で学習する実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算は全部原価計算に該当します。

これに対して直接原価計算(ちょくせつげんかけいさん)とは、原価を変動費のみで計算する原価計算をいいます。

損益計算書の表示科目も異なります。それぞれのP/Lを掲載すると次の通り。

<全部原価計算のP/L>

損益計算書(全部原価計算)

<直接原価計算のP/L>

損益計算書(直接原価計算)

直接原価計算のP/Lは商業簿記では学習しませんので工業簿記の論点になっています。

製造原価報告書の特徴

損益計算書はわが国の様々な会計ルール(金融商品取引法、会社法など)で形式が定められていますが、製造原価報告書は特に様式が定められていません。

ここでは代表的な様式を用いて、C/Rの特徴を説明します。

製造原価報告書

(1)「期首・当期・期末」は期首から期末の決算期(通常1年)の損益計算書・製造原価報告書を作成する際に使用します。月単位の損益計算書・製造原価報告書であれば、「月初・当月・月末」といった言葉を使用します。

(2)製造原価報告書は、「原価(材料費、労務費、経費)の投入→製造→製品の完成」までの原価を集計します。すなわち、仕掛品勘定を表にしたものです。

(3)製造原価報告書で集計した「当期製品製造原価」は、当期に完成した製品を製造するのに要した原価を表します。この数字は損益計算書上の当期製品製造原価に引き継がれます。

(4)原価差異は、日商簿記2級(工業簿記)では全て損益計算書上の売上原価で表示します。同時に製造原価報告書上では、「製造間接費配賦差異」といった原価差異を表す科目で表示されます。

P/LとC/Rの関係

「当期製品製造原価」と「原価差異」に着目して勘定連絡図を見ると、両者の関係について理解が深まります。

まず「当期製品製造原価」ですが、C/Rで計算した「当期製品製造原価」をP/Lの「当期製品製造原価」に同額を引き継いで表示します。

P/LとC/Rの関係

このつながりは「C/R = 仕掛品勘定」「P/L = 製品勘定」であり、当期製品製造原価( = 完成品原価)を仕掛品勘定から製品勘定へ振り替えたことを意味します。

仕掛品勘定と製品勘定のつながりは下記の勘定連絡図を参照。

次に原価差異が発生した場合には、C/R上では「当期製品製造原価」を予定原価(予定配賦額)や標準原価の金額に変換するために、製造間接費配賦差異などの原価差異科目を表示して金額修正します。

勘定連絡図を見れば、仕掛品勘定から製品勘定へは予定配賦額や標準原価で振り替えていることが分かるはずです。

そして、P/L上では、C/Rから引き継いだ予定原価や標準原価が含まれた「当期製品製造原価」の金額を実際原価に変換するために、原価差異を表示して金額を修正します。

この点、より具体的に説明すると次の通りです。

上記「製造原価報告書の特徴」の(2)として、「製造原価報告書は仕掛品勘定を表にしたもの」と説明しました。原価差異を把握する場合、仕掛品勘定では完成品原価( = 当期製品製造原価)は予定原価(予定配賦額)や標準原価で記帳します。従って、C/R上では当期製品製造原価は予定原価(予定配賦額)や標準原価で表示されるのです。

C/Rに対してP/Lでは「真実の原価」を計上する必要があります。そこで売上原価は予定原価や標準原価では実際原価(実際配賦額)で表示します。

しかし、C/Rから引き継いだ「当期製品製造原価」は予定原価(予定配賦額)や標準原価です。従って、売上原価の内訳科目として原価差異を表示し、「予定原価(予定配賦額)や標準原価→実際原価(実際配賦額)」への修正を行うのです。

次の問題と解説

今回解説した損益計算書と製造原価報告書のつながりについて、実際、標準、直接原価計算の具体例(5つの事例)を挙げて詳細に解説します。C/RとP/Lの関係を原価差異や実際原価、予定原価、標準原価と関連付けて理解できるかどうかがポイント。

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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