工業簿記2級 損益計算書と製造原価報告書:原価計算入門

更新日:2018年6月9日
作成日:2017年5月21日

今回は損益計算書と製造原価報告書(製造原価明細書)について解説します。

損益計算書は製造メーカーだけでなく、商社など工業簿記の対象外の会社でも作成するものです。それに対して製造原価報告書(製造原価明細書)はモノ・サービスを作っている会社で作成するものです。
下記に学習上のポイントを参考に記載しました。ご利用ください。

※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

学習のポイント

1.損益計算書 ①形式 ②勘定科目とのつながり
2.製造原価報告書 ①形式 ②勘定科目とのつながり

損益計算書と製造原価報告書

損益計算書はわが国の様々な会計ルール(金融商品取引法、会社法など)で形式が定められていますが、製造原価報告書は特にフォームが定められていません。

ここでは代表的なフォームを用いて、そのつながりを図にしました。いくつかのケースを示しますので参考ください。

共通の決まり事
(1)「期首・当期・期末」は期首から期末の決算期(通常1年)の損益計算書・製造原価報告書を作成する際に使用します。月単位の損益計算書・製造原価報告書であれば、「月初・当月・月末」といった言葉を使用します。

(2)製造原価報告書とは、「原価(材料費、労務費、経費)の投入→製造→製品の完成」までの原価を集計します。すなわち、仕掛品勘定を表にしたものです。

(3)製造原価報告書で集計した「当期製品製造原価」は、当期に完成した製品にかかった原価を表します。この数字は損益計算書上の当期製品製造原価に引き継がれます。

(4)原価差異の扱い(実際原価計算で予定価格、または標準原価計算を採用した場合)

原価差異は、簿記2級では全て損益計算書上の売上原価で処理します。
言い換えると、売上原価は実際の原価で計上しなければなりません。

同時に製造原価報告書上では、実際原価計算であれば、予定価格を使用した原価、標準原価計算であれば、標準原価で計上しなければなりません。

補足(4)について
製造原価報告書上に「~配賦差額」や「価格差異」「数量差異」といった言葉が表示されることがあります。

製造原価報告書上では、予定原価または標準原価で計上します。

そこで、「実際原価を予定原価or標準原価に変換するため」に、「~配賦差額」や「価格差異」「数量差異」といった表示科目が使用されます。

製造原価報告書上で原価差異の処理が行われているわけではありません。
間違えて覚えてしまいやすいので注意しましょう。

この点については下記にてケース別に解説します。

まずは全部原価計算、実際原価計算(個別原価計算、総合原価計算)のケースです。

(その1)全部原価計算(実際原価計算-実際価格を使用)のケース

オーソドックスなケース。予定価格を使用しておらず、標準原価計算制度でもないため、原価差異という言葉は出てきません。

(その2)全部原価計算(実際原価計算-予定価格を使用)のケース

製造間接費の計算で予定価格(予定配賦)を使用したケース。ここでは7万円の不利差異が生じたケースを想定しました。

製造間接費の予定配賦は「原価計算入門その16~製造間接費(予定配賦)」「原価計算入門その17~製造間接費(固定費、変動費と配賦差額)」「原価計算入門その18~製造間接費(原因分析、予算差異と操業度差異)」を参照ください。

「共通の決まり事」に記載した通り、製造原価報告書では、実際額を予定額に調整するために「製造間接費配賦差異」という言葉が登場します。損益計算書上でも同様ですが、今度は予定額を実際額に調整するために「製造間接費配賦差異」を使用しています。

原価差異は損益計算書で処理する」ということはどういうことなのかをイメージして理解しましょう。

次に標準原価計算と直接原価計算のケースを解説します。

(その3)全部原価計算(標準原価計算-シングルプランを採用)のケース

原価差異の把握はシングルプランを採用したケース。ここでは16万円の不利差異が生じたケースを想定しました。

※シングルプランについては「原価計算入門その39~標準原価計算(シングルプランとパーシャルプラン)」を参照ください。

「シングルプランを採用=原価差異は各費目の勘定科目(直接材料費、直接労務費、製造間接費)で把握する」であるため、仕掛品に集計する前に、例えば、直接材料費では価格差異、数量差異が把握されます。

従って、仕掛品勘定を表形式にした製造原価報告書には、原価差異は表示されません。

補足上述の通り、製造原価報告書のフォームは会計ルールに記載がありません。従って、シングルプランを採用していても原価差異を製造原価報告書に記載していたとしても間違っているとはいえません。この点については問題の指示に従ってください。

※標準原価計算の原価差異分析については、「原価計算入門その37~標準原価計算(価格・数量差異、賃率・作業時間差異)」「その38~標準原価計算(予算差異、操業度差異、能率差異)」を参照ください。

原価差異の表示については(ケース2)の製造間接費配賦差異と同じ考え方です。

(その4)全部原価計算(標準原価計算-パーシャルプランを採用)のケース

原価差異の把握はパーシャルプランを採用したケース。(ケース3)と同様に16万円の不利差異が生じたケースを想定しました。

※パーシャルプランについては「原価計算入門その39~標準原価計算(シングルプランとパーシャルプラン)」を参照ください。

「パーシャルプランを採用=原価差異は仕掛品勘定で把握する」であるため、仕掛品勘定で価格差異、数量差異などが把握されます。

製造原価報告書とは仕掛品勘定を表形式にしたもの。従って、製造原価報告書上に「原価差異」が表示され、実際原価→予定原価の調整が行われます。

※標準原価計算の原価差異分析については、「原価計算入門その37~標準原価計算(価格・数量差異、賃率・作業時間差異)」「その38~標準原価計算(予算差異、操業度差異、能率差異)」を参照ください。

原価差異の表示については(ケース2)の製造間接費配賦差異と同じ考え方です。

原価差異は損益計算書で処理する」ということはどういうことなのかをイメージして理解しましょう。

(その5)直接原価計算のケース

最後に直接原価計算のケース。予定価格や標準原価計算を採用するケースもありますが、ここでは実際価格を採用したケースを想定しています。

直接原価計算は主に利益計画を立てる場合に利用することから、製造原価報告書は省略しております。

他のケースと比較して営業利益が15万円少なくなっています。これは期末棚卸資産に含まれる固定費が期首棚卸資産に含まれる固定費よりも15万円だけ金額が大きいため、棚卸資産の固定費調整によって、全部原価計算の営業利益よりも同額だけ少なくなったということです。

※直接原価計算の固定費調整については、「原価計算入門その42~直接原価計算(計算の方法、固定費調整)」を参照ください。

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終わりに

これで原価計算入門の解説が全て終了しました。できるだけ工業簿記2級の試験範囲を網羅したつもりですが、参考書籍や学校を学習のメインとして、あくまでも「一助」としてご利用ください。

このサイトで学習したことがきっかけとなり、「原価計算が分かるようになった」「簿記資格に合格することができた」という方が増えれば幸いです。

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