工業簿記2級 直接原価計算|損益計算書と製品の固定費調整(入門)

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記事最終更新日:2020年8月31日
記事公開日:2017年5月19日

今回は、直接原価計算の損益計算書と製品の固定費調整について解説します。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準、直接)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

今回の学習はココ

製品の固定費調整と損益計算書の作成について解説します。工業簿記(原価計算)の種類でいうと直接原価計算の手続きに該当します。

直接原価計算(ちょくせつげんかけいさん)とは、コストを変動費と固定費に分類して原価を集計して損益計算書を作成する原価計算制度をいいます。

原価や費用設定の際に、短期的にコントロール可能な変動費と、すぐには増減させることができない固定費とを分類することで、より実現可能となる適切な原価・費用の目標を設定できるので、「目標利益→目標売上高→適切な目標製品単価」と合理的な計画を策定できます。

全部原価計算と直接原価計算

全部原価計算(ぜんぶげんかけいさん)とは、変動費だけでなく固定費も原価して手続きする原価計算をいいます。

日商簿記2級(工業簿記)で学習する「実際個別原価計算」「実際総合原価計算」「標準原価計算」は全て全部原価計算に該当します。

全部原価計算と直接原価計算の違いは、原価の着目の違いです。

全部原価計算では、「費目別計算→部門別計算→製品別計算」の流れで原価を集計しますが、着目しているのは「直接材料費」「直接労務費」「製造間接費」といった「費目」でした。

それ以外にも「変動費」「固定費」に着目して、製造間接費の差異分析を行いました。

ただし、差異分析のために変動費と固定費を分類しただけであって、損益計算書には固定費であろうと変動費であろうと売上原価・販売費及び一般管理費といった区分で計上します。計上のタイミングも売上原価であれば、製品の販売に応じて計上します。

それに対して直接原価計算では、原価を変動費と固定費に分類して計算します。損益計算書も変動費と固定費に区分して表示するため、全部原価計算で用いる一般的な損益計算書とは表示科目が異なります。

直接原価計算の損益計算書

直接原価計算の損益計算書は次の通り。

損益計算書(直接原価計算)

外部公表用に直接原価計算を採用することはありませんが、会社内部で利益計画を立てる場合に採用することがあります。CVP分析と直接原価計算とは関係があり、どちらも変動費と固定費に分けて原価を把握します。

全部原価計算の損益計算書は次の通り。商業簿記でも学習する一般的な損益計算書です。

損益計算書(全部原価計算)

両者を比較すると表示科目が大きく異なります。以下、直接原価計算の損益計算書の表示科目を解説します。

変動売上原価

「売上原価」ですが、直接原価計算では変動費のみを原価として扱うため、「変動売上原価」としています。

変動売上原価の内訳として「期首製品棚卸高」「当期製品変動製造原価」「期末製品棚卸高」「原価差異」が表示されます。勘定連絡図上では製品勘定や原価差異勘定から損益計算書へ転記します。

変動製造マージン

全部原価計算の「売上総利益」と同じ位置づけに該当する表示科目です。

変動製造マージン = 売上高 - 変動売上原価

ただし、これまでに解説してきた通り、変動費のみであり、固定費が含まれない点がポイントです。

貢献利益

変動製造マージンから変動販売費を差し引いて計算します。別の言葉にすると、売上高から変動費(売上原価+販売費)を差し引くと貢献利益になります。

CVP分析では貢献利益率を計算して損益分岐点売上高を求めます。

固定費

「売上原価の固定費」と「販売費及び一般管理費の固定費」を表示します。

貢献利益から固定費を差し引くと営業利益が求まります。

直接原価計算P/Lの作り方

外部公表用の損益計算書を作るのが優先されるので、日常的には全部原価計算を採用して工業簿記を行います。

ただし、利益計画の策定には直接原価計算が役立ちますので、年度が始まる直前の時期に全部原価計算のP/Lから直接原価計算のP/Lを作成することがあります(日商簿記2級でも出題されます)。

直接原価計算のP/Lを作成するには、全部原価計算のP/Lに「固定費の調整」を行って作成します。

固定費計上のタイミング

直接原価計算と全部原価計算の違いを一言でいえば、「固定費の計上のタイミング」といえます。

全部原価計算では、固定費を製品原価に含めますが、直接原価計算では製品原価には含めず、全て発生した期の費用として全て計上します。

この違いは、製品に固定費が含まれるかどうかの違いになり、この結果、両者で計算した利益は異なります。

例えば、経費のうち機械設備の減価償却(全て固定費と仮定)を考えると次の通り。

以上の通り、全部原価計算では製品在庫になる時期が存在するので、両者の損益計算書の利益は異なる場合があることが分かります。

製品の固定費調整

全部原価計算の損益計算書から直接原価計算の損益計算書を作成する場合の、製品の固定費の調整方法は次の通り。

上記は次の通り考えます。

計算式を暗記するのではなく、考え方を理解しておき、問題を考えながら解いていけば、段々と速く解けるようになります。

直接原価計算の損益計算書と固定費調整の方法(まとめ)

最後にポイントをまとめて掲載します。

再掲-損益計算書(直接原価計算)

次の問題と解説

直接原価計算の損益計算書を作成する問題を掲載して解説します。P/Lの表示科目や固定費の調整方法を理解して問題を解けるかどうかがポイント。

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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