原価計算入門その42~直接原価計算(計算の方法、固定費調整)

作成日:2017年5月19日 更新日:2018年6月5日

今回は直接原価計算について解説します。

直接原価計算とは、売上高(販売数量)の変動に着目して原価を変動費と固定費に分けることによって、主に利益計画を立てる場合に利用される原価計算をいいます。
下記に学習上のポイントを参考に記載しました。ご利用ください。

※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。

【学習のポイント】

1.直接原価計算
 ①計算方法と記帳 ②固定費調整


直接原価計算(計算の方法、固定費調整)

設例を用いて解説します。

【設例】
衣服メーカーは、ズボンを製造して販売している。
来期の利益計画を立てるため、当期の損益計算書(全部原価計算)から、直接原価計算の損益計算書を作成することにした。

1.前提条件
・製品はズボン1種類。販売価格は1本1,500円
・固定費以外は全て変動費。また、期首、期末に仕掛品在庫は存在しない。

2.損益計算書(全部原価計算)
(単位:円)
売上高         2,700,000
売上原価
 期首製品有高    205,000
 当期製品製造原価 2,232,500
  合計      2,437,500
 期末製品有高    292,500
  差引        2,145,000
売上総利益        555,000
販売費及び一般管理費   375,000
営業利益         180,000

3.固定費データ

項目含まれる固定費(円)
期首製品有高67,000
当期製品製造原価585,200
期末製品有高82,500
販売費及び一般管理費240,000

4.損益計算書(直接原価計算)
(単位:円)
売上高         2,700,000
変動売上原価
 期首製品有高   (    )
 当期製品製造原価 (    )
  合計      (    )
 期末製品有高   (    )
  変動製造マージン (     )
変動販売費      (     )
 貢献利益      (     )
固定費        (     )
営業利益       (     )

(問題)4.損益計算書(直接原価計算)を完成させましょう。

【全部原価計算と直接原価計算】

問題の中で全部原価計算という言葉がありますが、これは今まで解説してきた原価計算をいいます。

全部原価計算と直接原価計算の違いは、原価の着目の違いにあります。

全部原価計算では、「費目別計算→部門別計算→製品別計算」の流れで原価を集計しますが、着目しているのは「直接材料費」「直接労務費」「製造間接費」といった「費目」でした。

それ以外にも「変動費」「固定費」に着目して、「原価計算入門その17~製造間接費(固定費、変動費と配賦差額)」「原価計算入門その38~標準原価計算(予算差異、操業度差異、能率差異)」で解説した差異分析を行いました。

ただし、差異分析のために変動費と固定費を分類しただけであって、損益計算書には固定費であろうと変動費であろうと売上原価・販売費及び一般管理費といった区分で計上します。また計上のタイミングも売上原価であれば、製品の販売に応じて計上します。

それに対して直接原価計算では、変動費と固定費に分類して計算します。
また、損益計算書も変動費と直接費に区分して表示するため、全部原価計算で用いる一般的な損益計算書とは表示科目が異なります。

外部公表用に直接原価計算を採用することはありませんが、会社内部で利益計画を立てる場合に採用することがあります。

なお、前回、「原価計算入門その41~CVP分析(損益分岐図表と損益分岐分析)」で解説しましたが、CVP分析と直接原価計算とは関係があり、どちらも変動費と固定費に分けて原価を把握します。



【固定費の調整】

直接原価計算と全部原価計算の違いを一言でいえば、「固定費の計上のタイミング」と言えます。

全部原価計算では、固定費を製造原価に含めますが、直接原価計算では製造原価には含めず、全て発生した期の費用として全て計上します。

この違いは、在庫に固定費が含まれるかどうかの違いになり、この結果、両者で計算した利益は異なります。

例えば、経費のうち、製造機械の減価償却(全て固定費と仮定)を考えると次の通りになります。

(全部原価計算)
費目別計算→経費に分類・計算→部門別計算→各部門の製造間接費(加工費)に集計→製品別計算→製品原価→在庫→販売→売上原価として計上

(直接原価計算)
変動費・固定費の分類→固定費に分類→その期の固定費として計上

以上から、全部原価計算では在庫になる時期が存在するため、両者の損益計算書の利益は異なる場合があることが分かります。

全部原価計算の損益計算書から直接原価計算の損益計算書を作成する場合がありますが、固定費の調整が必要です。

具体的には、「直接原価計算の営業利益 = 全部原価計算の営業利益 + 期首在庫に含まれる固定費 - 期末在庫に含まれる固定費」となります。

上記は次の通り考えます。

(期首在庫に含まれる固定費)
全部原価計算では当期の売上原価に含める→直接原価計算では当期ではなく、前期の費用に含める→直接原価計算の方が全部原価計算よりも費用は低くなる→営業利益はその分増える→全部原価計算の営業利益にプラスする。

期末在庫に含まれる固定費は逆になります。すなわち全部原価計算の営業利益からマイナスします。



【直接原価計算の損益計算書】

全部原価計算の損益計算書との違いは、①固定費と変動費に分ける ②貢献利益の存在 ③変動製造マージンの存在を挙げることができます。

①と②は上述と前回「原価計算入門その41~CVP分析(損益分岐図表と損益分岐分析)」で解説しました。

変動製造マージン」は、売上高から変動売上原価(固定費を含めない売上原価)を差し引いたものをいいます。

【解答】

4.損益計算書(直接原価計算)
(単位:円)
売上高         2,700,000
変動売上原価
 期首製品有高    138,000
 当期製品製造原価 1,647,300
  合計      1,785,300
 期末製品有高    210,000
  差引        1,575,300
  変動製造マージン  1,124,700
変動販売費        135,000
 貢献利益        989,700
固定費          825,200
営業利益         164,500

【解説】
固定費825,200=当期製品製造原価585,200+販売費及び一般管理費240,000

この計算に期首製品有高67,000円を含めないのは、直接原価計算の固定費は当期の発生費用のみで計算するからです。

また期末製品有高82,500円を含めないのは、この82,500円は当期製品製造原価585,200円に含まれているためです。

検算
全て数字を記入した後に検算をしておきましょう。
直接原価計算の営業利益164,500円=全部原価計算の営業利益180,000+期首製品有高(固定費)67,000円-期末製品有高(固定費)82,500円

【終わりに】

今回は直接原価計算を解説しました。
次回は工場会計について解説します。


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