連結損益計算書とは|作成基準についてポイントを解説

会計資料と虫眼鏡

記事最終更新日:2023年12月9日
記事公開日:2022年6月22日

連結損益計算書は、「親会社株主(又は非支配株主)に帰属する当期純利益」をはじめ、個別P/Lには登場しない科目や論点を理解する必要があります。

本記事では、連結損益計算書の作成基準について、概要や表示方法、科目を含めて会計基準上のポイントを解説します。

連結損益計算書とは|作成基準についてポイントを解説

目次

連結損益計算書とは

連結損益計算書(連結P/L Profit and Loss)とは、親会社が企業集団の会計期間における経営成績を報告するために作成する開示書類をいいます。

連結損益計算書のひな形1

作成基準

「連結財務諸表に関する会計基準」に基づいて、「連結財務諸表規則」など他の基準にも言及しながらポイントを解説します(各論の詳細は「関連記事」を参照のこと)。

1.基本原則

連結損益計算書は、親会社及び子会社の個別損益計算書等における収益、費用等の金額を基礎とし、連結会社相互間の取引高の相殺消去及び未実現損益の消去等の手続きを経て作成します。

2.取引高の相殺消去

連結会社相互間における商品の売買その他の取引に係る項目は、相殺消去します。

3.連結会計で発生する損益の計上

「のれんの償却」「配当金の処理」をはじめとする、連結財務諸表を作成する上で発生、又は消去する損益について調整を行います。

4.当期純損益の振り替え

子会社で計上した当期純損益を非支配株主へ配分します。

5.未実現損益の消去

連結会社相互間の取引によって取得した棚卸資産、固定資産その他の資産に含まれる未実現損益は、全額を消去します。ただし、売手側の帳簿価額のうち、回収不能と認められる部分は、消去しません。

売手側の子会社に非支配株主が存在する場合には、未実現損益は、親会社と非支配株主の持分比率に応じて、それぞれに配分します。

6.税効果会計の適用

未実現損益の消去に伴い、「(個別)財務諸表上の一時差異」及び「連結財務諸表固有の一時差異」という2種類の一時差異が発生するため、税効果会計を適用して法人税等調整額、繰延税金資産、繰延税金負債を計上します。

7.持分法

持分法適用会社(関連会社及び非連結子会社)への投資の成果は、「持分法による投資損益」に集約した金額を連結損益計算書に表示します。

ひな形と表示方法・科目

連結損益計算書は、営業損益計算、経常損益計算及び純損益計算の区分に分類して記載します。

科目の分類は、個別貸借対照表を基礎としますが、企業集団の財政状態について誤解を生じさせない限りにおいて、集約して表示できます。

様式には、連結損益及び包括利益計算書を作成する「1計算書方式」と連結P/Lと連結C/Iを別々に作成する「2計算書方式」があります(「包括利益の表示に関する会計基準」より)。しかし、大きな違いはありません。本記事では、2計算書方式に従って独立に作成した連結損益計算書のひな形を示します。

連結損益計算書のひな形2

後述する販売費及び一般管理費、営業外収益、営業外費用、特別利益及び特別損失は、一定の基準に従って、その性質を示す適当な科目に明瞭に分類して記載します。

その他、上場企業が金融商品取引法に基づいて開示する財務諸表について詳細は「連結財務諸表規則」に定めがあります。
以下、ポイントと個別損益計算書と比較した場合の留意点を解説します。

1.営業損益計算

売上高及び売上原価を記載して売上総利益を表示し、さらに販売費及び一般管理費を記載して営業利益を表示します。

「のれん償却額」「取得関連費用(支配獲得時)」といった科目は販売費及び一般管理費に表示します。

2.経常損益計算

営業損益計算の結果を受け、営業外収益及び営業外費用を記載して経常利益を表示します。

「持分法による投資損益」「取得関連費用(追加取得時)」といった科目は営業外収益又は営業外費用に表示します。

3.純損益計算

経常損益計算の結果を受け、特別利益及び特別損失を記載して税金等調整前当期純利益を表示します。

「負ののれん発生益」は特別利益に表示し、「段階取得による差損益」は特別利益又は特別損失に表示します。

2計算書方式では、当期純利益に「非支配株主に帰属する当期純利益」を加減して「親会社株主に帰属する当期純利益」を表示し、1計算書方式では、当期純利益の直後に「親会社株主に帰属する当期純利益」及び「非支配株主に帰属する当期純利益」を付記します。

会計基準等・参考文献

会計基準等

※2022年6月22日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。

連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)
連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則
包括利益の表示に関する会計基準(企業会計基準第25号)
企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(企業会計基準適用指針第10号)

参考文献

・スタンダードテキスト財務会計論II 応用論点編(第14版) 中央経済社 2021年

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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