貸倒引当金と連結修正仕訳を解説
記事最終更新日:2022年10月5日
記事公開日:2022年6月20日
貸倒引当金は成果連結の論点の1つ。内部取引によって債権が発生した場合に登場します。
本記事では、貸倒引当金の連結修正仕訳について、個別上と連結上の会計処理・基準と併せて解説します。
貸倒引当金
売掛金などの債権が発生し、要件を満たした場合には、「金融商品に関する会計基準」に基づき、貸倒引当金を計上します。
個別財務諸表上の会計処理
個別財務諸表上の会計処理は次の通り。
債権の区分
債権を「一般債権」「貸倒懸念債権」「破産更生債権等」に区分します。
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貸倒見積高の算定
それぞれの債権の区分に応じて貸倒見積高を算定します。
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貸倒引当金の計上
不足額を計上し、又は戻し入れ計上します。
税効果会計の適用
計上した貸倒引当金のうち、一時差異(財務諸表上の一時差異)が発生した場合には税効果会計を適用し、繰延税金資産・負債を計上します。
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連結財務諸表上の会計処理
連結決算手続きにおいて、個別財務諸表上の金額に修正が必要な場合には、連結修正仕訳を作成します。
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貸倒引当金の連結財務諸表上の会計処理は次の通り。
貸倒引当金の消去
連結会社間取引によって発生した債権に対する貸倒引当金は、連結財務諸表上、債権債務の相殺消去に伴い消去します。
財務諸表上の一時差異
個別財務諸表上、当該貸倒引当金が税務上の損金算入の要件を満たさず、「(個別)財務諸表上の一時差異(将来減算一時差異)」が発生した場合には、個別財務諸表において繰延税金資産を計上します。
これに対して、連結財務諸表上では、当該貸倒引当金を消去するため、当該繰延税金資産も消去(繰延税金負債の計上、及び相殺)するよう処理します。
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連結財務諸表固有の一時差異
連結財務諸表上、当該貸倒引当金を消去した場合、連結上と個別上の貸倒引当金(資産の控除科目)に差額が生じます。当該差額は、「連結財務諸表固有の一時差異」として、連結会計上、将来加算一時差異として、繰延税金負債を計上します。
会計基準
※2022年10月5日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)
・税効果会計に係る会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第28号)
・金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)
・金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号)
連結仕訳
個別会計上、貸倒引当金繰入を計上した場合を示します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
消去 | 貸倒引当金 | ××× | 貸倒引当金繰入 | ××× |
法人税等調整額 | ××× | 繰延税金負債 | ××× |
仕訳例
- 子会社に対する売掛金1,000に対して2%の貸倒引当金を計上し、全額税務上の損金として認められた。法定実効税率30%
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 20 | 貸倒引当金繰入 | 20 |
法人税等調整額 | 6 | 繰延税金負債 | 6 |
※連結財務諸表固有の一時差異を計上