償却性資産(建物・備品)と連結仕訳|評価差額の実現と売却・減価償却

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記事最終更新日:2022年10月5日
記事公開日:2022年6月24日

連結会計の難しい論点の1つに建物や備品といった償却性資産の評価差額の実現があります。

そこで本記事では、償却性資産の売却や減価償却と評価差額の実現について会計基準の知識に基づいて解説します。

償却性資産(建物・備品)と連結仕訳|評価差額の実現と売却・減価償却の処理について会計基準の知識に基づき解説

目次

償却性資産に関する知識の確認

事前知識として、評価差額、及び連結会社相互間の固定資産の売買取引の連結会計上の処理の確認です。

評価差額の実現

償却性資産の評価差額は、「減価償却」や「(企業集団)外部への売却」によって実現します。

「実現」とは、償却性資産の簿価修正額として損益を経由せず直接、純資産の部に計上した評価差額が、減価償却や外部への売却によって損益修正されることで、同時に当該修正額だけ評価差額が利益剰余金に振り替わることを意味します。

売却・減価償却と会計処理

次の通り処理します。

外部への売却

個別P/L上は個別B/Sの売却簿価を基に売却損益が計上されますが、連結B/S上の簿価は評価差額による簿価修正額のうち、売却部分を含んでいます。従って、連結手続上では、当該部分のうち未償却額を個別P/L上の損益修正として処理します。

※連結修正仕訳ではなく、評価差額の計上と同様、「個別P/L上の修正仕訳」になります。次の減価償却も同じです。

減価償却

個別P/L上は個別B/Sの簿価を基に減価償却を行いますが、連結B/S上の簿価には評価差額による簿価修正額が含まれまています。従って、連結手続上では、評価差額による簿価修正額に対しても減価償却を行い、個別P/L上の損益修正として処理します。

税効果会計

外部売却、減価償却どちらも損益修正によって一時差異が発生するため、税効果会計を適用して、支配獲得時に計上した評価差額に係る繰延税金資産・負債を取り崩します。

評価差額の実現

償却性資産について、外部売却、償却によって連結B/S上の簿価が減少した場合、資本連結手続上、評価差額から上記の損益修正を控除した後の金額をもって、評価差額を個別B/Sの純資産の部に計上します。

当該控除した金額は、投資と資本の相殺消去において「利益剰余金」に加減して引き継ぎます。評価差額自体は投資と資本の相殺消去で全額消去されます(これまで学習した資本連結と同じ)。

会計基準

※2022年10月5日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。

連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針(会計制度委員会報告第7号)
連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)

子会社財務諸表の修正仕訳

連結手続上、個別(子会社)F/Sの修正仕訳を行います。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
資産評価建物×××評価差額×××
繰延税金負債×××
減価償却の修正減価償却費×××減価償却累計額×××
繰延税金負債×××法人税等調整額×××
外部売却の修正減価償却費×××建物×××
減価償却累計額×××
固定資産売却益×××
評価差額の実現(振り替え)評価差額×××利益剰余金期首残高×××

※建物の評価差額がプラスで、売却益が発生した場合

仕訳例

  • 子会社は建物(簿価100 支配獲得時の時価150)について、前期までに簿価に対して累計で20%の減価償却を行った。法定実効税率40%。
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
建物50評価差額30
繰延税金負債20
利益剰余金期首残高10減価償却累計額10
繰延税金負債4利益剰余金期首残高4
評価差額6利益剰余金期首残高6

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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