持分法適用(関連会社)と商品売買|未実現利益の成果連結仕訳を解説

タブレットと会計資料

記事最終更新日:2022年10月5日
記事公開日:2022年6月20日

持分法の成果連結は、連結子会社とは考え方が異なる点があるため、暗記だけに頼ると仕訳も覚えられません。

本記事では持分法適用会社のうち、関連会社・非連結子会社の成果連結について商品売買取引を解説します。

持分法の成果連結

持分法適用会社に対しても成果連結の会計処理が存在します。

ただし連結子会社と異なる処理を行うことから、持分法会計を理解した上で成果連結に取り組みます。

取引内容

代表的な取引として、投資会社と持分法適用会社との間の商品売買取引が存在します。

商品売買取引(内部取引)

連結子会社の場合と同じくダウンストリームとアップストリームに分けて会計処理を考えます。また、未実現損益を消去する点(ただし、回収不能と認められる部分は消去しない)や税効果会計を適用する点なども同じです。

一方で、持分法では、被投資会社(持分法適用会社)の投資成果を「投資勘定」「持分法による投資損益」の2科目に集約させる点、非支配株主持分は計上しないなどの違いから、連結子会社とは異なる会計処理を行います。

売手側が投資会社の場合の会計処理(ダウンストリーム)

次の通り。

関連会社と非連結子会社

持分法適用会社のうち、関連会社では、原則として未実現損益のうち、「関連会社に対する投資会社の持分相当額を消去」し、非連結子会社では、未実現損益の「全額を消去」します。

未実現損益の消去

売手側(投資会社)に生じた未実現損益の消去額は、投資会社の売上高等の損益科目と、買手側(持分法適用会社)の投資勘定に加減します。当該未実現損益の消去に対して税効果会計を適用します。

ただし、利害関係者の判断を著しく誤らせない場合には、売上高等ではなく「持分法による投資損益」に加減できます。

売手側が持分法適用会社の場合の会計処理(アップストリーム)

次の通り。

関連会社と非連結子会社

関連会社も非連結子会社も、どちらも、未実現損益のうち、「投資会社の持分相当額を消去」します。

未実現損益の消去

売手側(持分法適用会社)に生じた未実現損益の消去額は、「持分法による投資損益」と、買手側(投資会社)の未実現損益が含まれている商品に加減します。当該未実現損益の消去に対して税効果会計を適用します。

ただし、利害関係者の判断を著しく誤らせない場合には、商品ではなく「投資勘定」に加減できます。

勘定科目(連結子会社との違い)

持分法適用会社の場合、勘定科目は「投資勘定」「持分法による投資損益」しか選択できません。

例えば、連結子会社との取引(ダウンストリーム)で、期末商品に未実現利益が含まれる場合、取引高(売上高と売上原価)の相殺消去、及び商品に含まれる未実現利益の消去を行います。これを持分法適用会社で仕訳処理する場合、投資会社側は売上高で処理しますが、持分法適用会社には売上原価や商品といった勘定は存在せず、「投資勘定」「持分法による投資損益」で仕訳処理しなければなりません。

従って、上記「売手側が投資会社の場合の会計処理(ダウンストリーム)」で解説したように会計処理します。税効果会計の適用も同様です(下記「連結仕訳」を参照)。

会計基準

※2022年10月5日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。

持分法に関する会計基準(企業会計基準第16号)
持分法に関する実務指針(会計制度委員会報告第9号)

連結仕訳

持分法適用会社の商品売買(内部取引)の会計処理は次の通り。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
ダウンストリーム売上高×××投資勘定×××
繰延税金資産×××法人税等調整額×××
アップストリーム持分法による投資損益×××商品×××
投資勘定×××持分法による投資損益×××

仕訳例

  • 持分法適用会社(関連会社)であるA社(20%保有)に商品200(未実現利益20)を販売した。法定実効税率25%
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
売上高4 ※A社株式4
繰延税金資産1法人税等調整額1

※未実現利益20 × 持分比率20% = 4

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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