9-3 有形固定資産の売却と仕訳
有形固定資産の売却
有形固定資産を取得した後、使用しない場合には売却することがあります。
売却する場合には、その有形固定資産の帳簿価額より高く売却することもあれば、安く売却することもあります。
有形固定資産の売却と仕訳
有形固定資産を売却した場合には、有形固定資産が減少するため貸方に「建物」「備品」「車両運搬具」「土地」など、その有形固定資産を表す勘定科目を記入するとともに、借方には、「〇〇減価償却累計額」を記入し、さらに現金預金や未収入金など収入を表す勘定科目を記入します。
有形固定資産の帳簿価額よりも売却額が大きい場合には、貸方に「固定資産売却益(収益に属する勘定科目)」を使用して有形固定資産の帳簿価額と収入の差額を記入します。
有形固定資産の帳簿価額よりも売却額が少ない場合には、借方に「固定資産売却損(費用に属する勘定科目)」を使用して有形固定資産の帳簿価額と収入の差額を記入します。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 売却 | 帳簿価額 < 売却額 | 〇〇減価償却累計額 | ××× | 建物、備品など | ××× |
| 現金預金、未収入金など | ××× | 固定資産売却益 | ××× | ||
| 帳簿価額 > 売却額 | 〇〇減価償却累計額 | ××× | 建物、備品など | ××× | |
| 現金預金、未収入金など | ××× | ||||
| 固定資産売却損 | ××× | ||||

売却仕訳のポイント
借方に〇〇減価償却累計額を記入する点を理解できれば売却仕訳を書けるようになります。
有形固定資産の取得(例として建物1千万円)と使用開始後の減価償却による減価償却累計額の計上(例として2百万円)の2つの取引を仕訳すると次の通り。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 取得 | 建物 | 10,000,000 | 現金預金など | 10,000,000 |
| 減価償却 | 減価償却費 | 2,000,000 | 建物減価償却累計額 | 2,000,000 |
この借方の建物1千万円から貸方の建物減価償却累計額2百万円を差し引くと帳簿価額8百万円になります(当期減価償却費はゼロとします)。
<計算例-帳簿価額(建物)>
- 帳簿価額(建物)= 建物取得原価1千万円 - 建物減価償却累計額2百万円 = 8百万円
この建物を売却する場合、「売却=帳簿価額をゼロにする」を意味します。つまり、借方の建物1千万を貸方に記入するとともに、これまで建物をマイナス評価してきた減価償却累計額の残高もゼロにするために、建物減価償却累計額2百万円を借方に記入しなければなりません。
従って、例えば売却益が発生する場合の仕訳は次の通りになります。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 売却 | 建物減価償却累計額 | 2,000,000 | 建物 | 10,000,000 |
| 現金預金など | ××× | 固定資産売却益 | ××× |
仕訳問題
- 1.A社はB社に建物(取得価額8百万円 減価償却累計額3百万円)を6百万円で売却した。代金は来月入金される。
- 2.A社はC社に備品(取得価額120万円 減価償却累計額70万円)を30万円で売却した。代金としてC社振出の小切手を受け取った。
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 建物減価償却累計額 | 3,000,000 | 建物 | 8,000,000 |
| 未収入金 | 6,000,000 | 固定資産売却益 | 1,000,000 | |
| 2 | 備品減価償却累計額 | 700,000 | 備品 | 1,200,000 |
| 現金 | 300,000 | |||
| 固定資産売却損 | 200,000 |
