公募・第三者割当増資とは|概要、連結仕訳

資金調達のビジネス交渉

記事最終更新日:2022年10月5日
記事公開日:2022年6月10日

公募や第三者割当増資といった資金調達手段は、会社法に手続きの定めがあるとともに、会計上も資本連結の重要な手続き(時価発行増資等)として定められています。

ここでは、公募・第三者割当増資の資本連結上の手続き(概要、会計基準、表示、仕訳)について解説します。

公募・第三者割当増資とは|手続き(概要、関連用語、会計基準、表示)と連結上の仕訳を解説

目次

公募・第三者割当増資とは

公募とは、不特定多数の者に募集株式の割当てを受ける権利を与えることをいいます。

第三者割当増資とは、特定の第三者に募集株式の割当てを受ける権利を与えることをいいます。

連結会計上では、「時価発行増資等」として手続きを定めています。

これに対して、既存の株主に対して、その有する株式の数に応じて(比例して)、募集株式の割当てを受ける権利を与えることを「株主割当」といいます。

取引内容

例えば、80%を取得している子会社が、「公募」によって新株を発行した結果、非支配株主の持分比率が5%増加して25%に、親会社の持分比率が5%減少して75%になる、といった場合が該当します。

持分の変動と非支配株主持分

既存株主の持分割合に比例して株式を割当てる「株主割当」と異なり、公募・第三者割当増資の場合には、親会社の持分比率が変動します。増加、減少、両方のケースが存在します。

従って、親会社の持分比率の増減に応じて、非支配株主の持分も同じ割合だけ反対の方向に変動します。

会計処理

子会社の時価発行増資等に伴い、親会社の引受割合が増資前の持分比率と異なるために、増資後の持分比率に変動が生ずる場合、一旦、従来の持ち分比率で株式を引き受け、その後に「追加取得」又は「一部売却」を行ったものとみなして処理します。

子会社の時価発行増資等に伴い、親会社の払込額と親会社の持分の増減額との間に差額が生じた場合で、かつ、親会社と子会社の支配関係が継続している場合、当該差額は「資本剰余金」として計上します。

会計基準

※2022年10月5日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。

連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針(日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第7号)
連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)

連結仕訳

例として、親会社の持分比率が増加した場合を示します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
時価発行増資等資本金×××子会社株式×××
資本剰余金×××非支配株主持分×××
非支配株主持分×××子会社株式×××
資本剰余金×××

※上2行:従来の持分比率で株式を引き受けたものとみなした場合の仕訳(投資と資本の相殺消去と非支配株主持分への振り替え)
※下2行:持分比率の増加分だけ、親会社が追加取得したとみなした場合の仕訳(子会社株式と非支配株主持分の差額を資本剰余金として処理)

表示

時価発行増資等に伴い、増減した「資本剰余金(上記仕訳の4行目)」は、連結株主資本等変動計算書上、「連結子会社の増資による持分の増減」などの変動事由の項目の名称を付して、「当期変動額」として表示します。

仕訳例

  • 子会社(80%保有)が第三者割当増資(資本金は100から120、資本準備金はゼロから20に増加)を行い、全て親会社が引き受けた。この結果、親会社の持ち分比率は5%増加した。
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
資本金20子会社株式32
資本剰余金20非支配株主持分8
非支配株主持分7 ※子会社株式8
資本剰余金1

※非支配株主持分 = 増資後純資産140(120+20)× 持分比率の変動 5% = 7

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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