為替換算調整勘定とは|連結仕訳と会計基準上のポイント
記事最終更新日:2023年9月11日
記事公開日:2022年6月25日
在外子会社を学習する上で最も重要な論点が「為替換算調整勘定」です。
本記事では、為替換算調整勘定とは何か、連結会計上の仕訳処理や会計基準上のポイントを含めて解説します。
為替換算調整勘定とは
為替換算調整勘定とは、在外子会社の財務諸表項目の換算の結果、貸借対照表で発生する貸借差額をいいます。
発生の仕組み
在外子会社の財務諸表項目を換算した結果、次の通り、資産、負債及び純資産とで、換算に使用した為替相場(レート)が異なる結果、貸借差額が発生します。当該差額が為替換算調整勘定です。
会計処理
連結手続き上のポイントは次の通り。
非支配株主への配分
子会社資本(純資産)に該当することから、非支配株主へ配分します(為替換算調整勘定から非支配株主持分への振替)。従って、純資産の部に表示する為替換算調整勘定の金額は、親会社持分部分のみとなります。
税効果会計
為替換算調整勘定は、その他有価証券評価差額金と同じく「一時差異」に該当することから税効果会計を適用して繰延税金資産・負債を計上します(ただし、子会社株式の売却を計画している場合のみ)。
のれんに係る為替換算調整勘定
資本連結で発生する「のれん」も資産であることから、為替換算調整勘定が発生します(のれん発生時にHRレート、のれん償却はARレート、資産は毎期CRレートで換算するため)。
しかし、会計基準では、のれん償却と同様、のれんに係る為替換算調整勘定も親会社が全て負担するとしています。従って、上記に解説した通り、為替換算調整勘定は非支配株主持分へ配分しますが、のれんに係る部分だけは非支配株主持分には配分しません。
会計基準
※2023年9月11日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・外貨建取引等会計処理基準(企業会計審議会)
・外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書(企業会計審議会)
・外貨建取引等の会計処理に関する実務指針(会計制度委員会報告第4号)
連結仕訳
「為替換算調整勘定」勘定(純資産に属する勘定科目)で仕訳します。
<子会社F/Sの換算時>
貸借対照表(円建て)の純資産の部に為替換算調整勘定を計上
<連結修正仕訳>
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
非支配株主への配分 | 為替換算調整勘定 | ××× | 非支配株主持分 | ××× |
のれん部分の計上 | のれん | ××× | 為替換算調整勘定 | ××× |
※どちらの為替換算調整勘定も貸方残高の場合
表示
為替換算調整勘定は、貸借対照表(子会社の円換算後)の「純資産の部(評価・換算差額等の区分)」及び連結貸借対照表の「純資産の部(その他の包括利益累計額の区分)」に表示します。
仕訳例
- 1.在外子会社(80%取得)の財務諸表項目を換算した結果、換算差額100(貸方残高)が発生した。連結修正仕訳として非支配株主へ配分する。
- 2.在外子会社の支配獲得時に発生したのれんから、為替換算調整勘定5(貸方残高)が発生した。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
1 | 為替換算調整勘定 | 20 | 非支配株主持分 | 20 |
2 | のれん | 5 | 為替換算調整勘定 | 5 |