操業度とは(原価計算入門)|概要と種類
更新日:2020年12月26日
作成日:2020年6月7日
今回は費目別計算や部門別計算のうち、操業度について概要や種類、役割や配賦基準との関係などについて解説します。
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※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。
種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)
クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。
今回の学習はココ
操業度について学習します。工業簿記の計算段階でいうと、主に第2段階の部門別計算と第3段階の製品別計算とに関係します。
<今回の学習ポイント>
- ・操業度とは?具体例や役割
- ・操業度の種類
- ・変動費と固定費
- ・配賦基準や標準原価との関係
部門別計算(ぶもんべつけいさん)とは、費目別計算によって集計した費目(直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費)を製品に集計する前に部門別に分類して計算・集計するための手続きをいいます。
製造部門と補助部門を設定し、直接配賦法や相互配賦法といった計算方法を使って、最終的には各製造部門に原価を集計します。
製品別計算(せいひんべつけいさん)とは、製品の種類毎に製品一単位の原価を計算する手続きをいいます。
例えば、ジーンズ、チノパンといった製品別に原価を集計し、それぞれの製品の製造実態に合わせて個別原価計算や各種の総合原価計算(単純、等級、組別、工程別)を適用してジーンズ1本、チノパン1本当たりの原価を計算します。
操業度とは
操業度(そうぎょうど)とは、年や月といった一定の期間に製品を製造するための生産設備の利用度をいいます。
引用元:原価計算基準
「ここに操業度とは、生産設備を一定とした場合におけるその利用度をいう。」
操業度の役割
原価計算で操業度を使用する場面は次の通り。
<操業度の役割>
- (1)間接費を変動費と固定費へ分類
- (2)予定配賦率の計算
- (3)標準原価の設定
- (4)原価差異分析
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操業度の具体例
代表的な操業度の具体例は生産量や直接作業時間、機械稼働時間です。
例えば、製品の製造が人中心であれば直接作業時間、オートメーション化していて機械が中心であれば機械稼働時間を操業度として設定にします。
引用元:原価計算基準
「操業度は、原則として直接作業時間、機械運転時間、生産数量等間接費の発生と関連ある適当な物量基準によって、これを表示する。」
操業度の種類
次の例を考えます。
<問題例-操業度の種類>
- ・ズボンメーカーのA社は労働集約的な製造を行っていることから、直接作業時間を操業度として設定する。
- ・技術的に達成可能な最大操業度:80,000時間
- ・当年度の予定操業度:50,000時間
- ・最近5年間の操業度の平均に将来趨勢を加味した正常操業度:55,000時間
- (問題)(1)技術的に達成可能な最大操業度 (2)予定操業度 (3)正常操業度を求めましょう。
<解答-操業度の種類>
- (1)技術的に達成可能な最大操業度 = 80,000時間
- (2)予定操業度 = 50,000時間
- (3)正常操業度 = 55,000時間
技術的に達成可能な最大操業度とは、技術的に可能な範囲でフル稼働した場合の操業度をいいます。
予定操業度(よていそうぎょうど)とは、1年間など短期的な一定の期間に予想される操業度をいいます。技術的に達成可能な最大操業度とは異なり、その期間における生産や販売事情を考慮して定めます。
正常操業度(せいじょうそうぎょうど)とは、比較的長期間の操業度の平均に将来の趨勢を加味して定めた操業度をいいます。
基準操業度
基準操業度(きじゅんそうぎょうど)とは、シュラッター図を用いた公式法によって変動費と固定費を分類する場合などにおいて、一定の基準となる操業度をいいます。
通常は、予定操業度や正常操業度を基準操業度として設定します。
<例-基準操業度の設定>
- 当社は標準原価計算制度を採用しており、製造間接費の配賦として年間予定機械稼働時間50,000時間(予定操業度)を基準操業度として設定している。
変動費と固定費
変動費と固定費、そして次に解説する準変動費と準固定費は操業度と関係が深い原価計算上の用語です。
変動費(へんどうひ)とは、ズボンメーカーにおける布やボタンなどの直接材料費のように、操業度の増減に応じて変動する原価要素をいいます。
固定費(こていひ)とは、工場の減価償却費のように操業度の増減に関係なく変動しない原価要素をいいます。
引用元:原価計算基準
「固定費とは、操業度の増減にかかわらず変化しない原価要素をいい、変動費とは、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価要素をいう。」
準変動費と準固定費
準変動費(じゅんへんどうひ)とは、水道光熱費など、操業度がゼロでも発生し、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価要素をいいます。
準固定費(じゅんこていひ)とは、操業度のある範囲では固定的に発生し、範囲を超えると一気に増減するような原価要素をいいます。
引用元:原価計算基準
「ある範囲内の操業度の変化では固定的であり、これをこえると急増し、再び固定化する原価要素たとえば監督者給料等、又は操業度が零の場合にも一定額が発生し、同時に操業度の増加に応じて比例的に増加する原価要素たとえば電力料等は、これを準固定費又は準変動費となづける。」
配賦基準との関係
配賦基準(はいふきじゅん)とは、製造間接費を部門や製品、製造指図書の各原価に配分する際の基準をいいます。
操業度として設定するデータは生産量や直接作業時間、機械稼働時間などが存在し、各製品や製造指図書に配賦するための配賦基準となります。
その際に設定する操業度には技術的に達成可能な最大操業度は設定しません。
引用元:原価計算基準
「予定配賦率の計算の基礎となる予定操業度は、原則として、一年又は一会計期間において予期される操業度であり、それは、技術的に達成可能な最大操業度ではなく、この期間における生産ならびに販売事情を考慮して定めた操業度である。」
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標準原価との関係
標準原価の設定に際して、操業度の設定は重要な考慮事項の1つです。
原価計算基準では標準原価計算において用いられる標準原価は、現実的標準原価又は正常原価であるとしています。
引用元:原価計算基準
「標準原価計算制度において用いられる標準原価は,現実的標準原価又は正常原価である。」
現実的標準原価では予定操業度、正常原価では正常操業度を設定して定めます。
引用元:原価計算基準
「現実的標準原価とは、良好な能率のもとにおいて、その達成が期待されうる標準原価をいい、通常生ずると認められる程度の減損、仕損、遊休時間等の余裕率を含む原価であり、かつ、比較的短期における予定操業度および予定価格を前提として決定され、これら諸条件の変化に伴い、しばしば改訂される標準原価である。」
「正常原価とは、経営における異常な状態を排除し、経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し、これに将来にすう勢を加味した正常能率、正常操業度および正常価格に基づいて決定される原価をいう。」
次の問題と解説
製造間接費の予定配賦について解説します。問題文から配賦基準や操業度といった用語を読み取って正確に計算できるかどうかがポイント
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