工業簿記2級 直接配賦法とは|計算方法と仕訳|問題と解説(原価計算入門)
更新日:2020年6月24日
作成日:2016年11月12日
引き続き、部門別計算について解説します。
関連記事
- 部門別計算とは(概要と手続き、仕訳)
- 製造部門と補助部門とは(概要と手続き)
- 部門個別費と部門共通費とは(集計方法、仕訳)
- 直接配賦法とは(計算方法と仕訳) ←今回の解説
- 相互配賦法とは(計算方法と仕訳)
- 補助部門費配賦差異とは(計算方法と仕訳)
※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。
種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)
クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。
今回の学習はココ
製造間接費の部門別計算のうち、直接配賦法について学習します。工業簿記の計算段階でいうと、主に第2段階の部門別計算に関係します。
<今回の学習ポイント>
- ・直接配賦法とは
- ・部門別計算上の役割
- ・計算方法
- ・仕訳
- ・問題例(ズボンメーカーを例に)
部門別計算(ぶもんべつけいさん)とは、費目別計算によって集計した費目(直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費)を製品に集計する前に部門別に分類して計算・集計するための手続きをいいます。
製造部門と補助部門を設定し、直接配賦法や相互配賦法といった計算方法を使って、最終的には各製造部門に原価を集計します。
直接配賦法とは
直接配賦法(ちょくせつはいふほう)とは、部門別計算のうち、補助部門から製造部門への配賦計算方法の1つであり、補助部門には配賦せず製造部門のみに配賦する方法をいいます。
引用元:原価計算基準
「(省略)次いで補助部門費は、直接配賦法、階梯式配賦法、相互配賦等にしたがい、適当な配賦基準によって、これを各製造部門に配賦し、製造部門費を計算する。」
部門別計算において、費目別計算によって分類された製造間接費は部門個別費と部門共通費に分類され、その後、製造部門と補助部門に賦課または配賦されます。
次に行うのは補助部門の製造部門への配賦です。
この配賦方法として、日商簿記2級(工業簿記)では直接配賦法と相互配賦法を学習します。
配賦計算の名称 | 説明 |
---|---|
直接配賦法 | 補助部門から補助部門への配賦は行わず、製造部門のみに配賦する方法 |
相互配賦法 | 補助部門も含めて自部門以外の部門に配賦を行い(一次配賦)、次の二次配賦では製造部門のみに配賦する方法 |
※日商簿記2級の過去問(直近30回以上)を分析すると、直接配賦法のみ出題されています(ただし、相互配賦法も出題範囲であるため、相互配賦法が絶対に出題されない、とはいえません)。
部門別計算上の役割
部門別計算の役割は次の2つ。
<部門別計算の役割>
- (1)製造間接費を部門別に管理するため
- (2)製造間接費を正確に計算するため
(1)は、製造間接費の予定額と実際発生額を比較した際に部門別に集計しておけば、原因を特定しやすく対策も講じやすいため、管理しやすいということです。
(2)は、「適切に原価を配分できる部門毎の配賦基準」や「補助部門と製造部門」、「集計のための計算方法」を設定して部門別計算を行えば、部門別計算を行わずに単一の配賦基準のみで各製品に配賦した場合よりも、より正確に製造の実態を原価配分に反映できるため、正確な原価計算につながる、ということです。
より具体的には、製造間接費を部門個別費と部門共通費に分類して、それぞれ製造部門と補助部門の各部門へ集計し、その後、直接配賦法や相互配賦法といった計算方法を使って、最終的には補助部門の費用を全て製造部門へ配賦する手続きをいいます。
引用元:原価計算基準
「原価部門とは、原価の発生を機能別、責任区分別に管理するとともに、製品原価の計算を正確にするために、原価要素を分類集計する計算組織上の区分をいい、これを諸製造部門と諸補助部門とに分ける。」
以上の役割を部門別計算が果たすために設定される計算方法の1つが直接配賦法です。
より具体的には、直接配賦法によれば、各補助部門に設定した適切な配賦基準を使って正確な配賦計算が可能です。また、製造間接費を製造部門に正確に集計すれば、製造部門の予算実績管理をはじめ部門別のコスト管理に役立ちます。
直接配賦法の計算方法
直接配賦法を計算する前の準備として、補助部門と製造部門に部門個別費の賦課と部門共通費の配賦を終わらせておきます。
準備ができたら、すべての補助部門の部門費の合計と配賦基準を確認します。
計算方法-補助部門から製造部門への配賦(直接配賦法)
- ・部門費配賦額 = 補助部門の部門費 ÷ 配賦基準(合計) × 製造部門に対する配賦基準
次に補助部門の部門費を1件1件、配賦計算によって製造部門に配分していきます。全て配賦し終わったらば直接配賦法は完了です。
部門別計算はその後、製造部門の部門費を各製品(製造指図書)へ配賦する手続きや製造間接費の原価差異分析へ進みます。
仕訳
直接配賦法も相互配賦法も仕訳は同じです。次の通り(「製造部門:切抜部」「補助部門:運搬部」とします)。
<仕訳例-補助部門の製造部門への配賦(直接配賦法)>
- (借方)製造間接費-切抜部 ×× (貸方)製造間接費-運搬部 ××
補助部門である運搬部の製造間接費を、切抜部という製造部門へ配賦した場合の仕訳。「製造間接費-〇〇部門」といった勘定科目で出題されることが多いです。
補助部門から製造部門への費用の振り替え仕訳のため、借方に「製造間接費-〇〇部門(製造部門)」勘定を記入し、貸方に「製造間接費-〇〇部門(補助部門)」勘定を記入します。
※ズボンメーカーを例にした部門を設定して解説しています。各部門の詳細な説明は下記の記事を参照。
問題例(ズボンメーカーを例に)
直接配賦法の計算に焦点を当てた問題。
※部門別計算の他の手続きの問題はそれぞれの記事に掲載しています。
<問題例-部門別計算(直接配賦法)>
- 当社はズボンを製造しており、製造間接費の集計過程において部門別計算を採用している。
- ・製造部門:切抜部、裁縫部
- ・補助部門:清掃部、工場事務部
- ・部門費(部門個別費+部門共通費)の情報は下記の表を参照。
- (問題)直接配賦法によって補助部門を製造部門に配賦して製造部門の部門費を求め、仕訳しましょう。
- ※小数点以下の端数は小数点第一位で四捨五入すること。
補助部門 | 配賦基準 |
---|---|
清掃部 | 工場占有面積(㎡) |
工場事務部 | 従業員数(人) |
項目 | 合計 | 切抜部 | 裁縫部 | 清掃部 | 工場事務部 |
---|---|---|---|---|---|
部門費 | 1,260,000 | 465,000 | 505,000 | 97,500 | 192,500 |
工場占有面積(㎡) | 50 | 15 | 20 | 5 | 10 |
従業員数(人) | 12 | 4 | 5 | 1 | 2 |
<解答-部門別計算(直接配賦法)>
- ・清掃部は工場専有面積、工場事務部は従業員数を配賦基準として製造部門へ配賦します。
- ・計算式の配賦基準(合計)に注意。補助部門に対する配賦基準は含めません。例えば、清掃部門の配賦基準(合計)は工場専有面積の情報より、「切抜部15 + 裁縫部20 = 35㎡」です。50㎡ではありません。
- ・計算式は次の通り(清掃部を例にします)。
- ・切抜部への配賦額:清掃部門費97,500円 ÷ 配賦基準(合計)35㎡ × 切抜部に対する配賦基準15㎡ = 41,785.714...→41,786円(四捨五入)
- ・裁縫部への配賦額:清掃部門費97,500円 ÷ 配賦基準(合計)35㎡ × 裁縫部に対する配賦基準20㎡ = 55,714.285...→55,714円(四捨五入)
- ※本試験(日商簿記2級の工業簿記)では端数は生じずに、ちゃんと割り切れる問題が出題されます。
- ※過去問を見れば分かりますが、下記の表のうち、「清掃部より」「工場事務部より」といった文言や「-」の記入など、表の書き方は出題されないため覚える必要はありません。
- ↓解答は下記の通り。
項目 | 合計 | 切抜部 | 裁縫部 | 清掃部 | 工場事務部 |
---|---|---|---|---|---|
部門費 | 1,260,000 | 465,000 | 505,000 | 97,500 | 192,500 |
清掃部より | - | 41,786 | 55,714 | △97,500 | - |
工場事務部より | - | 85,556 | 106,944 | - | △192,500 |
製造部門費(解答) | 1,260,000 | 592,342 | 667,658 | - | - |
仕訳は次の通り(補助部門別に分けた場合の仕訳)。「補助部門の部門費を製造部門の部門費へ振り替える」です。
<解答-仕訳>
- (借方)製造間接費-切抜部 41,786 (貸方)製造間接費-清掃部 97,500
- (借方)製造間接費-裁縫部 55,714
- (借方)製造間接費-切抜部 85,556 (貸方)製造間接費-工場事務部 192,500
- (借方)製造間接費-裁縫部 106,944
次の問題と解説
部門別計算のうち、相互配賦法について解説します(出題可能性は低いですが、2級の出題範囲です)。配賦基準を使って部門共通費を部門に集計できるようにすることがポイント。
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