工業簿記2級 個別原価計算とは(入門)|用語や手続き、仕訳を解説

更新日:2020年8月10日
作成日:2016年11月14日

前回に引き続き、製品別計算について。今回は個別原価計算の概要を解説。

※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

今回の学習はココ

個別原価計算の概要について学習します。工業簿記の計算段階でいうと、第3段階の製品別計算に該当します。

製品別計算(せいひんべつけいさん)とは、製品の種類毎に製品一単位の原価を計算する手続きをいいます。

例えば、ジーンズ、チノパンといった製品別に原価を集計し、それぞれの製品の製造実態に合わせて個別原価計算や各種の総合原価計算(単純、等級、組別、工程別)を適用してジーンズ1本、チノパン1本当たりの原価を計算します。

個別原価計算とは

個別原価計算(こべつげんかけいさん)とは、製品を大量生産ではなく、1注文毎に個別に受注生産する場合に適用する製品別計算をいいます。

項目個別原価計算
説明製品を個別的に生産する生産形態に適用(いわゆる受注生産。衣服メーカーではオーダーメイド)
具体例海外ではシャネルやアルマーニ、
国内ではオンワードなど

個別原価計算に対して、製品を大量生産する場合に適用する製品別計算を総合原価計算(そうごうげんかけいさん)といいます。

個別原価計算の役割

個別原価計算の役割は、「正確な製品単価の計算」です。

「(第1次)費目別計算→(第2次)部門別計算」といった原価計算手続きで行ってきた「実態の製造活動を原価に反映させる」という目的を引き継いで(第3次)製品別計算である個別原価計算で完成させます。

製造指図書とは

製造指図書(せいぞうさしずしょ)とは、個別原価計算において顧客からの注文内容を原価活動用にした書類です。

各製造指図書には「#101、#102」といったそれぞれ異なるNoが付され、このNo毎に原価を集計します。

製造指図書のうち、後述する仕損費や減損費を集計させるために発行したものを特に補修指図書(ほしゅうさしずしょ)といいます。

原価計算表とは

原価計算表(げんかけいさんひょう)とは、製造指図書別に原価を集計するための表であり、例えば次のような表をいいます。

項目#101#102#103
直接材料費
直接労務費
製造間接費
(計)製造原価
備考

備考欄には完成日や月末時の状態(完成・仕掛)などの情報を記入します。

仕損費とは

仕損(しそん)とは、製品を製造する過程で発生した失敗をいいます。

仕損に係る原価を仕損費(しそんひ/しそんじひ)といいます。

個別原価計算の勘定科目

日商簿記2級(工業簿記)で出題される勘定科目の例は次の通り。

・製造間接費 ・仕掛品 ・仕掛品-#〇〇〇 ・製品 ・材料 ・賃金 ・消費価格差異 ・賃率差異 ・製造間接費 ・予算差異 ・操業度差異 ・原価差異

個別原価計算の原価計算手続き

個別原価計算の原価計算手続きは次の通り。

以下、それぞれの手続きについて計算方法や仕訳も含めて説明します。

(1)受注と製造指図書の発行

お客から受けた注文に基づいて受注処理部門が製造指図書に情報を記入して発行します。

発行した製造指図書は受注処理部門から工場の製造ライン(工程)に渡され、製品の製造がスタートします。

(2)費目別計算と部門別計算

製品別計算を行う前に、第1次と第2次の原価計算手続きである費目別計算と部門別計算を行います。

費目別計算の段階で直接材料費と直接労務費(外注加工賃があれば直接経費も)の材料消費単価や平均賃率を計算します。

製造間接費はさらに部門別計算を行った結果、製造部門別に配賦率を計算します。

(3)仕損費の対応と補修指図書の発行

仕損が発生した場合には、仕損費の処理を行います(日商簿記2級では、個別原価計算の減損は試験範囲外)。

日商簿記2級(工業簿記)では、補修指図書を発行して仕損費を集計します。

(4)原価計算表の作成と仕訳

月の原価活動の結果を製造指図書毎に原価集計し、原価計算表に記入します。

項目#101#102#103
直接材料費
直接労務費
製造間接費
(計)製造原価
備考

直接材料費や直接労務費(あれば直接経費も)は「材料消費単価×消費量」「平均賃率×作業時間」で計算し、製造間接費は「配賦率×配賦基準」で計算します。

原価計算表によって当月の原価活動が把握できたので、この段階で各費目を製造に投入した仕訳をきるとすれば、直接材料費は材料勘定、直接労務費は賃金勘定、製造間接費は製造間接費勘定から仕掛品勘定へそれぞれ振り替える仕訳をきります。

製造指図書毎に製造投入原価を把握するため、製造指図書毎の仕掛品勘定(例えば仕掛品-#〇〇)を設定している場合は次の通り(テキストや問題集の解説で勘定連絡図上の勘定科目として設定している場合があります)。

その他、材料費や賃金ではなく、直接材料費勘定や直接労務費勘定を設定している場合や、部門毎の製造間接費勘定(例えば製造間接費-〇〇部門)といった仕訳パターンも存在します(下記の関連記事にて解説)。

※日商簿記2級の工業簿記では、商業簿記と異なり勘定科目の範囲は定まっていません。上記以外の勘定科目も出題される可能性があります。

(5)完成品原価と仕掛品原価の計算と仕訳

原価計算表に基づいて、完成した製造指図書を合計して完成品原価を求め、未完成の製造指図書は仕掛品原価とします。

完成品原価は製品になるので、仕掛品勘定から製品勘定へ振り替える仕訳をきります。月末仕掛品はこの段階の仕訳はありません

(6)材料費・労務費の差異分析(消費価格差異・賃率差異)と仕訳

直接材料費を予定消費価格、直接労務費を予定賃率で計算した場合には、それぞれ消費価格差異、賃率差異が発生します。

この場合には、それぞれ材料勘定、賃金勘定から消費価格差異勘定、賃率差異勘定へ振り替える仕訳をきります。

詳細は下記の記事にて解説。

(7)製造間接費の差異分析(予算差異と操業度差異)と仕訳

製造間接費を予定配賦する場合には、実際原価との差額について製造間接費勘定から原価差異勘定へ振り替えます。

シュラッター図を描いて原価差異から予算差異と操業度差異を計算する場合もあります。

詳細は下記の記事にて解説。

次の問題と解説

引き続き個別原価計算の解説。ズボンメーカーを例に原価計算表を完成させる問題を掲載して解説します。問題文から各費目の単価や配賦率といった情報を読み取って正確に計算できるかどうかがポイント。

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