工業簿記2級 個別原価計算(概要:製造指図書、原価計算表)
作成日:2016年11月14日 更新日:2018年5月24日
前回に引き続き、製品別計算について解説します。
製品別計算とは、原価要素を一定の製品単位に集計し,単位製品の製造原価を算定する手続をいい,原価計算における第3次の計算段階になります。
(第1次)費目別計算→(第2次)部門別計算→(第3次)製品別計算
このように段階的に製造原価を分類集計するのは、製品原価の正確な計算および原価管理を行うためです。
下記に学習上のポイントを参考に記載しました。ご利用ください。
※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。
種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)
クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。
学習のポイント
0.製品別計算の分類
1.個別原価計算
①概要と流れ
②仕損費の計算
2.単純総合原価計算
3.等級別総合原価計算
4.組別総合原価計算
5.工程別総合原価計算
製品別計算(個別原価計算)
今回は個別原価計算を解説します。
前回解説した通り、個別原価計算が使用されるのは1個1個の製品が異なる受注生産の場合です。
製品別計算のため、費目別計算と部門別計算が完了した後の話です。
従って、これまで解説してきたこととはつながっています。
まずは個別原価計算が採用された場合の手続きについて解説します。
個別原価計算の流れ
1.注文と準備段階
お客より注文(衣服メーカー側からみると受注=「注文を受ける」の意味)があった都度、その注文毎に製造指図書を発行し、この製造指図書に従って生産し製造指図書毎に原価を集計します。
5つの注文があれば、5つの製造指図書が発行され、原価も5つに分けて集計します。
製造指図書は、問題では例えば#101,102,103・・・、といったように製造指図書Noが付されます。
原価計算表を用いて原価を集計します。
原価集計表とは例えば次のような表のことで、原価を集計するのに使用します。
項目 | #101 | #102 | #103 |
---|---|---|---|
直接材料費 | |||
直接労務費 | |||
製造間接費 | |||
製造原価 | |||
備考 |
2.費目別計算→部門別計算
これまでに解説してきた通り。
費目別計算では、費用を材料費、労務費、経費に分類し、それぞれを直接費、間接費に分けます。
間接費(間接材料費、間接労務費、間接経費)は製造間接費として、部門別計算のために各部門に配分され、最終的には各製造部門に集計されます。
3.製品別計算
・直接費は製造指図書に賦課(ふか)します。
・製造間接費は、原則として予定配賦率を用いて各製造指図書に配賦します。
製造間接費の回で解説した通り、シュラッター図を用いて配賦差額の原因分析を行い、予算差異や操業度差異を計算する、といった手続きもこの段階で行われます。
4.製造の過程で仕損(しそんじ)が発生した場合には、適切な方法で原価を集計して処理します(後の回で解説します。今回は解説を割愛します)。
5.集計した原価はいったん、仕掛品として処理され、完成したものは製品に振り替える。また売上計上された製品は製品から売上原価に振り替える仕訳を行う。
6.原価計算を通じて集計した原価の結果を損益計算書に反映させる。
簡単ですが、個別原価計算の流れは以上です。
イメージできましたか?
終わりに
今回は個別原価計算の概要と流れを解説しました。
次回は個別原価計算を設例を用いて解説します。
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目次
- 〇学習方法 工業簿記2級を学習する3つのコツ(苦手を克服)
- 〇概要 1.はじめに(必ずお読み下さい) 2.概要(原価計算の目的、定義、制度) 3.まとめ(1)実際原価計算 4.まとめ(2)標準原価計算 5.まとめ(3)直接原価計算、その他、損益計算書
- 〇費目別計算 6.材料費(分類と材料副費) 7.材料費(消費と月末の計算) 8.材料費(費目別計算、まとめ) 9.労務費(分類と直接費、間接費) 10.労務費(消費時の計算と仕訳) 11.労務費(まとめ) 12.経費(分類・計算・仕訳) 13.経費(まとめ) 14.予定単価(費目別計算) 15.予定単価(まとめ)
- 〇製造間接費と部門費計算 16.製造間接費(予定配賦) 17.製造間接費(固定費、変動費と配賦差額) 18.製造間接費(原因分析、予算差異と操業度差異) 19.製造間接費(まとめ) 20.部門別計算(製造・補助部門、部門個別費・共通費) 21.部門別計算(直接配賦法と相互配賦法) 22.部門別計算(続・直接配賦法と相互配賦法) 23.部門別計算(まとめ)
- 〇製品別計算(実際原価計算) 24.製品別計算(分類) 25.個別原価計算(概要:製造指図書、原価計算表) 26.個別原価計算(製品別計算、原価計算表) 27.個別原価計算(製品別計算、仕損) 28.個別原価計算(まとめ) 29.単純総合原価計算(概要:進捗度、加工費) 30.単純総合原価計算(製品別計算、度外視法) 31.等級別総合原価計算(製品別計算、等価係数) 32.組別総合原価計算(製品別計算、組間接費) 33.工程別総合原価計算(製品別計算、累加法、前工程費) 34.総合原価計算(まとめ)
- 〇製品別計算(標準原価計算) 35.標準原価計算(概要、原価標準) 36.標準原価計算(標準原価) 37.標準原価計算(価格・数量差異、賃率・作業時間差異) 38.標準原価計算(予算差異、操業度差異、能率差異) 39.標準原価計算(シングルプランとパーシャルプラン) 40.標準原価計算(原価差異の会計処理、まとめ)
- 〇直接原価計算その他 41.CVP分析(損益分岐図表と損益分岐分析) 42.直接原価計算(計算の方法、固定費調整) 43.本社工場会計(工場会計の独立) 44.その他(原価予測、製品の受払い)
- 〇損益計算書・製造原価報告書 45.損益計算書と製造原価報告書