工業簿記2級 間接労務費とは(入門)|分類と要支払額、仕訳(ズボンメーカーの問題例)

更新日:2020年6月7日
作成日:2020年5月19日

前回に引き続き費目別計算のうち労務費について解説します。

※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

今回の学習はココ

間接労務費について学習します。工業簿記の計算段階でいうと、第1段階の費目別計算に該当します。

費目別計算(ひもくべつけいさん)とは材料費、労務費、経費といった費目を直接費と間接費に分類して計算・集計するための手続きをいいます。

具体的には上記の各勘定連絡図の左側に位置する材料、賃金、経費などの総勘定元帳から、仕掛品や製造間接費に分類して集計する手続きです。

間接労務費とは

間接労務費(かんせつろうむひ)とは、労務費のうち、製品毎にどの位の労働時間が発生したのかを直接は把握できないものをいいます。

直接費と異なり間接費は各製品にどれだけコストが発生したのか直接把握できません。そこで、間接費のコスト増減と関係する「配賦基準」を設定することで、できるだけ適切に実態を反映するように各製品へコストを案分します。

例えば、労働集約的な工場であれば、直接作業時間を配賦基準とし、ロボットで自動化された工場であれば機械の稼働時間を配賦基準とするでしょう。

間接労務費の分類と費目別計算

労務費を分類した細目は様々ですが、間接労務費に該当する項目は次の通り。

従業員労働対価作業時間直接or間接
直接工直接工賃金間接作業時間間接労務費
手待時間
間接工間接工賃金全作業時間
事務職員給料
アルバイト・
パートタイマー
雑給
全従業員従業員賞与手当-
退職給与引当金繰入額
(法定)福利費
(健康保険料負担金等。
社会保険料とも)

以上の通り様々な項目が間接労務費に該当します。

労務費の分類の項目一覧や労務費全般については下記の記事を参照。

覚え方のポイント

間接労務費はたくさん存在するので、「直接労務費を覚え、それ以外は全て間接労務費」と消去法で覚えると簡単に覚えられます。

直接労務費になるのは、直接工の直接作業時間のみです。

つまり布を切ったり、糸で縫うなどズボンを作っている時間だけです。

日報を書いた時間や待機時間は直接工であっても間接労務費になります。

そして直接工以外の労務費に該当する項目は全て間接労務費です。

直接労務費なのか間接労務費なのか、覚えていないのに問題で出てきた場合には、「製品毎に労働時間を把握できるかどうか考えてみる」こと(イメージしてみる。製品毎に把握できるのはズボンを作っている時間だけ)。

製品毎にどれ位の作業時間が発生したか把握できなければ間接労務費です。

間接労務費の計算

工業簿記2級では間接労務費は「要支払額」によって計算します。

要支払額(ようしはらいがく)とは、当月に発生した労務費の消費額をいいます。

一方で直接労務費は予定賃率によって計算する出題がほとんどです。

※直接労務費の仕訳や計算方法、賃率差異に関する解説は下記の記事を参照。

以下、間接工賃金とその他の間接労務費に分けて解説します。

要支払額の計算-間接工賃金

直接工と異なり、間接工は全ての作業時間が間接労務費になります。

間接労務費の計算ですが、直接工の労務費計算のように賃率や作業時間を使って計算するようなことはしません。

直接工は製品毎にどれだけ作業しているのか、把握できます(工業簿記の世界では直接作業時間は、製品別にどれだけ作業したのか把握できる、としています。だから直接工の直接作業時間は直接労務費に分類されます)。

一方で間接工は、そのような働き方はしていない、と工業簿記の世界では設定しています。

従って、間接工の労務費は作業時間や賃率で労務費を計算はしない、ということです。

それでは、何に基づいて労務費を計算するかというと、「支払額」です。

正確には、支払額と未払額(未払費用)の情報を使って当月の労務費を計算します。

例えば、ズボンメーカーの賃金支払いは20日締め当月25日払いとします。

間接工の賃金は次の通りとします。

  • 10月25日の支払額:785,000円(うち9月21日~30日分の支払額は、245,000円)
  • 10月21日~31日までの未払金額:255,000円

以上の設定で間接工の10月の労務費(の消費)を計算してみましょう。

労務費の消費とは、対象期間(ここでは10月)に作業した労働の対価(賃金)をいいます。

今回の例では締め日が20日のため、10月25日の支払額の対象期間は「9月21日~10月20日」です。

従って、785,000円がそのまま答えではありません。

「10月1日~10月31日」になるように調整が必要です。

そこで、次の通り計算します。

9月21日~10月20日)785,000円 + (10月21日~10月31日)255,000円 - (9月21日~9月30日)245,000円 = 795,000円

以上から、間接工の労務費(間接労務費)は795,000円が答えです。

このように当月に発生した労務費の消費額が要支払額です。

「間接工の労務費 = 要支払額」となります。

要支払額の計算-その他

間接労務費で間接工以外の項目には上の表を見ると、「従業員賞与手当、退職給与引当金繰入額、その他の法定福利費(健康保険、厚生年金など。社会保険料とも)」があります。間接工と同様、労務費は要支払額を計算します。

このような項目も間接工と同様、労務費は要支払額を計算して求めます。

ただし、工業簿記2級の問題では間接工のようにややこしい計算の出題はなく、問題に出てきた金額=発生額=要支払額という出題がほとんどです。

仕訳方法

間接労務費が発生した場合には賃金や賃金・給料といった勘定科目で計算したのち、製造間接費勘定へ振り替えます。

詳細に解説すると次の通り。

まず、間接工に賃金を支払った際には「(借方)賃金 ×× (貸方)普通預金 ××」と仕訳します。間接工賃金以外の間接労務費、例えば従業員賞与の計上であれば「(借方)賞与引当金繰入 ×× (貸方)賞与引当金 ××」です(工業簿記では商業簿記のような複雑な給与支払いの仕訳は出題されない)。

賃金支払いには未払が存在します。前月未払の金額であれば、再振替仕訳によって「(借方)未払費用 ×× (貸方)賃金 ××」などと仕訳されており、当月未払の賃金の仕訳は「(借方)賃金 ×× (貸方)未払費用 ××」です。

これらの仕訳によって、間接工の賃金勘定の残高は「当月支払+当月未払-前月未払」という借方残高が発生します。これが上で解説した要支払額の計算そのものになっていることに気づくでしょう。

この要支払額がズボンの製造に要したコストであるので製造間接費に振り替えます

この場合の仕訳が「(借方)製造間接費 ×× (貸方)賃金 ××」です。

これに対して直接工の場合の賃金勘定も支払や未払は実際金額を計上します。一方で労務費計算は予定賃率で計算するため、製造コストとして仕掛品に振り替える金額は予定金額(予定賃率×実際作業時間)です。従って、賃金勘定には賃率差異が発生します。

仕訳(その他の方法)

実務では様々な部門が存在し、様々な雇用形態や役割を担う人が働いており、賃金勘定に集計する支払の仕訳も沢山になります。従って賃金勘定から製造間接費勘定へ振り替え仕訳を行うと、直接工や間接工それぞれどれだけのコストが発生したのか把握するのが困難になります。

そこで直接工と間接工それぞれの賃金発生額や仕訳を把握するために、「直接労務費勘定」「間接労務費勘定」を経由して仕掛品に振り替え仕訳する方法を採用する場合があります。

問題例(ズボンメーカーを例に)

(例)当月の間接工の労務費を計算する。前月賃金未払額10万円、当月賃金支払額50万円、当月賃金未払額15万円。

次の問題と解説

賃率差異について解説します。難しい論点ではありませんが、実際原価計算と標準原価計算の賃率差異の違いを把握し、他の原価差異も含めて全体観で把握しておくことがポイント。

関連記事

ページトップへ