工業簿記2級 労務費とは(入門)|勘定科目と仕訳(ズボンメーカーの問題例)

更新日:2020年6月7日
作成日:2016年11月6日

今回から費目別計算のうち労務費について解説します。

※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

今回の学習はココ

上記の勘定連絡図のうち労務費について学習します。工業簿記の計算段階でいうと、第1段階の費目別計算に該当します。

費目別計算(ひもくべつけいさん)とは材料費、労務費、経費といった費目を直接費と間接費に分類して計算・集計するための手続きをいいます。

具体的には上記の各勘定連絡図の左側に位置する材料、賃金、経費などの総勘定元帳から、仕掛品や製造間接費に分類して集計する手続きです。

労務費とは

労務費(ろうむひ)とは、モノを作る際に直接または間接的に作業した人たちに関係した賃金・給料のことです。

具体的には工場で働いている人たちの賃金・給料をいいます。

※工場で作業している人たちの給料を特に賃金(ちんぎん)といいます。

労務費の分類

労務費の分類ですが材料費よりもかなり複雑です。そこで段階的に解説していきます。

※労務費の分類は項目が細かいですが、工業簿記2級では労務費の出題パターンは決まっており、直接工と間接工の給料(賃金)に関する出題です。「こういった項目があるのか」くらいに覚えておき、その後は問題演習で覚えていけばいいと思います。

まずは働いている人(従業員)の分類です。

項目具体例名称
直接工布を切る、糸で縫う、デザインするなど直接工賃金
間接工清掃する、モノを運ぶ、品質管理など間接工賃金
事務職員経理・給与計算など給料
アルバイト・
パートタイマー
説明は不要でしょう。雑給

次に賃金・給与など、労働の対価として支払うお金、サービスなどの内訳を分類します。

給料明細を思い浮かべると覚えやすいでしょう。

※説明の便宜上、賃金・給与などは全て「賃金」で言葉を統一しています。

項目内容
基本給賃金の基本となる部分のこと。時給○○円、日給○○円など
加給金(かきゅうきん)残業手当、能率手当などの諸手当。
従業員賞与手当賞与(ボーナス)、住宅手当、通勤手当など
退職給与引当金繰入額退職給付引当金のこと
(法定)福利費(健康保険料負担金等)いわゆる法定福利費(健康保険、厚生年金など、社会保険料とも)。ただし従業員負担分ではなく、会社負担分

補足福利費は給料明細から控除されており(給料が全額振り込まれるわけではない理由の一つ)、会社が預かって国に納付します。

皆さんが払っている(会社が預かっている)福利費は約半分であって、残りの半分は会社が負担してくれています。

上記の福利費はその会社が負担している部分のことをいっています。

まだあります。次は直接工の作業時間の内訳です。

項目具体例
直接作業時間ズボンを作るために作業した時間
間接作業時間会議、日報を書くなど。
手待時間待機時間のこと。布が届くのを待っている、前の工程作業を待っているなど。

直接労務費と間接労務費(費目別計算)

労務費のうち、直接、製品毎にどの位の労働時間が発生したのか把握できるものを直接労務費(ちょくせつろうむひ)、把握できないものを間接労務費(かんせつろうむひ)といいます。

上述の労務費分類の各項目をまとめ、さらに直接労務費、間接労務費と関連付けると次の表にまとめることができます。

従業員労働対価作業時間直接or間接
直接工直接工賃金
(基本給+加給金)
直接作業時間直接労務費
間接作業時間間接労務費
手待時間
間接工間接工賃金全作業時間
事務職員給料
アルバイト・
パートタイマー
雑給
全従業員従業員賞与手当-
退職給与引当金繰入額
(法定)福利費
(健康保険料負担金等。
社会保険料とも)

直接労務費と間接労務費の仕訳など、詳細は下記の記事で解説しています。

労務費の勘定科目

工業簿記2級で賃金・給料の支払や消費を記帳(仕訳)する場合に使用する勘定科目を例示すると次の通り。

・賃金 ・給料 ・賃金・給料 ・直接工賃金 ・間接工賃金 ・賞与引当金(繰入) ・退職給付引当金(繰入) ・直接労務費 ・間接労務費 ・仕掛品 ・製造間接費 ・現金・預金など

※工業簿記は商業簿記と異なり勘定科目の出題範囲が決まっていません。

従って、取引の流れを理解して仕訳パターンを覚えるとともに、問題で与えられた勘定科目を使って解く力が求められます。

原価活動の流れ

賃金・給料の支払→労務費の計算→消費

この活動が労務費に関係するので、この時に仕訳や総勘定元帳などの記帳や転記を行います。

順番に解説していきます。

賃金・給料の支払と仕訳

(例)工員に300万円、事務・パート・アルバイトに50万円を普通預金より支払った。

工員とは工場でモノ作りをしている人のこと。工員は賃金勘定で仕訳します。

工場でも経理事務などを行う人への支払いは給料勘定で仕訳するパターンが一般的です。

※ただし、まとめて賃金・給料勘定など別の勘定科目を使用する場合もあります。問題の指示に従います。

従業員賞与の計上と仕訳

(例)工員と事務の賞与引当金見込み額として100万円を計上した。

商業簿記では賞与引当金残高との差額を賞与引当金繰入勘定で計上しますが、工業簿記2級では賞与引当金について難しい問題は出題されません。

むしろサラッと書いてあるので厳密に考えてしまうと仕訳が分からなくなってしまいます。

労務費の計算・消費と仕訳(直接工賃金)

(例)当月の直接工の作業時間は直接作業時間500時間、間接作業時間50時間であった。なお、直接工は予定賃率を用いて労務費を計算しており、当期の予定賃率は@2,000円である。

直接工の労務費計算は予定賃率を用いる出題が通常です。

上記の「直接労務費と間接労務費(費目別計算)」に掲載した表の通り、直接工の作業のうち、直接作業時間は直接労務費、それ以外は間接労務費です。

従って、直接作業時間の500時間分は仕掛品勘定へ振り替え、その他作業時間は製造間接費へ振り替えます。

直接労務費の仕訳について詳細は下記の記事を参照。

労務費の計算・消費と仕訳(間接工賃金)

(例)当月の間接工の労務費を計算する。前月賃金未払額10万円、当月賃金支払額50万円、当月賃金未払額15万円。

間接工賃金は全ての作業が間接労務費に該当するので、全額製造間接費に振り替えます。

間接工の間接労務費は、上記のような問題設定の情報から当月発生の労務費を計算します。

当月発生の労務費を「要支払額(ようしはらいがく)」といいます。

間接労務費の仕訳について詳細は下記の記事を参照。

労務費の計算・消費と仕訳(その他)

(例)当月の工場の賞与引当金は100万円であった。

労務費には直接工賃金や間接工賃金以外にも従業員賞与、退職給付引当金、法定福利費などが存在します。これらは全て間接労務費に該当するため、製造間接費に振り替えます。

賃率差異の仕訳

(例)当月の直接工の実際の労務費(要支払額)は1,200,000円であった。賃率差異を計算する。

直接工の労務費は予定賃率で計算していたので、実際に発生した労務費(要支払額)との差額を賃率差異として把握して差額を賃率差異勘定に振り替えます。

賃率差異には実際原価計算と標準原価計算の2種類があります(今回解説は実際原価計算の方です)。詳細は下記の記事を参照。

次の問題と解説

直接労務費について解説します。直接労務費と間接労務費の分類の覚え方や複数の仕訳パターンについて理解しておくことがポイント。

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