原価計算入門その9~労務費(分類と直接費、間接費)

作成日:2016年11月6日 更新日:2018年5月17日

今回から費目別計算のうち労務費について解説します。

労務費は費目別計算の要素の1つです。
下記に学習上のポイントを参考に記載しました。ご利用ください。

※この「原価計算入門」のサイトでは、2級レベルの工業簿記を、衣服メーカーを例として毎回解説しています。


【学習のポイント】

0.労務費となる要素の分類
1.消費時:労務費の計算と仕訳
 ①直接工の労務費
 ②間接工の労務費
 ③その他の労務費

【労務費の分類】

労務費とはモノを作る際に直接または間接的に作業した人たちに関係した賃金・給料のことです。具体的には工場で働いている人たちの賃金・給料のことです。

さて、労務費の分類ですが材料費よりもかなり複雑になっています。そこで段階的に解説していきます。

まずは働いている人(従業員)の分類です。

項目具体例労働対価の名称
直接工布を切る、糸で縫う、デザインするなど直接工賃金
間接工清掃する、モノを運ぶ、品質管理など間接工賃金
事務職員経理・給与計算など給料
アルバイト・
パートタイマー
そのまま。雑給

イメージできましたか?



次に賃金・給与など、労働の対価として支払うお金、サービスなどの内訳を分類します。給料明細を思い浮かべると分かりやすい。

※説明の便宜上、賃金・給与などは全て「賃金」で言葉を統一しています。

項目内容
基本給賃金の基本となる部分のこと。時給○○円、日給○○円など
加給金残業手当、能率手当などの諸手当のこと。
従業員賞与手当賞与(ボーナス)、住宅手当、通勤手当など
退職給与引当金繰入額退職給付引当金のこと
(法定)福利費(健康保険料負担金等)いわゆる法定福利費(健康保険、厚生年金など、社会保険料とも)。ただし従業員負担分ではなく、会社負担分

【補足】福利費は給料明細から控除されており(給料が全額振り込まれるわけではない理由の一つ)、会社が預かって支払っています。実は皆さんが払っている(会社が預かっている)福利費は約半分であって、残りの半分は会社が負担してくれています。上記の福利費はその会社が負担している部分のことをいっています。

まだあります。次は直接工の作業時間の内訳です。

項目具体例
直接作業時間ズボンを作るために作業した時間
間接作業時間会議、日報を書くなど。
手待時間待機時間のこと。布が届くのを待っている、前の工程作業を待っているなど。

直接工といってもズボンを作っているだけではない、ということです。

これで労務費の分類の解説が終了しました。



【労務費の分類と直接費、間接費の区分】

労務費の分類と直接費、間接費とを結び付けます。

【直接労務費と間接労務費】

労務費のうち、直接、製品毎にどの位の労働時間が発生したのか把握できるものを直接労務費、把握できないものを間接労務費といいます。

労務費の各項目と直接労務費、間接労務費の関係は次の通りです。

従業員労働対価作業時間直接or間接
直接工直接工賃金
(基本給+加給金)
直接作業時間直接労務費
間接作業時間間接労務費
手待時間
間接工間接工賃金全作業時間
事務職員給料
アルバイト・
パートタイマー
雑給
全従業員従業員賞与手当-
退職給与引当金繰入額
(法定)福利費
(健康保険料負担金等。
社会保険料とも)

まず覚えるのは、直接工の賃金が全て直接労務費になるわけではないこと。
直接工以外は全て間接労務費になること。
ここを押さえておく。

直接労務費になるのは、直接工の直接作業時間のみ。つまりズボンを作っている時間だけ。日報を書いた時間や待機時間は直接工であっても間接労務費。

直接労務費なのか間接労務費なのか、覚えていないのに問題で出てきた場合には、製品毎に把握できるかどうか考えてみること(イメージしてみる。製品毎に把握できるのはズボンを作っている時間だけ)。

ややこしいのですが、(法定)福利費(健康保険料負担金等)と似た用語で「福利施設負担額」というものがあります。間接経費ですのでご注意ください。

【終わりに】

今回は労務費の分類と直接費、間接費について解説しました。
次回は労務費の計算と仕訳について解説します。


前の解説 | 次の解説


目次


【運営者情報・免責事項】






原価計算入門ガイド

会計入門
~実務に役立つ会計の入門

決算書が読めるようになるサイト。「実務に役立つシリーズ」第1弾!!

商業簿記入門
~2級、3級の資格学習を支援

サイト管理者の経験も交えて実務的な視点で解説。「実務に役立つシリーズ」第3弾!!

会計ヘッジ
将来リスクを回避するためのサイト

会計、簿記、経理、税務、起業など、トピックやトレンドも含め、様々な情報を配信

個人事業主の確定申告入門
~青色申告で節税する会計帳簿の作り方

個人事業主の青色申告について、仕訳や帳簿作成を中心に解説

【関連記事】
他コンテンツの記事です。

日商簿記検定の勉強におすすめの過去問題集

日商簿記検定だけでなく、どの資格試験でも過去問を解くことは有効な勉強方法です。日商簿記検定の過去問の入手方法は次の通り。(1)WEB(解答や分析・傾向のみ)・・・

日商簿記検定2級|次回の試験情報(出題論点など)

商工会議所サイトには改正論点のサンプル問題や出題範囲変更箇所が掲載されています。使用する勘定科目も変更するので、過去問の出題意図も含めて・・・

日商簿記検定2級の合格に必要な勉強時間とは

個々人によって勉強時間は異なるのは当然ですが、合格するのに必要とされる標準的な勉強時間を知らないと学習スケジュールを立てることができません。日商簿記検定2級は・・・

会計入門その6~棚卸資産

【商品及び製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品】これらの科目は製造や仕入に関する科目です。まとめて棚卸資産(たなおろししさん)といいます。年に1回・・・

会計入門その9~減価償却と資産計上

会計入門その4で資産について、次の通り説明しました。お金がどれだけあり、また、将来、現金として入金されそうなモノ(権利)がどれだけあるのか。ここで固定資産って将来・・・

商業簿記入門その24~クレジット売掛金(2級)

クレジット売掛金とは、クレジットカードを利用した売上取引に使用する勘定科目をいいます。得意先が、売上代金の支払にクレジットカード・・・

商業簿記入門その25~貸付金・借入金の手続と仕訳処理(3級)

貸付金とは、金銭を他の会社(若しくは人間)に貸し付けた場合に発生する、利息や貸し付けたお金を回収する権利(債権)の・・・

【原価計算入門】
当サイトの他のページを紹介。

原価計算入門その10~労務費(消費時の計算と仕訳)

【消費時の労務費の計算】労務費の消費という言葉はあまりピンとこないかもしれませんが、材料費と同じように、ズボンを作るのに投入する(作業する)といった・・・

原価計算入門その11~労務費(まとめ)

【まとめ】前回までで労務費の解説が終了しましたので、まとめを掲載します。労務費の分類・・・

原価計算入門その12~経費(分類・計算・仕訳)

【経費の分類と直接費、間接費】経費とは費目別計算の要素のうち、材料費と労務費以外の要素をいいます。経費の主な費目と直接費、間接費の区分は次の通りです・・・

原価計算入門その13~経費(まとめ)

【まとめ】前回で経費の解説が終了しましたので、まとめを掲載します。経費の分類・・・

原価計算入門その14~予定単価(費目別計算)

今回は、費目別計算のうち予定単価について解説します。予定単価とは費目別計算の要素である材料費、労務費、経費の計算について実際の単価ではなく、予め設定した単価のことをいいます。・・・

原価計算入門その15~予定単価(まとめ)

今回は、費目別計算のうち予定単価について解説します。予定単価とは費目別計算の要素である材料費、労務費、経費の計算について実際の単価ではなく、予め設定した単価のことをいいます。・・・

原価計算入門その16~製造間接費(予定配賦)

【製造間接費の分類】製造間接費には実際配賦基準または予定配賦基準を使用して求めます。操業度とは、直接作業時間,機械運転時間,生産数量等間接費の発生と関連ある物量基準のことをいいます。・・・

原価計算入門その17~製造間接費(固定費、変動費と配賦差額)

【製造間接費(固定費と変動費)】前回の設例では予定配賦を題材としました。原価計算基準にも記載がありますが、間接費は実際配賦率ではなく、予定配賦率を使用することが原則となっています。・・・

原価計算入門その18~製造間接費(原因分析、予算差異と操業度差異)

【製造間接費(原因分析、予算差異と操業度差異)】前回の設例の続きから解説します。※問1は前回、「原価計算入門その17~製造間接費(固定費、変動費と配賦差額)」の解説を参照ください。・・・