労務費とは|内訳・用語など概要を解説(原価計算)

記事最終更新日:2025年1月6日
記事公開日:2016年11月6日

労務費は様々な用語が登場し分類も複雑なため、工業簿記の中でも理解するのが難しい論点です。

本記事では、労務費の内訳を示し、用語と関連させながら概要を解説します。

※本記事は原価計算基準に基づき文章中心で解説しています。
勘定連絡図やイラストで視覚的に理解したい」
「労務費の分類や仕訳だけでなく、取引の流れも知りたい」
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労務費とは

労務費とは、製造に直接的又は間接的に関係した労働に対する賃金・給料のうち、製造に消費した部分をいいます。

内訳

労務費の内訳を示すと次の通り。

従業員労働対価作業時間直接or間接
直接工直接工賃金
(基本給+加給金)
直接作業時間直接労務費
間接作業時間間接労務費
手待時間
間接工間接工賃金全作業時間
事務職員給料
アルバイト・
パートタイマー
雑給
全従業員従業員賞与手当-
退職給与引当金繰入額
法定福利費
(健康保険料や厚生年金等の社会保険料)

この通り、いくつかの分類がありますが、工業簿記では「労働対価」による内訳毎に労務費を計算・仕訳します。

①直接工賃金

直接工とは製品の製造に直接的に関わる「製造部門(たとえば機械製作工場における鋳造、鍛造、機械加工、組立等の各部門)」で働く労働者をいい、直接工の労働の対価として会社が支払う賃金を「直接工賃金」といいます。

②間接工賃金

製品の製造に直接的ではなく、間接的に関わる「補助部門(在庫管理・清掃などの経営補助や工場管理に関する部門)」で働く間接工に支払う賃金を「間接工賃金」といいます。

③給料・雑給

工場の経理総務等の事務やパート・アルバイトで働く人の労働の対価として支払う場合には、「給料」「雑給」として分類します。

④従業員賞与・退職給付・法定福利費

①から③の全ての従業員に対する賞与・退職金及び法定福利費をいいます。

直接労務費と間接労務費

以上の労務費は、製品との関係から労務費を直接費と間接費とに分類し、それぞれ計算・仕訳します。

上記の表の通り、具体的には、①直接工賃金のうち、「賃率✕直接作業時間」のみが直接労務費となり、②から④を含めそれ以外の労務費は全て間接労務費として処理します。

労務費の計算

原則として次の通り計算します。

直接工は製品の製造作業を行うため、「どの製造工程で何時間働いたか?」を管理します。従って、上記の通り、賃率(時給)に実際作業時間を乗じて労務費を計算します。

これに対して、間接工は製品の製造に直接関わる訳ではないため、製造部門別に労働時間を集計できません。そこで、月や年間といった期間で発生した労務費である「要支払額」を計算して労務費とします。

勘定科目

労務費の仕訳に使用する代表的な勘定科目は次の通り。

・賃金(賃金・給料) ・直接工賃金 ・間接工賃金 ・未払費用 ・賞与引当金 ・退職給付引当金 ・仕掛品 ・製造間接費

勘定連絡図

一般的な場合の労務費と他勘定との関係を把握できます。

労務費の取引と仕訳

本記事では、概要を示します(詳細は「労務費(賃金)の仕訳・勘定科目・計算方法を例題で詳しく解説」を参照)。

賃金・給料の支払

商業簿記で学習する仕訳と同様に仕訳します。
※試験問題では商業簿記と異なり簡便な仕訳が出題されます)。

<取引例>
当月の賃金・給料1百万円を当座預金から従業員の銀行口座に振り込んだ。

<仕訳>

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
賃金・給料1,000,000当座預金1,000,000

2.未払費用の計上

工員の賃金の締日が月末以外の場合には、締日から月末までの労務費を未払費用計上します。

<取引例>
当社の工員への賃金は20日締め月末払いである。そこで当月未払の賃金(21日から月末)20万円を未払費用として計上する。

<仕訳>

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
賃金・給料200,000未払費用200,000

3.従業員賞与の計上

賞与引当金で仕訳します(退職給付も同様)。法定福利費は未払費用で処理するのが一般的です。

<取引例>
工員に対する賞与として50万円を引当計上する。

<仕訳>

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
製造間接費500,000賞与引当金500,000

4.労務費の計上

上記の1と2.で集計した賃金を労務費に振り替えます。

直接労務費(直接工の直接作業時間部分のみ)は仕掛品勘定、間接労務費は製造間接費勘定で仕訳します。

<取引例>
直接工の賃率1,500円、直接作業時間200時間、間接作業時間15時間、手待ち時間5時間。
間接工の要支払額20万円

<労務費の計算>
直接労務費=@1,500円✕200時間=30万円
間接労務費=@1,500円✕(15時間+5時間)+20万円=23万円

<仕訳>

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
仕掛品300,000賃金・給料300,000
製造間接費230,000賃金・給料230,000

5.賃率差異

実際原価計算において予定賃率を適用した場合、予定賃率と実際賃率による労務費の差額は賃率差異として認識します。

<取引例>
賃率差異5万円(不利差異)が発生したため適切に処理する。

<仕訳>

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
原価差異50,000賃金・給料50,000

6.作業時間差異

標準原価計算を採用した場合には、賃率差異だけでなく作業時間差異も計算します。

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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