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賃率差異
<出題可能性・重要度>★★☆☆☆
労務費の最後の論点として、「賃率差異」を解説します。
賃率差異
賃率差異とは、実際原価計算において、作業員の賃率として、予定賃率を設定して労務費を計算した場合に発生する、実際賃率による実際発生額との差異をいいます。
賃率差異は、実際原価計算で発生する原価差異(15種類の原価差異の1つ)です。
似ている原価差異として、標準原価計算の「賃率差異」があります。用語が同じであるため、ややこしいですが、別の原価差異です(第7章の「賃率差異と作業時間差異」で解説)。
賃率差異と実際原価計算
実際原価計算は、実際価格だけでなく、予定価格を使って原価を集計できる、と第1章の「実際原価計算と標準原価計算」で解説しました。
これは、賃率に関してもいえることです。予定賃率を使って、原価を集計できます。
予定賃率を使って、原価計算を行った場合に発生する原価差異が、賃率差異です。
直接工の労務費計算で適用できます。
<用語>賃率差異
- ・賃率差異 = 実際原価計算において、作業員の賃率として予定賃率を設定して、労務費を計算した場合に発生する、実際賃率による実際発生額との差異
賃率差異の計算方法
次の通り。
<Check>賃率差異の計算
- ・賃率差異 = 予定労務費 - 実際労務費
- = 予定賃率 × 実際作業時間 - 実際労務費
- =(予定賃率 - 実際賃率)× 実際作業時間
賃率差異の仕訳
賃率差異の発生に関する仕訳は、次の通り。「賃率差異(原価に属する勘定科目)」で仕訳します。
<Check>賃率差異の仕訳
- 不利差異(借方差異)の場合
- → 賃率差異 ××x/賃金・給料 ××x
- 有利差異(貸方差異)の場合
- → 賃金・給料 ××x/賃率差異 ××x
例えば、不利差異(借方差異)の場合には、「実際賃金 > 予定賃金」となり、この差額を「賃金・給料(原価に属する勘定科目)」から「賃率差異(原価に属する勘定科目)」に振り替えます(賃金・給料の減少と賃率差異の発生)。
勘定連絡図を示した後に、例題を掲載します。
<Check>例題-賃率差異
- (例題)当社では、直接工の労務費計算に予定賃率を設定している。当月の直接工の予定賃率は@2,000円、実際作業時間は500時間、実際の労務費(要支払額)は1,050,000円であった。
(仕訳)
- 賃率差異 50,000/賃金・給料 50,000(※1)
- (※1)予定労務費1,000,000(※2) - 実際労務費1,050,000円 = △50,000円(不利差異、借方差異)
- (※2)予定賃率@2,000円 × 直接作業時間500時間 = 1,000,000円
労務費の解説は以上です。続いて、経費を解説します。
