日商簿記2級、3級 剰余金の配当、処分と株主資本の計数変動手続き

更新日:2021年1月16日
公開日:2018年4月27日

前回は、株式会社設立後の新株発行時の仕訳について解説しました。

今回は、剰余金の配当や処分、および株主資本の計数変動に関する用語やその会社法上の手続きについて説明します。

剰余金の配当、処分および株主資本の計数変動に関する考え方

これらは全て「社外流出(しゃがいりゅうしゅつ)」に関係することで共通しています。社外流出とは、ここでは、純資産の科目についてお金が会社外部に出ていくことを意味していると考えて頂ければ差し支えありません。

用語や会社法上の手続きなど、詳細は以下に述べていきますが、基本的な考え方は次の通りです。

表示区分が資本金に近い位置にあるほど、会社法では厳格な手続きが必要になる。

下の図は、貸借対照表のうち、純資産の部の表示区分と社外流出に関する会社法の手続きとの、基本的な関係です。

会社法は、金融機関など会社債権者を保護するために制定されています。

純資産の表示科目の中で、資本金とは株式発行による株主からの払い込みに基づいて設定されており、会社債権者を保護するために最も重要な表示科目です。従って、例えば、資本金を減少させて、利益剰余金を増やすような、社外流出につながる手続きは、より厳格な手続きが必要となるよう会社法上でルール化されています。

これに対して、繰越利益剰余金とは、会社が稼いだ利益が基になっており、より緩和な手続きでよいとなります。

以下の解説も、このような考え方が根底にあることを念頭に入れながらお読み頂くと、より理解が深まるし覚えやすくなります。

剰余金の配当(3級)

配当(はいとう)とは、株式会社の純資産の部より計算された剰余金より、株主に対して主に金銭による支払いを行うことをいいます。

例えば、3月決算の上場企業の株式を購入し、その会社の業績が好調のため6月の定時株主総会で配当が決議され、1株当たり〇〇円、といったお金が株主に支払われる、ということが配当になります。配当金ともいいます。

その他、その他資本剰余金から配当を行う場合や、取締役会の決議のみて行われる配当(中間配当といいます)も、一般的ではありませんが、実務で行われる取引です。

この配当金は社外流出になり、あまりにも多額の配当が行われると、倒産の危険性が高まり、金融機関など会社の債権者がお金を回収できない危険性も高まります。

そこで、債権者を保護するために制定された会社法によって、配当できる範囲や計算方法をルール化しています。

この配当できる範囲が、剰余金です。

剰余金とは(2級、3級)

剰余金(じょうよきん)とは、「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」のことをいいます。

他の用語と併せて説明します。

資本剰余金、資本準備金、その他資本剰余金とは

資本剰余金(しほんじょうよきん)とは、財務諸表(決算書)上の純資産に関する表示区分の一つであり、資本金以外の、株主からの出資に関する取引を取り扱います。資本準備金とその他資本剰余金から構成されます。

次に、資本準備金(しほんじゅんびきん)とは、資本金の次に厳格な手続きが求められる科目をいい、株式発行による払い込み金のうち、資本金に組み入れなかった金額が含まれます。

その他資本剰余金(そのたしほんじょうよきん)とは、株主の出資に関する取引のうち、資本準備金以外の取引で使用されます。例えば、合併差益といったものが含まれます。

その他資本剰余金から配当を行う都度、会社法で定められた一定の金額まで、資本準備金に一定額を積み立てることが求められます。

利益剰余金、利益準備金、その他利益剰余金とは(3級)

利益剰余金(りえきじょうよきん)とは、財務諸表(決算書)上の純資産に関する表示区分の一つであり、会社のビジネス活動の結果、得られた利益に関する取引を取り扱います。利益準備金とその他利益剰余金から構成されます。

利益準備金(りえきじゅんびきん)とは、会社債権者を保護するために、その他利益剰余金から配当を行う度に都度、会社法で定められた一定の金額まで、一定額を積み立てるために設定された科目をいいます。

その他利益剰余金(そのたりえきじょうよきん)とは、会社のビジネス活動の結果、得られた利益(または損失)の累積を取り扱う科目であり、利益準備金以外のものをいいます。株主総会の決議などで積み立てる「各種の積立金」と、それ以外の利益(または損失)の累積である「繰越利益剰余金(くりこしりえきじょうよきん)」から構成されます。

以上の用語のうち、その他資本剰余金とその他利益剰余金を剰余金といい、配当の対象になります。

配当の手続き

剰余金である「その他資本剰余金」や「その他利益剰余金」から配当する場合には、その都度、それぞれ資本準備金または利益準備金という科目に、債権者を保護するために会社法で定められたルールで計算された金額を積み立てます。

具体的な会社法上の手続きは次の通りです。

項目手続き
配当時に準備金に積み立てる金額の計算共通資本準備金と利益準備金の合計が資本金の4分の1になるまで積み立てる。
その他資本剰余金の配当配当する金額の10分の1を資本準備金に積み立てる。
その他利益剰余金の配当配当する金額の10分の1を利益準備金に積み立てる。

※この3つのポイントは日商簿記2級の仕訳を解く際の計算で必要です。必ず覚えましょう。

剰余金の処分(2級、3級)

処分(しょぶん)とは、繰越利益剰余金を上述の配当金の支払いや、資本準備金・利益準備金への積立、およびその他の積立金科目への振り替えをいいます。

具体的な会社法上の手続きは次の通りです。

項目手続き
繰越利益剰余金(またはその他資本剰余金)の処分の決議ケースに応じて株主総会または取締役会で決議する。

※その他資本剰余金を処分の対象にする場合もあります。

株主資本の計数変動

株主資本(かぶぬししほん)の計数変動(けいすうへんどう)とは、純資産の表示区分のうち、株主資本の表示科目の間で金額の振り替えを行うことをいいます。

具体例をいくつか記載します。

ケース1:同じ剰余金内での計数変動

例えば、資本剰余金内で、その他資本剰余金から資本準備金への計数変動や、利益剰余金内で、繰越利益剰余金から利益準備金への計数変動のことです。

この計数変動は、社外流出が存在せず、債権者の保護からは問題ないため、株主総会決議で行うことができます。

【補足】上述のケースでは、準備金の金額が増えます。債権者保護の立場からは、より社外流出の危険性が減少する手続きであるため、取締役会でもよいのではないか?と考えますが、会社法は、債権者保護が最も重要な目的ですが、株主の権利も考えて手続きを調整します。株主保護という立場で考えると、上述の計数変動は「社外流出が少なくなる可能性が減少する = 配当が少なくなる可能性が高まる」手続きです。従って、株主保護という立場から株主総会決議としている、という立場で考えると理解しやすいと思います。

ケース2:資本金や資本準備金から繰越利益剰余金への計数変動

このようなケースは、繰越利益剰余金がマイナス、すなわち累計で損失であり、資本金や資本準備金の金額を繰越利益剰余金に振り替えることによってマイナスを解消したい場合に取る手続きです。

マイナスの繰越利益剰余金を改善させるためのこのような行為を「欠損填補(けっそんてんぽ)」といいます。

資本金や資本準備金を繰越利益剰余金に振り替えるということは、社外流出しやすい状態にする、ということです。従って、会社債権者を保護するために会社法上では厳格なルールを設けています。

具体的には株主総会決議だけでなく、この決議に不服な会社債権者は、異議を述べることができます。そして、会社債権者が異議を述べることができるような諸手続きを行うように、会社に対して求めています。

計数変動に関する会社法上の手続きをまとめると次の通り。

項目手続き
計数変動ケースに応じて株主総会または取締役会で決議する。ただし、社外流出の危険性が高まる場合には、債権者保護の手続きが求められる。

まとめ

今回は剰余金の配分や処分、株主資本の計数変動に関する用語と会社法手続きについて解説しました。用語が沢山登場し、難しいことも解説していますが、冒頭に述べた通り、表になっている部分を覚え、その他の解説は周辺知識の理解のためにご利用ください。

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