商業簿記入門その100~剰余金の配当、処分、株主資本の計数変動に関する取引の仕訳処理(2級)

公開日:2018年4月28日

剰余金の配当、処分、株主資本の計数変動に関する取引の仕訳処理(2級)

前回、「商業簿記入門その99~剰余金の配当、処分、株主資本の計数変動に関する用語と会社法手続き(2級)」では、剰余金の配当、処分および株主資本の計数変動について、用語や会社法上の諸手続きについて解説しました。

今回は、剰余金の配当や処分、および株主資本の計数変動に関する取引について仕訳処理を解説します。

※簿記2級の論点になります。

※株式会社や会社法の概要は「商業簿記入門その95~株式会社と会社法(総論)(2級)」をご参照ください。

※株式発行の用語や会社法の手続きについては「商業簿記入門その99~剰余金の配当、処分、株主資本の計数変動に関する用語と会社法手続き(2級)」をご参照ください。


剰余金の配当、処分に関する取引

剰余金の配当や処分に関する取引には、定時株主総会に行われる配当や処分が最も一般的な取引です。

定時株主総会では、財務諸表(決算書)の承認(または報告)と同時に、承認された決算書に記載された繰越利益剰余金のうち、株主の配当や各種の積立金に振り替える金額について決議します。

その他、その他資本剰余金から配当を行う場合や、取締役会の決議のみて行われる配当(中間配当といいます)も、一般的ではありませんが、実務で行われる取引です。

剰余金の配当や処分に関する取引の仕訳処理

剰余金の配当や処分に関する取引については、「繰越利益剰余金勘定(純資産に属する勘定科目)」「未払配当金勘定(負債に属する勘定科目)」「利益準備金勘定(純資産に属する勘定科目)」「〇〇積立金勘定(純資産に属する勘定科目)」「その他資本剰余金勘定(純資産に属する勘定科目)」「資本準備金勘定(純資産に属する勘定科目)」を使用して仕訳処理します。

具体的には、配当や処分の源泉(げんせん。「もと」という意味)となる科目を選択します。定時株主総会にて、剰余金のうち、繰越利益剰余金から処分(配当含む)する、という最も一般的な取引であれば、繰越利益剰余金が源泉となります。

この場合には、源泉となる剰余金を取り崩す(純資産の減少)ため、借方に繰越利益剰余金勘定を記入します。

これに対して、その他資本剰余金を源泉として処分を行う場合もあります。この場合には借方にその他資本剰余金勘定を記入します。

次に貸方ですが、配当であれば配当額にて未払配当金勘定を記入します。

同時に会社法のルールに基づいて計算した金額にて、準備金を記入します。勘定科目は源泉によって異なり、繰越利益剰余金であれば、利益準備金勘定を記入し、その他資本剰余金であれば、資本準備金勘定を記入します。

積立金への積み立てであれば、「任意積立金」「修繕積立金」などの〇〇積立金勘定を記入します。

剰余金の配当や処分に関する取引の仕訳処理(まとめ)

商業簿記入門その99~剰余金の配当、処分、株主資本の計数変動に関する用語と会社法手続き(2級)」にて解説した会社法の手続きと併せて、仕訳処理のまとめを掲載します。また代表的な積立金の勘定科目を掲載します。

準備金の金額の計算方法については、後述の仕訳例で解説します。

項目手続き
配当時に準備金に積み立てる金額の計算共通資本準備金と利益準備金の合計が資本金の4分の1になるまで積み立てる。
その他資本剰余金の配当配当する金額の10分の1を資本準備金に積み立てる。
その他利益剰余金の配当配当する金額の10分の1を利益準備金に積み立てる。
項目手続き
繰越利益剰余金(またはその他資本剰余金)の処分の決議ケースに応じて株主総会または取締役会で決議する。
出来事配当、処分
の源泉(もと)
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
剰余金の配当と処分繰越利益剰余金繰越利益剰余金×××未払配当金×××
利益準備金×××
〇〇積立金×××
その他資本剰余金その他資本剰余金×××未払配当金×××
資本準備金×××
〇〇積立金×××
勘定科目名積立金の目的
別途積立金なし
配当平均積立金業績が変動しても毎期安定した配当を行う。
修繕積立金建物の診断や修繕工事を行う。
新築積立金自社ビルなどを新築する。

株主資本の計数変動に関する取引

株主資本の計数変動に関する取引とは株主資本内の科目間で振り替えを行うことであり、例えば、「繰越利益剰余金を利益準備金に振り替える」「資本準備金をその他資本剰余金に振り替える「資本金を繰越利益剰余金に振り替える」」などがあります。

また上述で説明した繰越利益剰余金から〇〇積立金へ振り替えることも、株主資本の計数変動に関する取引ということができます。

株主資本の計数変動に関する取引の仕訳処理

株主資本の計数変動に関する取引については、株主資本の各勘定科目を使用して仕訳処理します。

商業簿記入門その99~剰余金の配当、処分、株主資本の計数変動に関する用語と会社法手続き(2級)」にて解説した会社法の手続きと併せて、仕訳処理のまとめを掲載します。

項目手続き
計数変動ケースに応じて株主総会または取締役会で決議する。ただし、社外流出の危険性が高まる場合には、債権者保護の手続きが求められる。
出来事借方科目借方金額貸方科目貸方金額
株主資本の計数変動株主資本の勘定科目×××株主資本の勘定科目×××

仕訳例

1.A社は定時株主総会の決議に基づいて次の通り、繰越利益剰余金の処分を行った。
(1)配当金 150万円
(2)目的を定めていない積立金 50万円
なお、資本金残高は1千万円、資本準備金残高は100万円、利益準備金残高は50万円である。

2.B社は定時株主総会の決議に基づいて次の通り、その他資本剰余金の処分を行った
(1)配当金 200万円
(2)積立金 50万円
※積立金の目的は株主への安定した配当を毎期行うためである。
なお、資本金残高は1千万円、資本準備金残高は200万円、利益準備金残高は40万円である。

3.C社は株主総会の決議に基づいて、次の通り手続きを行った。
(1)欠損の補填を目的として、資本準備金80万円を取り崩して繰越利益剰余金に振り替えた。
(2)別途積立金20万円を取り崩して繰越利益剰余金に振り替えた。

【解答】

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1繰越利益剰余金1,650,000未払配当金1,000,000
利益剰余金150,000
別途積立金500,000
2その他資本剰余金2,600,000未払配当金2,000,000
資本準備金100,000
配当平均積立金500,000
3資本準備金800,000繰越利益剰余金1,000,000
別途積立金200,000

【解説】
1.処分の源泉は問題文より繰越利益剰余金です。したがって、配当と同時に利益準備金を積み立てます。

利益準備金の計算
A.資本金(1千万円)の4分の1 2,500,000円 - 準備金(資本準備金と利益準備金の合計)1,500,000 = 1,000,000円
B.配当金の10分の1 配当金1,500,000 × 1 / 10 = 150,000円
A > Bであるため、今回の配当で積み立てる利益準備金は150,000円になります。

2.処分の源泉は問題文よりその他資本剰余金です。したがって、配当と同時に資本準備金を積み立てます。

資本準備金の計算
A.資本金(1千万円)の4分の1 2,500,000円 - 準備金(資本準備金と利益準備金の合計)2,400,000 = 100,000円
B.配当金の10分の1 配当金2,000,000 × 1 / 10 = 200,000円
A < Bであるため、今回の配当で積み立てる資本準備金は100,000円になります。

3.問題文の指示の通り、勘定科目間で振り替え処理をするだけです。

まとめ

今回は剰余金の配分や処分、株主資本の計数変動に関する取引の仕訳処理について解説しました。配当に関する準備金の勘定科目の選択と積立額の計算を間違えないよう繰り返し演習して定着させましょう。


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