支払手形とは|勘定科目と仕訳を解説(簿記3級)

記事最終更新日:2024年5月16日
記事公開日:2021年8月10日

※本記事の一部で簿記2級の試験範囲を解説しています。

簿記3級で出題される支払手形(勘定科目)の仕訳を中心に解説します。ポイントとなる約束手形と為替手形の違いが理解できれば仕訳問題を解けるようになります。

※手形については下記の記事で解説

支払手形とは

支払手形」は負債に属する勘定科目です。商品を仕入れた時に振出した手形を介して代金を決済する取引に使用します。

手形には「約束手形」と「為替手形」がありますが、どちらの手形であっても当社が支払人となった場合には「支払手形勘定」で記帳します(両者の違いは後述)。

勘定科目の性質

支払手形は、将来の満期日に現金の支払いが生じ「会社の支払い義務」となるため、「負債に属する勘定科目」として分類されます。

仕訳は「取引の8要素」に基づいて借方又は貸方に記帳します。

支払手形の仕訳

取引の時系列に従って仕訳を解説します。

1.商品を仕入れた時の仕訳

約束手形と為替手形とで取引内容が異なります。

1-1.当社が約束手形を振出した場合

商品の仕入時に当社が「約束手形」を振出した場合には将来の支払い義務が発生するため、「支払手形(負債)」の増加として貸方に記入します(借方には仕入を記入)。

<仕訳例>
商品100を仕入れた。代金として、当社は約束手形を振り出して仕入先に渡した。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
仕入100支払手形100

1-2.為替手形を受け取った場合

仕入先から為替手形を受け取る場合があります。当社は振出人ではありませんが、為替手形には当社が支払人として記載されるため、約束手形の振出しと同じく「将来の支払義務」が発生します。従って、負債として「支払手形」で仕訳します。

<仕訳例>
商品100を仕入れた。支払として仕入先が振出した為替手形(支払人は当社)を受け取った。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
仕入100支払手形100

2.買掛金の決済手段として手形を振り出した場合

商品の仕入れ時には掛け払いとして買掛金で処理し、その後、買掛金の決済として手形払いとすることがあります。

この場合には、買掛金が減少した代わりに支払手形が増加します。

<仕訳例>
買掛金100の支払日になった。仕入先の了承を得て代金として同額の約束手形を振り出し、仕入先に渡した。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
買掛金100支払手形100

3.決済時の仕訳

当座預金から手形の額面金額が引き落とされます。これで支払い義務は果たしたため、支払手形の減少として借方に記入します(貸方は当座預金)

<仕訳例>
先日振り出した約束手形100の満期日になり、当座預金から同額が引き落とされた。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手形100当座預金100

4.借入れ時に手形を振出した場合

支払手形ではなく「手形借入金(負債)」で仕訳します。手形借入金で仕訳処理する理由は、商品代金ではなくお金の借り入れをするため、勘定科目から取引内容が分かるようにしておくためです。

<仕訳例>
金銭100の借り入れに際して手形を振り出して貸主に渡した。本日、普通預金に振り込みがあった。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金100手形借入金100

5.裏書手形を渡した場合

※以降は簿記2級の試験範囲

仕入代金として裏書手形(得意先より受け取った手形を裏書きしたもの)を渡した場合には「受取手形」の減少として仕訳します。

<仕訳例>
商品100を仕入れ、代金として当社得意先が振り出した手形を裏書き譲渡した。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
仕入100受取手形100

6.手形を更改した場合

満期日を延長して支払日を先延ばしにする場合には更改前の手形も更改後の手形もどちらも支払手形で仕訳します。

<仕訳例>
当社支払人の約束手形100を更改し、利息5を額面に加えた手形を新たに振り出して仕入先に渡した。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手形100支払手形105
支払利息5

7.有形固定資産や有価証券の購入時に手形を振り出した場合

「営業外支払手形」で仕訳します。

<仕訳例>
土地100を購入し、代金として手形を振り出した。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
土地100営業外支払手形100

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須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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