買掛金とは|仕訳例を示して分かりやすく解説(簿記3級)
記事最終更新日:2023年12月29日
記事公開日:2021年8月2日
※本記事の一部では、簿記2級の試験範囲について解説しています。
「買掛金」は簿記3級で学習する勘定科目ですが、請求書をはじめとする証憑書類や支払いに関係することから、経理実務でも重要な科目です。
本記事では簿記3級の試験範囲の「買掛金」について、仕訳例を示しながら分かりやすく解説します。
買掛金とは|仕訳例を示して分かりやすく解説(簿記3級)
目次
仕訳例
<仕訳例>
1.商品100を掛けで仕入れ、また商品の運送代金5を現金で支払った。
2.上記1の商品のうち3が商品間違えであったため、仕入先へ返品した。
3.上記1の商品に関する請求書(返品分3を除いたもの)が届き、掛代金97を振込手数料1とともに当座預金口座から支払った。
4.商品100(税抜き)を仕入れ代金は掛けとした。消費税率は10%とする。
5.買掛金のうち15を支払手形を振り出して支払った。
6.買掛金30について、でんさい(電子債権記録機関)を通じて発生記録の請求を行った結果、電子記録債務として登録された。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
1 | 仕入 | 105 | 買掛金 | 100 |
現金 | 5 | |||
2 | 買掛金 | 3 | 仕入 | 3 |
3 | 買掛金 | 97 | 当座預金 | 98 |
支払手数料 | 1 | |||
4 | 仕入 | 100 | 買掛金 | 110 |
仮払消費税 | 10 | |||
5 | 買掛金 | 15 | 支払手形 | 15 |
6 | 買掛金 | 30 | 電子記録債務 | 30 |
買掛金とは
「買掛金」とは、事業で取り扱うモノやサービスを購入する場合に、契約書や注文書等によって約束した日までに代金を支払う義務(債務)をいいます。
買掛金は「掛け」ともいい、「掛けで仕入れた」「掛代金を支払った」といった使い方をします。
買掛金の性質と仕訳の記帳
買掛金は「会社が将来支払う債務(義務)」に該当することから「負債」に属します。
従って、「取引の8要素」の負債の仕訳の通り、買掛金の増加は「貸方」に記入し、買掛金の減少は「借方」に記入して仕訳します。
買掛金の基本的な仕訳
商品仕入れ時の仕訳
商品を掛けで仕入れた場合には、「仕入」を貸方に記入するとともに、掛代金の増加として「買掛金」を貸方に記入します。
※「3分法」による仕訳方法。
付随費用
商品の仕入れ時に発生した運賃や代理店への手数料を「付随費用(ふずいひよう)」といい、借方は仕入に含めて仕訳し、貸方は現金・各種預金・未払金など支払いに応じて記入します。
以上から、仕入れ時の仕訳は次の通り。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
商品仕入れ | 仕入 | ××× | 買掛金 | ××× |
現金・預金・未払金 ※ | ××× |
※付随費用の支払い。
(簿記2級)商品返品時の仕訳(用語解説あり)
仕入先からの商品を検品した結果、商品間違えや数量間違え等、会社の注文と異なる場合があります。
注文書とは異なる商品は、仕入先に返品します。この際には、仕入れのとは貸借反対の仕訳を記帳し、仕入・買掛金それぞれを減少させます。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
商品返品 | 買掛金 | ××× | 仕入 | ××× |
<用語>商品の「検品」と「注文書」
- ・仕入れた商品が手許に届いた際に、商品自体や数量が注文した内容と合っているかどうか確かめる作業を「検品」といいます。
- ・商品を購入する会社が、商品を販売する会社(仕入先)に対して注文する際に送付する書類を「注文書」といい、「請求書」「納品書」などとともに重要な「証憑(しょうひょう)書類」の1つです。
掛代金の支払い時の仕訳
現金や預金口座への振り込みによって、売掛代金を回収した場合には売掛金が減少するため、貸方に「売掛金」を記入し、借方に現金や普通預金等を記入します。
請求書と買掛金
商品を仕入れると、仕入先から「請求書」が送付されています。
※商品と同梱の場合もあれば、後日送付されてくる場合もあります。
請求書には仕入額の合計とその内訳(明細)、消費税、振込先、支払期日などが記載してあります。
このうち消費税を含めた請求書金額の合計額が買掛金です。
銀行の振込手数料
銀行から代金を振り込む際には、銀行に支払う「振込手数料」が発生することがあります。
振込手数料を支払った場合には、「支払手数料」で借方に記入し、貸方には「普通預金」「当座預金」など預金の種類に応じて、掛代金と合計して1行で仕訳します。
以上から、掛代金の支払い時の仕訳は次の通り。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
掛代金の支払い | 買掛金 | ××× | 当座預金・普通預金等 | ××× |
支払手数料 | ××× |
消費税が設定された場合の仕訳
商品仕入れ時の仕訳において「消費税」が設定されている場合には、借方の仕入は「商品本体価格 」で仕訳し、消費税額を「仮払消費税」で仕訳します。貸方については「本体価格 + 消費税額」で「買掛金」を記入します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
消費税の設定時 | 仕入 | ××× | 買掛金 | ××× |
仮払消費税 | ××× |
支払手形及び電子記録債務による支払時の仕訳
買掛金の支払いは現金・預金以外にも、「支払手形」や「電子記録債務」で行う場合があります。
この場合、減少する「買掛金」を借方に記入するとともに、増加する「支払手形」や「電子記録債務」を貸方に記入します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
手形・電子記録債務による支払い | 買掛金 | ××× | 支払手形・電子記録債務 | ××× |
まとめ
以上、「買掛金」の仕訳について、簿記3級の試験範囲を中心に解説しました。
本記事中の「関連記事」も併せて参照頂ければ幸いです。
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