前払費用とは|定義・仕訳方法・資産性を具体的に解説

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記事最終更新日:2023年7月26日
記事公開日:2012年4月14日

「前払費用」は簿記3級の学習者や会計入門者にとって、理解するのに時間を要する科目です。

「定義が難しいので仕訳が理解できない」「なぜ資産になるのか分からない」という人も少なくありません。

本記事では、前払費用の定義を説明した後に、仕訳方法や資産性について具体的に解説します。

※長期前払費用は下記の記事で解説しています。

前払費用とは

前払費用」とは、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいいます。

経過勘定項目の1つとして「企業会計原則」の「注5 (1)」に規定されています。

定義を分かりやすく解釈すると

「一定の契約に従い」とは、契約書などに基づいて、という意味合いです。

「継続して」は、「毎月」と考えます。

「役務の提供」とは、「サービスの提供」をいいます。

すなわち、前払費用とは、「契約書に基づいて、毎月発生するサービスの提供を受ける場合、サービス提供を受ける前に支払ったキャッシュ」をいいます。

「役務」の内容

前払費用の対象となる「役務(サービス)」とは、「家賃」「地代」「手数料」「保険料」などのように、時間の経過とともに発生するような取引が対象です。

そして、前払費用の定義の「継続して」との記載から、毎月継続して上記のサービス提供を受けている場合に、前払費用の対象になります。

会計処理

上記サービスの提供を受けた場合で、対価を前払いした場合には、「前払費用」として貸借対照表に資産計上します。

ただし、前払費用のうち重要性が乏しいものについては、前払費用(経過勘定項目)として資産計上せずに支出時の費用とすることもできます(重要性の原則 「企業会計原則 注1 (2)」)

前払費用が資産である理由

資産とは簡単に説明すれば「会社の財産」です。

前払費用の場合には、先にキャッシュ(現金預金)を支払っているため、「支払った対価の分だけ、将来、サービス提供を受ける」ことができます。

「オフィスの賃借(支払家賃)」を例にして考えると、当月に翌月分の賃借代金を普通預金から支払った場合、翌月には「支払いなし」でオフィスを賃借できます(もっとも翌々月の支払いをする必要はありますが)。

つまり、当月に翌月代金を支払った時点で「対価を支払わずに翌月にオフィス賃借できる権利」という「会社財産」を有することになります。

以上の理由から、前払費用は会社財産であることから、資産として貸借対照表に表示します。

長期払費用

決算日の翌日から一年を超えて費用化される部分については、「長期前払費用」に振り替えます。

前払金(前渡金)との違い

役務(サービス)が対象のため、商品・製品などのモノは対象になりません。

商品・製品などの売買取引について手付金など先払いした場合には、「前払金(前渡金)」で会計処理します。

前払費用の仕訳方法

前払費用(資産に属する勘定科目)」で仕訳します。

対価の支払い時に前払費用が増加するため「前払費用」を借方に記入し、貸方には対価(現金・預金)を記入します。

決算時に「決算修正仕訳」として前払費用を計上した場合には、翌期首に貸借反対の仕訳(「再振替仕訳」)を記帳します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払い時前払費用×××支払家賃など×××
再振替仕訳支払家賃など×××前払費用×××

B/S表示

一年基準」に基づいて、貸借対照表日から起算して一年以内に費用になる場合には「流動資産」の区分に表示し、一年を超える「長期前払費用」の場合には「固定資産(投資その他の資産)」の区分に表示します。

仕訳例

  • 1.決算整理仕訳として支払家賃10を次期に繰り延べる。
No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1前払費用10支払家賃10

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須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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