支払家賃(勘定科目)を仕訳例で解説(簿記3級・経理実務入門)

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記事公開日:2021年10月5日

支払家賃(地代家賃)」「地代家賃」「差入保証金」などの勘定科目を用いる不動産の賃貸借契約の経理実務は、専門性の高さに加えて、税務の複雑さ、そして、2027年度から適用される「新リース会計基準」によって、現在では、複雑で理解が難しいものの1つといえます。

ですが、日商簿記3級で出題される支払家賃は、前払費用さえ理解できれば、仕訳自体は難しくありません。支払地代や土地・建物の取得の取引・仕訳との違いに着目して理解しておくと、学習効果が上がります。

これに対して、実際の経理実務では、賃貸借契約に関する様々な専門用語が登場します。また、会計処理(仕訳の方法)も、日商簿記3級で学習するやり方以外に、いくつかの方法が存在します。

さらに、2027年度より適用される「新リース会計基準」によって、賃貸借契約の会計処理が大きく変わります。経理実務だけでなく日商簿記でも試験範囲の改定論点となるため、2027年度に受験を考えている場合には、押さえておくべき内容です(ただし、結論を先に述べると、日商簿記3級においては、手形廃止など、他の論点では試験範囲の変更がありますが、新リース会計基準については変更はありません)。

このように、すでに経理実務に携わっている方だけでなく、日商簿記3級の資格を活かして経理担当者として働きたいと考えている方も、支払家賃に関する知識について概要を知っておくと役立つはずです。

そこで、本記事では、「日商簿記3級の受験者」や「経理などで働く方」などを対象に、支払家賃の勘定科目について、経理実務に役立つ知識を含めて、他の勘定科目との違いや会計処理(新リース会計基準含む)など、概要を説明した後に、日商簿記3級で出題される可能性のある取引について、実務的な仕訳方法も含めて仕訳例を解説し、最後には仕訳問題を6問掲載しています(解説・解答付き)。

<本記事について>
・本試験レベルの仕訳例・問題を解説しています。
・取引例(問題文)は、簿記3級の出題を考慮しつつも、実務に役立つ用語・内容や、時事ワードを含めてオリジナル要素を強めています。
・日商簿記3級の試験範囲を越えた応用的な説明(賃貸借契約の取引に関する実務的な知識や会計処理、新リース会計基準の内容)を含みます。
基本レベルの問題から学習したい方は、次のリンクから基本テキスト(電子書籍WEB版)を利用できます。

<実務者向けの解説について>
・見出しに「実務」という文言を含む解説(その中の見出しの解説も含む)は、経理担当者などの実務者向けの内容(日商簿記3級の試験範囲外)です。

支払家賃とは

支払家賃とは、賃貸借契約(民法)に基づいてビルやマンション、アパートなどの建物を借りた場合に支払う、家賃の支出に関する「費用に属する勘定科目」をいいます。

支払家賃と同様の勘定科目に「支払地代」や「地代家賃」があります。

支払地代との違い

支払地代とは、建物ではなく、土地を借りた場合の支出に基づく費用を仕訳処理するために使用する勘定科目をいい、日商簿記3級で出題されます。

これに対して、支払家賃は建物を借りた場合に用います。

地代家賃との違い

地代家賃は、建物や土地を借りた場合の支出を仕訳処理する際に使用できる勘定科目(費用)です。つまり、支払家賃と支払地代の両方の取引で使用できます。

※日商簿記3級でも、地代家賃や支払家賃の代わりに、解答での使用が認められている勘定科目です。

これに対して、支払家賃は建物の賃借にのみ用います。

建物・土地との違い

有形固定資産のうち、建物や土地は、オフィスやマンション、土地などを取得した場合に用いる勘定科目です。つまり、自らが建物や土地を所有している場合に使用します。

また、不動産会社へ支払う仲介手数料などの取得に要した支出については、付随費用として建物・土地の取得原価に含めて資産計上します。

さらに、所有する建物は耐用年数に応じて、毎年、減価償却を行うことで費用計上します。

これに対して、支払家賃は、「他者が所有する建物」を賃借した場合に支払う家賃を仕訳処理する場合に用います。また、不動産会社への仲介手数料は支払手数料などの勘定科目で費用処理します。

※消費税の課税についても、賃貸と取得とは取り扱いが異なります(後述、「(実務)経理に役立つ関連知識」の「4.消費税」で説明)。

(実務)経理に役立つ関連知識

ここでは、支払家賃の仕訳処理の際に必要となる知識や理解を深める知識を説明します。

1.賃貸借契約

賃貸借契約とは、支払家賃で処理する支出の根拠となる契約です。貸主が物を貸し、借主が使用・収益する対価として料金を支払うことを約する、という民法で定めのある契約形態です(民法601条)。

物には、土地や建物といった不動産だけでなく、動産も対象に含まれるため、賃貸借契約は自動車、コピー機、PCなどの賃借である「リース取引」の根拠になっているともいえます。

2.支出の種類

建物の賃貸借取引に関する支出には次のものがあります。

2-1.家賃

借りる物件自体の賃借料であり、「支払家賃」を用いて仕訳処理する際の本体となる支出です(詳細は「会計処理と仕訳方法」および「仕訳例」を参照)。

2-2.共益費

管理費ともいい、廊下、エントランスまたは階段など、建物の住居者が共用して利用する部分を維持するために要する費用をいいます。家賃と同じく「支払家賃」で処理します。

契約上、家賃に含める場合と家賃とは区分して契約する場合があります。

2-3.敷金・保証金

どちらも、家賃の滞納や退去時の建物の現状回復に充当するために、入居時に借主が貸主に預け入れるお金をいいます。金額は契約によって異なりますが、家賃を基準に数ヵ月分を支払うことが一般的です。

上記の理由で差し引かれることがなければ、将来、退去時に返金されますが、契約によっては「敷引き(しきびき)」に代表されるように、返金されないものもあります。

敷金や保証金のうち、将来、返金されるものを貸主に預けた場合には、「差入保証金」などの資産に属する勘定科目を用いて仕訳します(「仕訳例」の「2.店舗物件の賃貸借契約に係る振込依頼書(証ひょう問題)」を参照)。

2-4.礼金

建物の貸主に対する謝礼としての意味合いで支払うお金をいいます。敷金と同様、家賃の数ヶ月分とする契約が一般的です。敷金と異なり、将来、返金されません。

礼金を支払った場合には、「支払手数料」などの勘定科目で仕訳処理し、費用計上します。

※ただし実務では、金額が20万円以上の場合には、税務上の観点から「長期前払費用」などの勘定科目を用いて資産計上することがあります。

※「新リース会計基準」を適用した場合には、一般的には、「使用権資産」で資産計上する対象になります。

2-5.権利金

建物の賃借および「地上権」または「借地権」といった土地の賃借に関する権利の使用の対価として支払うお金をいいますが、貸主に対する謝礼的な意味が含まれる場合もあります。

例えば、借主が貸主から借りた土地の上に店舗を建てる権利を、貸主から得る場合に支払うお金が権利金になります。

※実務では、費用または資産として処理する場合がありますが、複雑に分岐しており、さらに、分岐後の会計処理の選択肢が複数の場合もあるため、本記事では会計処理の説明は省略します。

2-6.建設協力金

貸主が土地の上に建物を建てる場合に、建設費用の一部を借主が貸主に預けるお金のことをいいます。貸主はこのお金を元手の一部として建物を建設することから建設協力金といいます。

建設協力金は、家賃から相殺する方法などによって返還されますが、賃貸借契約を中途解約した場合など、契約内容によって返還されない場合もあります。

※建設協力金の会計処理は、より専門的な知識が必要のため、本記事では会計処理の説明は省略します。

2-7.更新料

賃貸借契約の期間満了後の更新時に、借主が貸主に対して支払う一時金(相場は家賃の1ヶ月分)をいいます。

礼金と同じく返金されないため、「支払手数料」などの費用に属する勘定科目で仕訳処理します。

※礼金と同じく、実務では、「長期前払費用」などで資産計上する場合があります(「仕訳例」の「(実務)賃貸借契約の更新料を資産計上する場合」を参照)。また、「新リース会計基準」を適用した場合には、一般的には、「使用権資産」で資産計上する対象になります。

2-8.仲介手数料

貸主と借主の間を仲介する不動産会社に支払う手数料をいい、「支払手数料」で処理します(「仕訳例」の「(実務)賃貸借契約の更新料を資産計上する場合」を参照)。

3.支払方法

土地や建物の賃貸借契約は、一般的には、「前払い」で支払います。

従って、会計上の原則的な処理としては、継続的に支払う家賃のうち、将来使用する月(未使用の月)の部分については、「前払費用」を計上します。

4.消費税

事業用の土地や建物の賃借の場合には10%の消費税がかかります。

これに対して、居住用の物件については消費税がかかりません。

会計処理と仕訳方法

日商簿記3級では、家賃の支払い時、前払費用の計上時、および再振替仕訳の際に仕訳します。

(1)家賃の支払い

家賃を支払った時に支払家賃(または地代家賃)の勘定科目を借方に記入して仕訳し、費用計上します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払家賃 ※100普通預金100

※地代家賃でも可

<取引の8要素>

取引の8要素の一覧表

(2)前払費用の計上(決算整理事項)

家賃を前払いで支払う場合には、決算整理仕訳として、支払家賃(または地代家賃)を前払家賃(前払費用)に振り替えます。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
前払家賃 ※1100支払家賃 ※2100

※1.前払費用でも可
※2.地代家賃でも可

(3)再振替仕訳(翌期首)

決算日の翌日(翌期首)に、(2)の決算整理仕訳について、再振替仕訳を記帳します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払家賃 ※1100前払家賃 ※2100

※1.地代家賃でも可
※2.前払費用でも可

(4)その他

更新料、礼金または仲介手数料などは、「支払手数料(費用に属する勘定科目)」で借方に記入します。敷金または保証金(将来、返金されるもの)は、支払時に「差入保証金」などの勘定科目を用いて資産計上します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料100普通預金200
差入保証金100

(経理実務)実際の会計・仕訳処理

日商簿記3級で学習する仕訳処理は以上となりますが、これに対して、実際の経理実務で行われる会計処理・仕訳方法は、次の通りです。

月次決算

上場企業や大会社では、「月次決算」で費用を適切なタイミングで計上するため、一般的には、「オフィスや店舗等の物件を使用した月」に支払家賃を計上します。また、月次(月末)には前払費用(前払家賃)を計上します。

これに対して、日商簿記3級では小規模な企業を想定して出題されるため、基本的には、期中では「家賃の支払い時」に費用計上します。また、月次では前払費用(前払家賃)を計上せず、決算日のみ前払費用を計上します。

※ただし、日商簿記3級でも月次決算の問題が出題されることがあり、その場合には、月次で前払費用を計上し、翌日の月初に再振替仕訳を記帳します。

支払い時に前払費用を計上する方法(再振替仕訳を記帳しない方法)

家賃を支払った時に、前払費用(前払家賃)を計上し、月次(月末)に支払家賃(地代家賃)に振り替えます。

<参考例>
1ヶ月分を前払い。2/25支払い(3月分の家賃)以降は、契約更新によって家賃が100から105に増額した場合(更新料部分の仕訳は省略)

取引経理実務日商簿記3級
2/25 家賃の支払い前払費用 105 / 普通預金 105支払家賃 105 / 普通預金 105
2/28 月次決算支払家賃 100 / 前払費用 100仕訳なし
3/25 家賃の支払い前払費用 105 / 普通預金 105支払家賃 105 / 普通預金 105
3/31 決算日支払家賃 105 / 前払費用 105前払費用 105 / 普通預金 105
4/1 翌期首仕訳なし支払家賃 105 / 前払費用 105

※上記の「日商簿記3級」欄は、月次決算を行わない場合の仕訳を掲載

※詳細は下記「仕訳例」を参照

(簡便的な方法)前払費用を計上しない方法

未上場の中小企業などでは、家賃の重要性が乏しい場合、または、税務上の条件(短期前払費用の特例)を満たした場合には、前払費用を計上せずに、支払い時に支払家賃(地代家賃)を計上する仕訳処理の方法を選択する会社も存在します。

取引簡便的な方法日商簿記3級
2/25 家賃の支払い支払家賃 105 / 普通預金 105同左
2/28 月次決算仕訳なし同左
3/25 家賃の支払い支払家賃 105 / 普通預金 105同左
3/31 決算日仕訳なし前払費用 105 / 普通預金 105

※月次決算を行わない場合の仕訳を掲載

その他

更新料や礼金のうち、20万円以上のものは、実務では長期前払費用などの勘定科目で資産計上する場合があります。

取引その他日商簿記3級
礼金または更新料の支払い(20万円以上)長期前払費用 100 / 普通預金 100支払手数料 100 / 普通預金 100

2027年度以降の会計処理(新リース会計基準)

2027年4月1日から、上場企業や会社法上の大会社を中心に、「新リース会計基準」が原則的に適用されます。賃貸借契約に関する支出のうち、支払家賃や更新料などは「リース取引」に含まれることになり、「使用権資産」として資産計上する対象になります。

これに対して、日商簿記3級では、「比較的小規模な会社の取引」を想定しているため、支払家賃は多くの場合、短期リース又は少額リースに該当すると考えて、2026年度までと同じく支払家賃で仕訳する問題が出題されます(商工会議所ページのPDF資料を参考)。

<参考情報>
出題区分表(商工会議所HP)

(実務)中小企業の会計基準と賃貸借契約の会計処理

中小企業(上場企業やそのグループ会社、または会社法上の大会社以外の会社)向けの会計基準には、「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」と「中小企業の会計に関する指針(中小指針)」があります。

これらの会計基準では、2027年度以降もこれまでのリース会計の処理が適用されるため、中小企業のうち、これらの会計基準を採用している場合には、賃貸借契約に基づく家賃は「使用権資産」として資産計上ではなく、支払家賃などで費用処理します。

仕訳例

日商簿記3級で出題される可能性のある取引と仕訳例を示します。

※「実務」が含まれる見出しの解説は、実務者向け

1.本社家賃の引き落とし

<仕訳例1>
次の期中取引について、適切な仕訳を記帳する。なお、当社は月次決算を行っており、当該取引については月次で前払家賃(前払費用)を計上する。

  • 2/15 来月3月分の本社家賃¥150,000が普通預金口座から引き落とされた。
  • 2/28 月次決算に伴い、本社家賃を前払計上する。
  • 3/1 月初。本社家賃の再振替仕訳を記帳する。
  • 3/15 来月4月分の本社家賃¥150,000が普通預金口座から引き落とされた。
日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
2/15支払家賃 ※1150,000普通預金150,000
2/28前払家賃 ※2150,000支払家賃 ※1150,000
3/1支払家賃 ※1150,000前払家賃 ※2150,000
3/15支払家賃 ※1150,000普通預金150,000

※1.地代家賃でも可
※2.前払費用でも可

<取引の8要素>

取引の8要素の一覧表

<解説>
2/15 日商簿記3級では、「家賃の支払い時」に支払家賃(地代家賃でも可。以下も同じ)を借方に記入して費用計上する方法が一般的に出題されます。本問では普通預金から引き落とされたため、貸方には普通預金で仕訳します。

2/28 月次決算を行っている場合には、決算日と同様に、月末に経過勘定項目(前払費用、未払費用、未収収益、前受収益)を計上します。本問では、2/15に支払った本社家賃は来月3月分の家賃であるため、2月度の月次決算(2/28)では、前払家賃(前払費用)として計上しなければなりません。従って、支払家賃から前払家賃に振り替えます。

3/1 月次決算(2月度。2/28)の翌日(月初)。年度決算と同じく、月次決算に対する「再振替仕訳」を記帳します。具体的には、決算整理仕訳のうち、「前払費用などの経過勘定項目の計上仕訳」を貸借反対にして記帳します。本問では、2/28の仕訳を貸借反対にして仕訳したものが再振替仕訳になります。

3/15 前月2/15と同様に仕訳します。

(実務)支払い時に家賃を前払費用で仕訳する方法(1)

経理実務では、「(経理実務)実際の会計・仕訳処理」の「支払い時に前払費用を計上する方法(再振替仕訳を記帳しない方法)」で説明したように、家賃の支払い時に前払家賃(前払費用)を借方に記入する方法で仕訳する会社もあります。

※仕訳例2および3も同様

日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
2/15前払費用150,000普通預金150,000
2/28支払家賃150,000前払家賃150,000
3/1仕訳なし
3/15前払費用150,000普通預金150,000

<解説>
2/15 家賃の支払い時に前払費用を計上します。

2/28 家賃(2月分)の支払い時(1/15)に前払費用を計上したと仮定した場合、2月度の月次決算(2/28)では、当該支出は2月分の家賃であるため費用として計上しなければなりません。

そこで、2/28には、前払費用から支払家賃に振り替えます。

3/1 支払い時に前払費用を計上する方法の場合、月初に再振替仕訳は記帳しません。なぜならば、再振替仕訳では、決算整理仕訳として計上した経過勘定項目(前払費用、未払費用、未収収益、前受収益)について貸借反対の仕訳を記帳しますが、支払い時に前払費用を計上する方法では、本例のように前払費用の計上は2/15の支払い時であり、2/28の月次決算ではないからです。

従って、3/1の月初では仕訳なしになります。

2.店舗物件の賃貸借契約に係る振込依頼書(証ひょう問題)

<仕訳例2>
3/21 新規出店を目的として不動産会社を介して締結した店舗の賃貸借契約(4/1より使用開始)について、不動産会社から次の振込依頼書が送られてきたため、普通預金より振り込んだ。なお、振込み際して銀行手数料¥500が引き落とされた。

店舗の賃貸借契約に関する振込依頼書のイメージ画像
日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
3/21支払家賃 ※100,000普通預金400,500
差入保証金200,000
支払手数料100,500

※地代家賃でも可

<解説>
証ひょうのうち、振込依頼書が掲載された問題を取引例にしています。

振込依頼書に記載の内訳のうち、店舗家賃(4月分)¥100,000を支払家賃(費用)、敷金¥200,000を差入保証金(資産)、そして、仲介手数料¥100,000を支払手数料(費用)で、それぞれ借方に記入します。

ただし、取引文に「なお、振込み際して銀行手数料¥500が引き落とされた」とあります。振込手数料は支払手数料で処理するため、支払手数料の金額は¥100,500(=¥100,000+¥500)で借方に記入します。

貸方には、普通預金から振り込んだため、普通預金を記入します(金額は借方の合計¥400,500)。

3.賃借する営業所の更新

<仕訳例3>
3/25 営業所の賃貸借契約の更新時期となり、更新料¥240,000および翌月の家賃¥120,000を普通預金から指定の口座に振り込んだ。

日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
3/25支払家賃 ※120,000普通預金360,000
支払手数料240,000

※地代家賃でも可

<解説>
仕訳例1および2と同様に、家賃の支払い¥120,000は、支払家賃を借方に記入して仕訳します。次に賃貸借契約の更新に係る手数料¥240,000は、支払手数料で仕訳します。

(実務)賃貸借契約の更新料を資産計上する場合

本例のように、賃貸借契約の更新手数料または礼金等が20万円以上の場合には、税務上の観点から、長期前払費用などの勘定科目で資産計上する場合があります。

日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
3/25支払家賃 ※120,000普通預金360,000
長期前払費用240,000

※地代家賃でも可

4.前払費用の計上

<仕訳例4>
3/31 (決算整理事項) 上記の仕訳例1から3の家賃取引について、前払家賃を計上する。

日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
3/31前払家賃 ※1370,000支払家賃 ※2370,000

※1.前払費用でも可
※2.地代家賃でも可

<解説>
翌月4月分の本社家賃¥150,000(仕訳例1のうち、3/15の取引)、店舗家賃¥100,000(仕訳例2)および営業所家賃¥120,000(仕訳例3)の合計¥370,000は、それぞれ支払い時に支払家賃で費用計上しましたが、当期に含める費用ではなく、翌年度(翌月4月分)の費用として計上しなければなりません。

そこで、当期の決算整理仕訳として、貸方に支払家賃¥370,000を記入して期中に計上した支払家賃を相殺するとともに、借方には前払家賃(前払費用)を同額で記入します。

(実務)支払い時に家賃を前払費用で仕訳する方法(2)

※この方法の説明は、上記「(経理実務)実際の会計・仕訳処理」の「支払い時に前払費用を計上する方法(再振替仕訳を記帳しない方法)」を参照

仕訳例1のうち、2/28(月次決算)の仕訳と同じく、借方に支払家賃、貸方に前払費用をそれぞれ用いて仕訳します。

日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
3/31支払家賃370,000前払費用370,000

この方法では、3月分の家賃は前月2月の支払い時に前払費用を借方計上します。そこで、決算整理仕訳では、この2月支払いの家賃(3月分の家賃)を費用計上すべく、借方に支払家賃を記入するとともに、2月の支払い時に計上した前払費用を相殺するために、貸方に前払費用を記入して仕訳します。

5.再振替仕訳

<仕訳例5>
4/1 (翌期首) 仕訳例4で計上した前払家賃について、再振替仕訳を記帳する。

日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
4/1支払家賃 ※1370,000前払家賃 ※2370,000

※1.地代家賃でも可
※2.前払費用でも可

<解説>
仕訳例4で決算整理仕訳として借方計上した前払家賃(前払費用)¥370,000は、翌期では4月分の家賃として費用計上しなければなりません。そこで、4/1の期首に再振替仕訳を記帳します。この仕訳によって、前月の決算日に前払家賃として資産計上した¥370,000を支払家賃として借方計上するとともに、同額の前払家賃を貸方に記入することで、決算日に計上した前払家賃を相殺して前払家賃の残高をゼロにします。

(実務)支払い時に家賃を前払費用で仕訳する方法(3)

※この方法の説明は、上記「(経理実務)実際の会計・仕訳処理」の「支払い時に前払費用を計上する方法(再振替仕訳を記帳しない方法)」を参照

仕訳例1の3/1と同じく、再振替仕訳は記帳しません。

日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
4/1仕訳なし

仕訳問題(6問)と解答・解説

※最初の問題は、長文、かつ、不動産用語を含む応用問題ですが、日商簿記3級の試験範囲の知識で解けます。

<問題>
次の取引について、適切な仕訳を示しなさい。なお、当社の決算日は毎年3月31日であり、月次決算は行わない。消費税は考慮しないこと。

  • 3/1 地方の拠点オフィスとして、借地権付き建物(土地を借りる一方で、土地の上の建物を取得する場合の建物のこと)を¥4,850,000で取得し、本日より使用を開始した。なお、仲介手数料¥180,000(建物の取得部分¥150,000、土地の賃借部分¥30,000)および地代¥60,000(当月分と4月分の2ヶ月分)を含め、代金は、本日、全額を普通預金口座から振り込んだ(振込手数料はゼロとする)。なお、借地権については考慮しないこと。
  • 3/25 本社オフィスの家賃について、先日、次の請求書が届き、本日、普通預金口座より引き落とされた。
本社オフィスの家賃に関する請求書のイメージ画像
  • 3/31 次の決算整理事項について、適切に処理する。
  • (1)地方の拠点オフィスの地代(4月分)¥30,000を前払計上する。
  • (2)地方の拠点オフィスの建物について、残存価額10%、耐用年数50年で減価償却を行う。
  • (3)本社オフィスの家賃(4月分)について、前払計上する。
  • 4/1 翌期首につき、経過勘定項目(前払費用)の再振替仕訳を記帳する。

<解答>

日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
3/1建物5,000,000普通預金5,090,000
支払地代 ※160,000
支払手数料30,000
3/25支払家賃 ※1180,000普通預金180,000
3/31(1)前払地代 ※230,000支払地代 ※130,000
3/31(2)減価償却費7,500建物減価償却累計額7,500
3/31(3)前払家賃 ※2180,000支払家賃 ※1180,000
4/1支払地代 ※130,000前払地代 ※230,000
支払家賃 ※1200,000前払家賃 ※2200,000

※1.地代家賃でも可
※2.前払費用でも可

<取引の8要素>

取引の8要素の一覧表

<解説>
3/1 支払家賃との違いに焦点を当て、建物と支払地代を用いた仕訳問題を出題しました。

「借地権付き建物」の説明(括弧書き内)を読むと、「建物の取得」と「土地の賃借」が合わさった取引であることが読み取れます。前者は建物(資産)、後者は支払地代(費用)で仕訳します(上記のうち「建物・土地との違い」および「支払地代との違い」を参照)。

それぞれの金額は、問題文から、建物自体の金額(購入代価)は¥4,850,000、地代は¥60,000であることが分かるため、それぞれ、建物(資産)と支払地代(費用)で仕訳することになります。

次に、支払手数料について、建物の取得に関する部分¥150,000と土地の賃借に関する部分¥30,000の記載から、前者は「付随費用」として建物に含めて仕訳処理し、後者は支払手数料(費用)で仕訳します。

以上から、建物¥5,000,000(購入代価¥4,850,000+付随費用¥150,000) 、支払地代¥60,000および支払手数料¥30,000を、それぞれ、借方に記入して仕訳します。

最後に、これらを全て普通預金口座から振り込んだため、貸方に普通預金¥5,090,000(上記の合計)を記入します。

3/25 請求書に「4月分」と記載があります。当社は3月決算のため、4月は翌期であることから、後の決算整理事項で前払費用(前払家賃)を計上することになりますが、期中(本問では3/25)の支払い時(本問では引き落とし時)には、日商簿記3級では、解答の通り、支払家賃(地代家賃でも可)を借方に記入して仕訳します(金額は請求書に記載の¥180,000)。

次に、普通預金口座より引き落されたため、貸方は普通預金で仕訳します。

3/31(1) 3/1に支払った地代¥60,000 は3月分(当期)と4月分(翌期)の2ヶ月分です。このうち、4月分は翌期の支払地代(費用)として計上しなければなりません。しかし、期中3/1の支払い時にどちらの家賃も支払地代¥60,000として計上したため、決算日に、4月分¥30,000の支払地代を貸方に計上することで、期中3/1の支払地代の借方計上を相殺するとともに、前払費用(前払地代)を借方に計上します。

3/31(2) 3/1に計上した建物¥5,000,000について、減価償却を行います。具体的には、借方に減価償却費を記入し、貸方には建物減価償却累計額を記入します。3/1から使用開始(3/1の問題文に記載)のため、3月の1ヶ月分を計算して仕訳します。

当期(3月。1ヶ月分)の減価償却費(建物):¥5,000,000×(1ー残存価額10%)÷耐用年数50年×1ヶ月(3月)/12ヶ月=¥7,500

3/31(3) 3/25に計上した支払家賃¥180,000は翌期4月分の家賃であるため、(1)の地代と同様の考え方で、決算日に前払費用(前払家賃)を計上します。

4/1 決算日に計上した経過勘定項目(本問では前払費用のみ)は、日商簿記3級では、翌期首に再振替仕訳を記帳します。具体的には、3/31の決算整理仕訳のうち、(1)前払地代および(3)前払家賃の計上の仕訳について、貸借反対の仕訳を記帳します。

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。「PDCA会計」を企画・開発・執筆・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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