商業簿記入門その22~売掛金と買掛金の記帳(得意先、仕入先元帳、人名勘定)(3級)

公開日:2017年8月26日

売掛金と買掛金の記帳(得意先、仕入先元帳、人名勘定)

前回、「商業簿記入門その21~売掛金、買掛金の手続と仕訳処理」では売掛金と買掛金の手続と仕訳処理について解説しました。

今回は売掛金と買掛金の記帳方法について説明します。


売掛金と買掛金の記帳

売掛金と買掛金についても、主要簿の記帳は他の勘定科目と同様です。すなわち、会社の売掛金と買掛金の増減取引は、仕訳帳または伝票に記入した後に、総勘定元帳に転記します。

取引→仕訳帳(または伝票)→総勘定元帳

※帳簿の記帳については、「商業簿記入門その7~帳簿(仕訳帳と総勘定元帳)と伝票」にて解説しています。ご参照ください。

人名勘定

取引先が複数存在する場合には、売掛金や買掛金で仕訳処理すると、売掛金や買掛金の増減や残高は把握できますが、取引先別の増減や残高を把握することはできません。

そこで、売掛金や買掛金の替わりに人名勘定といった勘定科目を使用することがあります。

例えば、A社に対する売掛金や買掛金の増減取引は、売掛金勘定や買掛金勘定を使用せずに「A社」という人名勘定を使用します。

A社勘定を使用することで、A社に対する売掛金や買掛金の明細や残高はすぐに把握することができます。

売掛金の増減取引をA社勘定、B社勘定、C社勘定という3つの人名勘定を用いて総勘定元帳を記帳した場合について例を示しましたのでご覧ください。

人名勘定

左図のように売掛金勘定のみの場合は、各社の増減や残高は分かりませんが、右図のように人名勘定を用いて記帳すると各社の増減や残高はすぐに把握することができます。


売掛金元帳(得意先元帳)と買掛金元帳(仕入先元帳)

人名勘定を用いれば、各社の売掛金、買掛金に関する増減や残高を把握することはできますが、あまりにも取引先が多ければ、勘定科目が取引先の数だけ増えることになります。また、総勘定元帳の記録も膨大なものになってしまいます。

さらに、人名勘定を用いて総勘定元帳を記帳すると、確かに各社の増減や残高は把握することができますが、売掛金や買掛金全体の増減や残高を把握することができなくなります。

売掛金や買掛金は売上や仕入と関連する重要な勘定科目であるので、会社としても各社だけでなく、全体の増減や残高も把握しておきたいと考えるでしょう。

そこでこれらの要望に応える方法として、総勘定元帳という主要簿ではなく、売掛金元帳(得意先元帳)買掛金元帳(仕入先元帳)という補助簿(補助元帳)に各社の増減や残高を把握するために記帳するという方法があります。

【記帳の流れ】
取引→①仕訳帳(または伝票)→②総勘定元帳(売掛金勘定、買掛金勘定を使用。人名勘定は使用しない)→③売掛金元帳(得意先元帳)、買掛金元帳(仕入先元帳)

具体的な書き方は、「仕訳例」のところで解説します。

仕訳例

甲社の平成29年8月の取引は次の通りである。仕訳し、総勘定元帳に記帳するとともにA社とC社の売掛金元帳と買掛金元帳を記帳しなさい。
※商品の仕入には仕入勘定を、商品の販売には売上勘定を用いて仕訳処理することとする。

1.8月 4日 A社より商品10万円を仕入れた。代金は翌月に支払う。
2.8月 7日 B社より商品6万円を仕入れた。代金は翌月に支払う。
3.8月10日 C社に商品12万円を販売した。代金は翌月に回収する。
4.8月13日 D社に商品15万円を販売した。代金は翌月に回収する。
5.8月17日 A社に商品代金12万円を小切手を振り出して支払った。
6.8月18日 B社に商品代金5万円を小切手を振り出して支払った。
7.8月21日 C社から商品代金としてC社振出の小切手10万円を受け取った。
8.8月26日 D社から商品代金として甲社振出の小切手18万円を受け取った。

【仕訳】

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1仕入100,000買掛金100,000
2仕入60,000買掛金60,000
3売掛金120,000売上120,000
4売掛金150,000売上150,000
5買掛金120,000当座預金120,000
6買掛金50,000当座預金50,000
7現金100,000売掛金100,000
8当座預金180,000売掛金180,000

【総勘定元帳】

売掛金と買掛金の総勘定元帳

【売掛金元帳(得意先元帳)】

C社

平成29年摘要借方貸方借/貸残高
81前月繰越100,000100,000
10売上120,000220,000
21小切手回収100,000120,000
31次月繰越120,000
220,000220,000
91前月繰越120,000120,000

【買掛金元帳(仕入先元帳)】

A社

平成29年摘要借方貸方借/貸残高
81前月繰越90,00090,000
4仕入100,000190,000
17小切手振出120,00070,000
31次月繰越70,000
190,000190,000
91前月繰越70,000120,000

【解説】
基本的な取引を例にしました。仕訳と総勘定元帳の記帳は難しくないと思います。

No8の取引で借方が当座預金になることが理解できない方は、小切手取引について理解を深めましょう。「商業簿記入門その8~現金の範囲、小切手の振出と管理、仕訳処理」で解説しています。ご参考ください。

売掛金元帳(得意先元帳)と買掛金元帳(仕入先元帳)の記帳方法

売掛金元帳と買掛金元帳の記帳は上記例の通りです。

取引先ごとに記帳します。上記例ではA社とC社のみですが、B社(買掛金元帳)とD社(売掛金元帳)も本来であれば記帳します。

摘要欄は取引が分かるように記帳しておきます。試験対策であれば問題をこなして記入する内容に慣れておきましょう。

「借/貸」欄は残高です。すなわち借方残なのか貸方残なのかです。通常は売掛金であれば「借」が、買掛金であれば「貸」を記入します。

まとめ

今回は、売掛金と買掛金の記帳について、売掛金(得意先)元帳や買掛金(仕入先)元帳、人名勘定などについて解説しました。売掛金元帳と買掛金元帳は試験でもよく出題されます。過去問も解いておきましょう。


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