従業員貸付金とは|仕訳例を示してシンプルに解説(簿記3級)

記事最終更新日:2024年1月12日
記事公開日:2021年8月8日

「従業員貸付金」は簿記3級で学習する勘定科目です。「貸付金」をマスターしていれば基本的には難しくありませんが、返済の仕訳については「給料の支払い」の仕訳が関係する場合があるため、難しくなります。

本記事では、簿記3級で出題される「従業員貸付金」について、仕訳例を示して具体的かつシンプルに解説します。

※利息に関する計算方法や仕訳など、貸付金の基本的な論点は下記の記事で解説しています。

仕訳例

  • 1.会社は従業員の貸付申請を承諾し、普通預金から10を支払った。
  • 2.会社は当月分の給与(総額100 社会保険料15 源泉所得税5)を当座預金から支払った。その際に上記1.の貸付金のうち2を控除した残額を従業員の銀行口座へ振り込んだ。
No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1従業員貸付金10普通預金10
2給料100当座預金78
社会保険料預り金15
所得税預り金5
従業員貸付金2

従業員貸付金とは

従業員貸付金」とは、「貸付金」の一種です。金銭を従業員に貸し付けた場合の債権をいいます。

(参考)他と区別する特別な理由

※簿記3級の範囲外の論点。

従業員に対する貸付は法人税法上、「給与」とみなされる場合があります。税務計算に影響するので通常の貸付金とは区分して記帳します。

勘定科目の属性

「従業員貸付金」は、将来、現金として回収されることから「会社財産」に該当し、「資産に属する勘定科目」に分類されます。

従って、「取引の8要素」の「資産」の仕訳の通り、「従業員貸付金」の増加は借方に記入し、減少は貸方に記入します。

返済と給与控除

「従業員貸付金」の一般的な返済方法の1つとして、月々の給与からの控除があります。すなわち、会社が従業員に給与を振り込む際には、「社会保険料」や「源泉所得税」と併せて、「従業員貸付金」の返済額の合計額を控除した残額を計算して支払います。

仕訳方法

従業員に貸し付けを行った際には、従業員に対する貸付金の増加として、「従業員貸付金」を借方に記入し、支払手段として「現金・預金」を貸方に記入します。

給与支払い時に貸付金の返済(会社側からは回収)として給与から控除した場合には、返済額だけ「従業員貸付金」が減少するため、「社会保険料預り金」や「所得税預り金」といった控除科目と併せて、「従業員貸付金」を貸方に記入して、給料支払いの仕訳を記帳します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貸し付け従業員貸付金×××現金・預金×××
利息の受け取り現金・預金×××受取利息×××
給与からの控除給料×××現金・預金×××
社会保険料預り金×××
所得税預り金×××
従業員貸付金×××

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須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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