貸付金とは|仕訳の基本を具体的に解説(簿記3級)

記事最終更新日:2024年1月10日
記事公開日:2017年10月1日

※本記事の一部では、簿記2級の試験範囲や実務に役立つ知識についても解説しています。

「貸付金」は簿記3級で基本的な仕訳を学習しますが、簿記2級や会社法でも論点が存在するため、実務においても重要な勘定科目といえます。

本記事では、簿記3級で学習する「貸付金」の基本仕訳を中心に、仕訳例を示して具体的に解説します。

仕訳例

<仕訳例>
7/1 会社は取引先に100を貸し付けるため、小切手を振り出した(年利率:4% 利息支払日:12月と6月の末日 返済日:来年の6月末日)。
12/31 当座預金に利息が振り込まれた(利息計算は月割りとする。以下も同様)。
3/31 決算日を迎えた。未経過利息を計上する。
4/1 翌期首。再振替仕訳を記帳する。
6/30 貸付金の返済日が到来し、貸付元本と利息が当座預金に振り込まれた。

日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
7/1貸付金100当座預金100
12/31当座預金2受取利息2
3/31未収利息 ※1受取利息1
※「未収収益」でも正解(4/1も同様)
4/1受取利息1未収利息1
6/30当座預金102貸付金100
受取利息2

貸付金とは

貸付金」とは、金銭を他の会社に貸し付けた場合に発生する、利息や貸し付けたお金(キャッシュ)を回収する権利(債権)のことをいいます。

貸付金の取引を記帳する際には、「貸付金」の勘定科目で記帳します。

(参考)貸付時の手続き

会社にとって、「多額の貸し付け」は、重要な取引に該当することから、取締役会を設置している会社では、事前に取締役会の決議事項とするよう「会社法」で定めています。

勘定科目の属性

「貸付金」は将来、返済日に現金として回収されます。従って、「貸付金」は「会社財産」に該当するため「資産に属する勘定科目」です。

また、利息の計上に使用する「受取利息」は、利息の受け取りという「キャッシュが増加する要因」であるため、「収益に属する勘定科目」です。

(補足)役員や従業員への貸付け

役員に対する貸し付けは「役員貸付金」、従業員に対する貸し付けは「従業員貸付金」で仕訳します。

仕訳方法

次の通り。

金銭の貸し付けと回収

取引先に金銭を貸し付けた際には、増加する「貸付金(資産)」を借方に記入するとともに、減少する「現金・預金(資産)」を貸方に記入します。

その後、返済期日が到来し、貸し付けたキャッシュを回収した際には、減少する「貸付金」を貸方に記入し、増加する「現金・預金」を借方に記入します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
金銭の貸付貸付金×××現金・預金×××
貸付金の回収現金・預金×××貸付金×××

利息の受け取り

利息を受け取った場合には、「受取利息」を貸方に記入するとともに、入金のあった「現金・預金」を借方に記入します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
利息の受け取り現金・預金×××受取利息×××

月割利息の計算

簿記3級の利息計算では、「月割り計算」が出題されます。

利息額は、年間の利息額(貸付金 × 年利率)を12ヶ月で割って計算した「1ヶ月当たりの利息額」に経過月数を乗じて計算します。

未経過利息の計上

利息は月の経過とともに発生しますが、決算時点で受け取っていない月の利息は「受取利息」を計上していません。

そこで「決算整理仕訳」として「未経過利息」を仕訳します。具体的には貸方に「受取利息」を記入するとともに、借方には「未収利息(又は未収収益)」を記入します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
未経過利息の計上未収利息・未収収益×××受取利息×××

(補足)再振替仕訳

決算整理仕訳として記帳した「未経過利息」の仕訳は、翌期首に「再振替仕訳(貸借反対の仕訳)」を記帳します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
再振替仕訳受取利息×××未収利息・未収収益×××

(簿記2級)評価と貸倒引当金

貸付金は金銭債権に該当し、決算時には受取手形・売掛金と同じく「貸倒引当金」を見積もって計上します。

B/S上の表示

貸付金の期末残高は、資産の部に「貸付金」として貸借対照表に掲載(表示)します。

(簿記2級)貸付金の長期と短期の振り替え

簿記2級では、「1年以内に回収予定かどうか」によって、流動資産と固定資産(投資その他の資産)に区分して表示することから、決算整理仕訳として「貸付金」を「短期貸付金」と「長期貸付金」に振り替える仕訳を記帳します。

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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